日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P30] オゾンがミツバチのフェロモンに与える影響 ~CCDとの相関の解明~

*竹綱 慶一1 (1. 東京学芸大学附属国際中等教育学校)

キーワード:オゾン分解、フェロモン、ミツバチ


健康的な蜂群に対して1950年代以降世界各地で蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder; CCD)という、蜂の生死が不明で採餌効率と生存率が低下する現象が起きはじめて問題になっている。その被害は壮大で1947年から2008年の間でアメリカのミツバチの個数は61%減り、2019年でも31.6%減っている1)。原因として農薬、病原体などが挙げられているのだが、フェロモンも影響していると考える。
 ミツバチのフェロモンはコミュニケーションに必要でその一種がナサノフ腺フェロモンだ。ミツバチは蜂群を保ち、コミュニケーションをとる手段の一つとしてナサノフ腺からナサノフ腺フェロモンという集合フェロモンを分泌する。そしてフェロモン量や成分比率は資源の多さに比例すると言われている。
フェロモンは花のにおい成分と似た構造をしており、花の匂いが大気中のオゾンにより変化しミツバチにとって花の魅力が低下したという報告から2)、ミツバチのコミュニケーションに必要なナサノフ腺フェロモンもオゾンが影響していることが考えられる。そのため本研究はその一種のナサノフ腺フェロモンの主成分であるゲラニオールがオゾン分解によってどのような変質をするかを明らかにすることを目的とする。
直径約0.8 cmのゲラニオールの膜に対して1000 ppmvのオゾンを暴露し、時間ごとにFTIRによるスペクトル測定から反応速度定数を算出した。
その結果、反応速度定数2.3×10-21 cm3 molecule-1 s-1を求めることができた。気相での反応速度定数9.3×10-16 cm3 molecule-1 s-1 に比べ液相の方が遅いことから液相へのオゾンの取り込み速度、液相内でのオゾンの拡散速度が影響していると考えられる。またオゾンを暴露し続けると高分子化により粘度が上がることがわかった。高分子化によるフェロモン量の減少により、蜂がフェロモンの香りを嗅ぎ分けにくくなっている可能性が考えられる。

1) Robert C. Kelly. The Balance, Colony Collapse Disorder and Its Impact on the Economy. https://www.thebalancemoney.com/bee-colony-collapse-disorder-facts-and-economic-impact-3305815. Accessed 2023/01/05.
2) Démares, Fabien, et al. “Acute Ozone Exposure Impairs Detection of Floral Odor, Learning, and
Memory of Honey Bees, through Olfactory Generalization.” Science of The Total Environment, vol. 827, June 2022, p. 154342, https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2022.154342.