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[O06-P51] 仙台西部 戸神山に見られる異常堆積構造の検討
キーワード:貫入砕屑岩脈、異常堆積構造、仙台西部
仙台西部地域の地質図は最新のものでも1987年に作成された5万分の1地質図(川崎・山形, 1987)で、断層などの地質構造の詳細な記載は少なく、地層の堆積年代や地層同士の関係の不明な点は多い。また本研究地域は近年ではカルデラの存在が明らかになっているが、前述した地質図には描かれていない。また、仙台第三高等学校58回生による先行研究(遠藤隼介ほか,2022)では仙台西部地方に位置する戸神山周辺で地質調査がなされ2万5千分の1地質図と地質断面図が作成されている。この研究結果から、戸神山周辺には凝灰質シルト岩が広く分布していること、凝灰質シルト岩や砂岩などの堆積岩がほぼ水平に堆積していること、山頂部の鉛直方向に安山岩が貫入していることなどが示されていた。本研究では先行研究における研究地域であった戸神山周辺でフィールドワークを行ったところ、多種の地層が複雑に入り混じった産状を示す露頭を発見した。私たちはこの特異な露頭の地質構造と成り立ちに興味を抱き、発見した露頭の地質構造とその起源を解明することを目的とした。
そこで戸神山でフィールドワークを行った際に、岩相の分布、地層の姿勢、地質構造などを示したルートマップを作成し、発見した露頭でのスケッチ、クリノメーターを用いた走向傾斜の測定、岩石のサンプリングを行った。また、露頭を構成している地層に含まれる鉱物を特定するため、サンプリングした砕屑物の岩石サンプルを水で軽く洗い、乾かした後、目の細かさ2㎜のふるいにかけて砂の大きさ以下の粒子に分けてプレパラートを作り、実体顕微鏡を用いて観察を行った。岩石サンプルは、母岩、れき混じりの岩石、砂岩、有色の岩片を含む砂岩の部分から採集した。母岩である凝灰質シルト岩はほとんど石英や白っぽい岩片で構成されているが、有色の岩片を含む砂岩と礫混じりの堆積岩は比較的黒曜石や有色鉱物を多く含んでいたということから岩石を構成する鉱物が異なることが明らかとなった。またこの露頭ではラミナを示す砂岩の堆積岩ブロックが、本来水平に堆積してできるものであるにもかかわらず垂直に混入していることから堆積物の上下方向の流動があったということが考えられる。また鉱物の観察より岩石ごとに含まれている鉱物の種類と含有量が異なることから、それぞれの岩石は異地性であると言える。以上より戸神山で発見した異常堆積構造は、砕屑岩脈という砕屑物が地震や圧力などの影響で母岩に混入したことによって生じた構造だと考えられる。
また、どのような要因でこの特異な構造が形成されたかについて2つの仮説を立てた。1つ目は水成岩脈と呼ばれる構造で、この構造は地殻変動や侵食などによって水底に裂け目が生じ、そこに砕屑物が流入してできるもので、主に湖のような地形で形成される。2つ目は、貫入砕屑岩脈と呼ばれる構造で、この構造は地震などの地殻変動によって生じた母岩の亀裂に、下方から圧力がかかったことで堆積岩が貫入して形成される。
先述の2つの仮説のどちらが適切かを検証するために、先輩方が製作した地質断面図から異常堆積構造と戸神山を構成する地層との関係性を検討した。戸神山の地層は下から砂岩、その上に凝灰質シルト岩、凝灰角礫岩、安山岩で構成されており、異常堆積構造が位置しているのは凝灰質シルト岩の層準にあたる。異常堆積構造より上に位置する岩石は安山岩と凝灰角礫岩であり、これらはどちらも有色鉱物を含む。しかし、異常堆積構造から採集した堆積岩サンプルの中にこれらと同様の鉱物組成のものは見られなかったことから、異常堆積構造を構成する堆積岩ブロックが上部の地層から供給された可能性は低いと考えられる。過去に凝灰質シルト岩の層の上位に別の砕屑岩の層があり、侵食によって流出した後に噴火が発生して現在のようになった可能性も考えられるが、噴火以前のなだらかな斜面で一つまたは複数の地層をすべて流出させるほどの大規模な侵食が起こることは現実的ではないため、下方から供給されたと考えるのが妥当である。したがって、現時点で異常堆積構造は、後者の仮説で示した貫入砕屑岩脈である可能性が高いと考えられる。
