日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[O-05] ジオパークとサステナビリティ(口頭招待講演)

2023年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、榊山 匠(四国西予ジオパーク推進協議会)、殿谷 梓(三好市役所ジオパーク推進室)、福村 成哉(南紀熊野ジオパーク推進協議会)、座長:郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)、榊山 匠(四国西予ジオパーク推進協議会)、殿谷 梓(三好市役所ジオパーク推進室)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、山崎 由貴子

10:45 〜 11:15

[O05-04] 三笠における地質遺産の価値・魅力の醸成及び保護保全を目的としたジオパークの取り組みについて

★招待講演

*下村 圭1 (1.三笠ジオパーク推進協議会)

キーワード:ジオパーク、保護保全

三笠は北海道内陸部の開拓に関わりが深く、1868年に三笠で石炭が発見されたことにより、詳細な地質調査が行われ、その結果、豊富な石炭資源があることがわかり、以後、三笠は日本のエネルギーを支える拠点として1989年まで、110年の間、炭鉱による採炭が行われた場所である。
上記地質調査では、石炭以外にもアンモナイトを中心とした化石についての記述があり、三笠では国内有数の化石産出地としても有名となり、以後、アンモナイトなどの化石の研究も進められ、「三笠」の名前のついた化石なども多く、現在でも三笠市立博物館を中心に、研究などが進められている。
三笠博物館では、アンモナイト化石が約600点、その他化石も含めると約1,000点の化石が展示されており、日本一の化石の博物館としても全国的に有名である。また所蔵している化石は数万点となっている。
これらは過去から進められてきた、地域や化石収集家、ボランティアなどと協力し、発掘収集されたものであり、展示されている化石も寄贈され展示されている化石も多い。
また化石が産出される場所が国・北海道の敷地内にあり、許可を得ないと立ち入ることができず、周辺には拠点施設などもないことから、その中心の場所としても博物館が活用されており、貴重な化石の発見などがあった場合の提供や情報共有なども行いやすい環境にあり、学術的価値の高い化石の持ち出しなども防ぐことができている。
さらに新種のアンモナイトの学術名も、形状や見た目から見学者が親しみやすい学術名とするなど工夫を図っている。
これらを繰り返し行っていくことで、化石の価値や魅力について、国内外に広く発信するとともに、展示までの過程なども見せることで、持続可能な取り組みや保護保全に対する意義などを伝える工夫を行っている。
一方、三笠ジオパークの取り組みは2015年にジオパーク国内認定を受けスタートしており、地域にある「ジオ・エコ・ヒト」の要素を丸ごと楽しむことを目的として、「さぁ行こう!1億年時間旅行へ!!」をキャッチフレーズに教育・観光・保護保全などの活動を進めている。
そうした中で、化石鉱物の販売については市内数か所で行われており、「化石のマチ」としてのお土産として取り扱われており、急遽販売を停止するなどは難しい状態であった。
そのため、ジオパークの取り組みに関する理念や目的などについて、認定以後、市の広報誌などでジオパーク関連の記事を掲載し、地域の価値や持続可能な取り組みなどの情報発信を現在も続けている。
また、学校教育や社会教育としても授業・講座などにより地域資源を守ることの意味合いや重要性なども伝え、定期的に販売業者や販売者などへの情報共有なども実施した。
上記取り組みと併せて、本物を使用せずに、化石の魅力や価値を伝えることを目的として、アンモナイトをキャラクターに見立てた「アンモフレンズ」缶バッチを作成し、本物を使うことなく、親しみながら化石に触れてもらえる代替品グッズの開発を行い、売り上げについてもジオパークの保護保全に関する事業に再投資するスキームを構築し、毎年数十万円の売り上げになっており、保護保全に対する効果的なプログラムの1つとなっている。
以上から、現在では、地域内での化石鉱物販売はほぼなくなっており、一定の成果をあげている。
今後もジオパークというプログラムを活かし、地質遺産・地域資源の価値や重要性を強く発信するとともに、持続可能な取り組みを目指し、地質遺産の保護保全の必要性など継続的に発信していきたいと考えている。
今回のジオパークパブリックセッションでは、上で述べた各種取り組みについて事例を交えて紹介し、地域ならではの取り組みや地域資源の価値、そして保護保全などについて参加者と意見交換を行いたい。