10:45 〜 12:15
[O02-P01] 24時間!掘削船ジョイデス号生活 IODP第399次航海 - 生命の構成要素、アトランティス岩体(ライブ中継予定)
★招待講演
キーワード:国際深海掘削計画、ジョイデス・レゾリューション号、大西洋アトランティス岩体、蛇紋岩、炭酸塩岩化
地球惑星科学という研究分野では、野外調査を行い、現地の試料やデータを集めてくることがとても重要になってくる。今回はその一つの手段として、海洋科学掘削の現場を紹介する。今回紹介するのは、IODP(International Ocean Discovery Program:国際深海科学掘削計画)により行われている米国のジョイデス・レゾリューション号(以下JR号)による第399次掘削航海(Exp. 399) の様子である。
1)IODPについて
IODPは2003年に開始し、現在21カ国が参加する国際科学プログラムである。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(JR号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて世界中の海底を掘削して地質試料(掘削コア)の回収・分析や孔内観測装置の設置によるデータ解析などの研究を行うことで、地球や生命の謎の解明に挑戦している。また、2024年以降の海洋科学掘削の指針として「2050 Science Framework : Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling 」が、2020年秋に発表れている。より詳しいIODPの情報は、本大会におけるJAMSTEC/J-DESCブースに立ち寄り、パンフレットやポスターの説明などをご覧頂きたい。
2)アトランティス岩体掘削Exp. 399について
Exp. 399は、2023年4月13日〜6月12日(アゾレス諸島ポンタ・デルガダ出入港)の2ヶ月間の日程で、大西洋中央海嶺北緯30度付近の「アトランティス岩体(Atlantis Massif)」と呼ばれる海底の斑れい岩および蛇紋岩の岩体を掘削している。今回JR号には、世界各国から集まった研究者24名、教育アウトリーチスタッフ2名、船上ラボテクニシャン20名、さらに掘削技術者や船の運航を担う船員さんや船医、船内生活をサポートしてくれるスタッフなど合わせると、総勢100名以上が乗船し、この2ヶ月間のプロジェクトを遂行している。
3)Exp. 399の科学目的
本航海の科学目的は、海洋下部地殻〜最上部マントルを構成する岩石(斑れい岩と蛇紋岩化かんらん岩)の掘削で、これまでの海洋地殻掘削でもっとも高い温度で進行中の海底変成作用の観察と、熱水循環に伴う炭酸塩岩化作用、地下生命圏の広がりを検証することである。一般的に大陸地殻(通常30~40km)は厚いのに対し、海洋地殻は通常6〜7kmと薄いにもかかわらず、人類は未だに地殻を貫通してマントルまで掘削したことがない。しかしマグマ生成量が少ない中央海嶺では、海底が拡大する時にマグマ供給が追いつかず、中央海嶺に沿って巨大な正断層が形成され、海底下深部の岩石が直接海底面に露出することがある。このようにして形成された海底のドーム状の山を海洋コア・コンプレックス(OCC: Oceanic Core Complex)と呼ぶ。アトランティス岩体は、大西洋中央海嶺の北緯30°に位置するOCCで、海底下深部にあったマントルかんらん岩とそれに貫入した斑れい岩が、海水と反応しながら海底面に露出している。この場所には、水素やメタンに富むアルカリ性の流体が噴出していることで有名な高さ数mの炭酸塩の煙突があり、ロスト・シティ熱水噴出孔と呼ばれている。水素は、海水とマントル鉱物のかんらん石との反応によって生成されるが、これは地球上の生命の最初の構成要素を形成する燃料となったかもしれない強力なエネルギー源と考えられている。生命が誕生する前には、有機分子が無機合成されたはずである。
4)まとめ
今回紹介する熱水フィールドでは、生命の初期発生に関係する前生物学的反応が起こっている可能性がある。地球外の土星の衛星エンケラドスのような「氷の世界」にも、同様のシステムが存在し、生命を維持することができるかもしれない。ポスターの現地発表中には、このエキサイティングな掘削航海が行われているJR号の船上から、オンラインによるライブ中継を企画し、直接質問などを受け付ける予定である。
1)IODPについて
IODPは2003年に開始し、現在21カ国が参加する国際科学プログラムである。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(JR号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて世界中の海底を掘削して地質試料(掘削コア)の回収・分析や孔内観測装置の設置によるデータ解析などの研究を行うことで、地球や生命の謎の解明に挑戦している。また、2024年以降の海洋科学掘削の指針として「2050 Science Framework : Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling 」が、2020年秋に発表れている。より詳しいIODPの情報は、本大会におけるJAMSTEC/J-DESCブースに立ち寄り、パンフレットやポスターの説明などをご覧頂きたい。
2)アトランティス岩体掘削Exp. 399について
Exp. 399は、2023年4月13日〜6月12日(アゾレス諸島ポンタ・デルガダ出入港)の2ヶ月間の日程で、大西洋中央海嶺北緯30度付近の「アトランティス岩体(Atlantis Massif)」と呼ばれる海底の斑れい岩および蛇紋岩の岩体を掘削している。今回JR号には、世界各国から集まった研究者24名、教育アウトリーチスタッフ2名、船上ラボテクニシャン20名、さらに掘削技術者や船の運航を担う船員さんや船医、船内生活をサポートしてくれるスタッフなど合わせると、総勢100名以上が乗船し、この2ヶ月間のプロジェクトを遂行している。
3)Exp. 399の科学目的
本航海の科学目的は、海洋下部地殻〜最上部マントルを構成する岩石(斑れい岩と蛇紋岩化かんらん岩)の掘削で、これまでの海洋地殻掘削でもっとも高い温度で進行中の海底変成作用の観察と、熱水循環に伴う炭酸塩岩化作用、地下生命圏の広がりを検証することである。一般的に大陸地殻(通常30~40km)は厚いのに対し、海洋地殻は通常6〜7kmと薄いにもかかわらず、人類は未だに地殻を貫通してマントルまで掘削したことがない。しかしマグマ生成量が少ない中央海嶺では、海底が拡大する時にマグマ供給が追いつかず、中央海嶺に沿って巨大な正断層が形成され、海底下深部の岩石が直接海底面に露出することがある。このようにして形成された海底のドーム状の山を海洋コア・コンプレックス(OCC: Oceanic Core Complex)と呼ぶ。アトランティス岩体は、大西洋中央海嶺の北緯30°に位置するOCCで、海底下深部にあったマントルかんらん岩とそれに貫入した斑れい岩が、海水と反応しながら海底面に露出している。この場所には、水素やメタンに富むアルカリ性の流体が噴出していることで有名な高さ数mの炭酸塩の煙突があり、ロスト・シティ熱水噴出孔と呼ばれている。水素は、海水とマントル鉱物のかんらん石との反応によって生成されるが、これは地球上の生命の最初の構成要素を形成する燃料となったかもしれない強力なエネルギー源と考えられている。生命が誕生する前には、有機分子が無機合成されたはずである。
4)まとめ
今回紹介する熱水フィールドでは、生命の初期発生に関係する前生物学的反応が起こっている可能性がある。地球外の土星の衛星エンケラドスのような「氷の世界」にも、同様のシステムが存在し、生命を維持することができるかもしれない。ポスターの現地発表中には、このエキサイティングな掘削航海が行われているJR号の船上から、オンラインによるライブ中継を企画し、直接質問などを受け付ける予定である。