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[O06-P39] 地震が頻発する能登半島北東部で発生した最大震度6弱(2022年6月19日)の地震前後での周辺住民の意識・行動の変化と現状
キーワード:地震、津波、防災
〇研究の目的
能登半島北東部では2018年6月頃から地震の発生回数が増加し、2021年に入って有感地震も増加している。特に2022年6月19日の最大震度6弱(M5.4)の地震(以降、最大地震)では局所的な被害が生じた。現在でも群発的な地震活動は継続しており、さらなる地震被害や海域での大地震による津波被害が危惧される。本研究では、地震活動が活発な地域の石川県珠洲市及びその周辺地域における地震津波防災意識に関するアンケート調査により、最大地震前後での意識・行動の変化と現状を調査する。
〇研究方法
最大震度6弱の地震前後での意識・行動の変化と現状を調べるためにGoogle formを用いて石川県立飯田高等学校の教員、学生及び保護者と珠洲市民及びその周辺住民を対象としたアンケートを震度6弱前の2022年5月と震度6弱後の2023年2月に実施した。最大地震前のアンケート結果(杉井ほか, 2023)と本研究のアンケート結果を比較し、最大地震前後での意識・行動の変化と現状を調査する。
本研究のアンケートでは新たに「自宅は津波の想定区域内であるか」「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」の2つの項目を追加した。性別では男女、年齢では学生(10代)成人(20代以降)、居住地域では震度6弱を記録した珠洲市と隣接する能登町について比較検討した。又、「自宅は津波の想定区域内であるか」という質問で、はい・いいえ・分からないという3つの回答ごとに津波の備えをしている人の割合を調べた。「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」という質問では、行動した人には具体的な行動内容、行動しなかった人にはその理由を複数選択で質問した。
〇研究結果及び考察
最大地震前後で実施した2回のアンケートにおいて、回答者の属性に大きな差異はなく、どちらも回答が400件程度集まり、男女比がおおよそ4:6、能登町:珠洲市が3:7程度であった。最大地震前後で「地震に不安があるか」「津波の備えをしているか」「非常用持ち出し袋を持っているか」の3つの質問について比較した。「地震に不安があるか」では、1%程度の差しか見られなかった。「津波の備えをしているか」では最大地震以後に10%ほど減少し、「非常用持ち出し袋を持っているか」では8%程度上昇した。
アンケート結果には、性別での違いは特に見られなかったが、地域での違いとして、能登町よりも珠洲市の方が最大地震以後に地震や津波に備えるための行動をした人の割合が約40%高くなり、非常用持ち出し袋を持っている人の割合も約20%高くなっていた。ここから地震の被害を強く受けた珠洲市の住民の防災意識が地震後に高くなったということが分かる。年齢での違いとしては、学生よりも成人の方が震度6弱後に行動をした人の割合と非常用持ち出し袋を持っている人の割合が共に約20%高く、更に地震に対して不安を感じているかという質問においても成人の方が約15%高いことが分かった。このことから学生よりも成人の方が防災意識が高いと言える。
「自宅は津波の想定区域内であるか」という質問で回答ごとに津波の備えの有無を調べたところ、自宅は津波の想定区域内か分からないと答えて備えをしている人は約29%、自宅は津波の想定区域内であると答えて備えをしている人が約42%、自宅が津波の想定区域内でないと答え備えをしている人は約19%と、津波の想定区域内であると認識している人が最も津波に対する備えをしていることが分かった。津波への備えについての質問では、「避難場所を確認した」という回答が最も多かった。
最後に「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」という質問において、行動をした人は全体の約52%、していない人は全体の約48%であり、行動した人に対して具体的な行動内容を問う項目では、「非常時の食料や飲料・必要なものをまとめた」という回答が最も多く、逆に「家の補強をした」という回答は最小であった。手軽に用意でき、費用もあまりかからない災害対策は多くの人が取り組み、逆に手軽ではなく費用も多くかかる災害対策は取り組む人が少ないということが分かった。また、行動をしていない人にその理由を問う質問では、「何をすればいいか分からない」や「震度6弱で被害を受けなかったから」という回答が特に多くあり、「避難経路の確認が面倒である」や「お金がかかるから」という回答はかなり少なかった。このような結果から、住民に対して具体性のある防災対策や震度6弱以上の揺れに襲われることもあり得ることを周知する必要性が浮き彫りになったと言える。