今後は異常堆積構造内の層と層の境界を重点的に調査し、境界の形状や境界面の岩石の大きさなどをより明確にすることで仮説を検証し、他地点で同様の異常堆積構造ができたとき、周囲の地盤にどのような影響が出るのか明らかにしていきたい。
[引用文献]
北山信, 中川久夫.表層地質図 川崎・山形 1:50,000.国土庁.1987
大沢穠, 三村弘二, 久保和也, 広島俊男, 村田泰章. 1:200,000 地質図 仙台. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 1987
遠藤隼介, 音道凜旺, 小島煕平, 福澄茉音. 仙台西部地質構造中身はこうよ. 2021. 仙台第三高等学校58回生課題研究地学班
そこで戸神山でフィールドワークを行った際に、岩相の分布、地層の姿勢、地質構造などを示したルートマップを作成し、発見した露頭でのスケッチ、クリノメーターを用いた走向傾斜の測定、岩石のサンプリングを行った。また、露頭を構成している地層に含まれる鉱物を特定するため、サンプリングした砕屑物の岩石サンプルを水で軽く洗い、乾かした後、目の細かさ2㎜のふるいにかけて砂の大きさ以下の粒子に分けてプレパラートを作り、実体顕微鏡を用いて観察を行った。岩石サンプルは、母岩、れき混じりの岩石、砂岩、有色の岩片を含む砂岩の部分から採集した。母岩である凝灰質シルト岩はほとんど石英や白っぽい岩片で構成されているが、有色の岩片を含む砂岩と礫混じりの堆積岩は比較的黒曜石や有色鉱物を多く含んでいたということから岩石を構成する鉱物が異なることが明らかとなった。またこの露頭ではラミナを示す砂岩の堆積岩ブロックが、本来水平に堆積してできるものであるにもかかわらず垂直に混入していることから堆積物の上下方向の流動があったということが考えられる。また鉱物の観察より岩石ごとに含まれている鉱物の種類と含有量が異なることから、それぞれの岩石は異地性であると言える。以上より戸神山で発見した異常堆積構造は、砕屑岩脈という砕屑物が地震や圧力などの影響で母岩に混入したことによって生じた構造だと考えられる。
また、どのような要因でこの特異な構造が形成されたかについて2つの仮説を立てた。1つ目は水成岩脈と呼ばれる構造で、この構造は地殻変動や侵食などによって水底に裂け目が生じ、そこに砕屑物が流入してできるもので、主に湖のような地形で形成される。2つ目は、貫入砕屑岩脈と呼ばれる構造で、この構造は地震などの地殻変動によって生じた母岩の亀裂に、下方から圧力がかかったことで堆積岩が貫入して形成される。
先述の2つの仮説のどちらが適切かを検証するために、先輩方が製作した地質断面図から異常堆積構造と戸神山を構成する地層との関係性を検討した。戸神山の地層は下から砂岩、その上に凝灰質シルト岩、凝灰角礫岩、安山岩で構成されており、異常堆積構造が位置しているのは凝灰質シルト岩の層準にあたる。異常堆積構造より上に位置する岩石は安山岩と凝灰角礫岩であり、これらはどちらも有色鉱物を含む。しかし、異常堆積構造から採集した堆積岩サンプルの中にこれらと同様の鉱物組成のものは見られなかったことから、異常堆積構造を構成する堆積岩ブロックが上部の地層から供給された可能性は低いと考えられる。過去に凝灰質シルト岩の層の上位に別の砕屑岩の層があり、侵食によって流出した後に噴火が発生して現在のようになった可能性も考えられるが、噴火以前のなだらかな斜面で一つまたは複数の地層をすべて流出させるほどの大規模な侵食が起こることは現実的ではないため、下方から供給されたと考えるのが妥当である。したがって、現時点で異常堆積構造は、後者の仮説で示した貫入砕屑岩脈である可能性が高いと考えられる。
今後は異常堆積構造内の層と層の境界を重点的に調査し、境界の形状や境界面の岩石の大きさなどをより明確にすることで仮説を検証し、他地点で同様の異常堆積構造ができたとき、周囲の地盤にどのような影響が出るのか明らかにしていきたい。
[引用文献]
北山信, 中川久夫.表層地質図 川崎・山形 1:50,000.国土庁.1987
大沢穠, 三村弘二, 久保和也, 広島俊男, 村田泰章. 1:200,000 地質図 仙台. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 1987
遠藤隼介, 音道凜旺, 小島煕平, 福澄茉音. 仙台西部地質構造中身はこうよ. 2021. 仙台第三高等学校58回生課題研究地学班