日本地球惑星科学連合2023年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ45] プラネタリーディフェンス、我々は何をすべきか

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:吉川 真(宇宙航空研究開発機構)、Patrick Michel(Universite Cote D Azur Observatoire De La Cote D Azur CNRS Laboratoire Lagrange)、奥村 真一郎(NPO法人日本スペースガード協会)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、座長:吉川 真(宇宙航空研究開発機構)

14:30 〜 14:45

[MZZ45-04] 深宇宙コンステレーションによる小天体即応型フライバイ探査構想

*尾崎 直哉1兵頭 龍樹1吉川 真1藤本 正樹1 (1.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:即応型探査、深宇宙コンステレーション

米国Decadal Surveyでは、危険な小惑星の特性を理解し、効果的な緩和策を開発するために、プラネタリーディフェンス分野での即応型フライバイ探査の重要性を主張している。即応型ミッションのアーキテクチャの1つは、ターゲットとなる天体を発見したら、できるだけ早く専用のロケットで探査機を送ることである。このアプローチでは、即応的な対応が可能な専用ロケットが必要であり、日本を含む各国にとって技術的・政治的に高いハードルとなっている。そこで、本発表では、危険な小惑星が発見されるまで、数十機の超小型宇宙機を深宇宙、特に地球に対する小天体フライバイサイクラー軌道で待機させるアプローチを提案する。地球に対する小天体フライバイサイクラー軌道では、地球と探査機の公転周期が整数比となるため、地球へのフライバイを繰り返すことができる。

提案するミッション構成では、小天体フライバイサイクラー軌道に数十機の超小型宇宙機を投入し、各宇宙機がそれぞれ異なる時刻に地球フライバイを行うことができるのが特長である。地球フライバイの数週間から1ヶ月前に小さな軌道修正マヌーバを行うことで、地球スイングバイを利用して目標天体に向かう軌道を大きく変更することができる。このコンセプトを実現するためには、少なくとも1機の探査機が1カ月に1回のペースで地球フライバイを行う必要があり、大規模な深宇宙コンステレーションが必要となる。このコンステレーションは、専用の打ち上げロケットを必要とせず、深宇宙や月への相乗り機会を通じて構築することができる。小天体フライバイサイクラー軌道を用いるアプローチは、ラグランジュ点で待機するアプローチなどと比べ、地球に対してより高いエネルギーを持つ軌道で待ち受けるため、より低いΔVでフライバイ探査可能な領域を拡大することができる。このような高エネルギー軌道は、恒星間天体や長周期彗星への到達確率を向上させる。

JAXAのDESTINY+ミッションで実証されるように、小天体フライバイサイクラー軌道では、待ち受けている間に、NEOを複数回フライバイすることが可能である。仮に10機の超小型宇宙機が投入できれば、毎年5〜10個のNEOを直接探査できると予想される。このようなアプローチを採用することで、小天体フライバイ探査のための包括的な技術も強固なものになるだろう。

この発表では、到達可能な危険な小惑星の統計的分析と深宇宙コンステレーションの構成オプションについて述べる。また、待機軌道で複数のNEOフライバイを行う例について調査する。ミッション設計の結果、宇宙機システムの大きさを見積もるのに必要な燃料の量が示される。