能登半島北東部では2018年6月頃から地震の発生回数が増加し、2021年に入って有感地震も増加している。特に2022年6月19日の最大震度6弱(M5.4)の地震(以降、最大地震)では局所的な被害が生じた。現在でも群発的な地震活動は継続しており、さらなる地震被害や海域での大地震による津波被害が危惧される。本研究では、地震活動が活発な地域の石川県珠洲市及びその周辺地域における地震津波防災意識に関するアンケート調査により、最大地震前後での意識・行動の変化と現状を調査する。
〇研究方法
最大震度6弱の地震前後での意識・行動の変化と現状を調べるためにGoogle formを用いて石川県立飯田高等学校の教員、学生及び保護者と珠洲市民及びその周辺住民を対象としたアンケートを震度6弱前の2022年5月と震度6弱後の2023年2月に実施した。最大地震前のアンケート結果(杉井ほか, 2023)と本研究のアンケート結果を比較し、最大地震前後での意識・行動の変化と現状を調査する。
本研究のアンケートでは新たに「自宅は津波の想定区域内であるか」「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」の2つの項目を追加した。性別では男女、年齢では学生(10代)成人(20代以降)、居住地域では震度6弱を記録した珠洲市と隣接する能登町について比較検討した。又、「自宅は津波の想定区域内であるか」という質問で、はい・いいえ・分からないという3つの回答ごとに津波の備えをしている人の割合を調べた。「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」という質問では、行動した人には具体的な行動内容、行動しなかった人にはその理由を複数選択で質問した。
〇研究結果及び考察
最大地震前後で実施した2回のアンケートにおいて、回答者の属性に大きな差異はなく、どちらも回答が400件程度集まり、男女比がおおよそ4:6、能登町:珠洲市が3:7程度であった。最大地震前後で「地震に不安があるか」「津波の備えをしているか」「非常用持ち出し袋を持っているか」の3つの質問について比較した。「地震に不安があるか」では、1%程度の差しか見られなかった。「津波の備えをしているか」では最大地震以後に10%ほど減少し、「非常用持ち出し袋を持っているか」では8%程度上昇した。
アンケート結果には、性別での違いは特に見られなかったが、地域での違いとして、能登町よりも珠洲市の方が最大地震以後に地震や津波に備えるための行動をした人の割合が約40%高くなり、非常用持ち出し袋を持っている人の割合も約20%高くなっていた。ここから地震の被害を強く受けた珠洲市の住民の防災意識が地震後に高くなったということが分かる。年齢での違いとしては、学生よりも成人の方が震度6弱後に行動をした人の割合と非常用持ち出し袋を持っている人の割合が共に約20%高く、更に地震に対して不安を感じているかという質問においても成人の方が約15%高いことが分かった。このことから学生よりも成人の方が防災意識が高いと言える。
「自宅は津波の想定区域内であるか」という質問で回答ごとに津波の備えの有無を調べたところ、自宅は津波の想定区域内か分からないと答えて備えをしている人は約29%、自宅は津波の想定区域内であると答えて備えをしている人が約42%、自宅が津波の想定区域内でないと答え備えをしている人は約19%と、津波の想定区域内であると認識している人が最も津波に対する備えをしていることが分かった。津波への備えについての質問では、「避難場所を確認した」という回答が最も多かった。
最後に「震度6弱の地震を受けて行動したことはあるか」という質問において、行動をした人は全体の約52%、していない人は全体の約48%であり、行動した人に対して具体的な行動内容を問う項目では、「非常時の食料や飲料・必要なものをまとめた」という回答が最も多く、逆に「家の補強をした」という回答は最小であった。手軽に用意でき、費用もあまりかからない災害対策は多くの人が取り組み、逆に手軽ではなく費用も多くかかる災害対策は取り組む人が少ないということが分かった。また、行動をしていない人にその理由を問う質問では、「何をすればいいか分からない」や「震度6弱で被害を受けなかったから」という回答が特に多くあり、「避難経路の確認が面倒である」や「お金がかかるから」という回答はかなり少なかった。このような結果から、住民に対して具体性のある防災対策や震度6弱以上の揺れに襲われることもあり得ることを周知する必要性が浮き彫りになったと言える。