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[O06-P52] 仙台西部の地質構造と地史の検討〜珪藻化石・野外調査に基づいて〜
キーワード:カルデラ、珪藻、東北日本
東北地方には、1980年代後半〜2000年代初頭にかけての地熱開発に関連した研究などによって、後期中新世以降に形成されたカルデラが多数存在していたことが報告されている(宇野ほか,2017・斎藤ほか,2017)。仙台西部においても中新世中期〜後期にかけて白沢カルデラが形成されたとされ、白沢カルデラ崩壊後の内部にあたる地域には定義カルデラが誕生した(宇野ほか,2017・斎藤ほか,2017)。しかし、仙台西部の20万分の1地質図(大沢ほか,1987)にはカルデラの構造が反映されていないため地質構造の詳細な記載が少なく、1980年の仙台西部の地層についての概説(天野,1980)では日蔭層や大手門層の記載がなされているが、地層の堆積環境や境界について不明な点が多い。日蔭層は白沢カルデラ形成前の海洋性堆積物、大手門層は白沢カルデラ形成による火砕流堆積物であり、日蔭層は大手門層に「不整合で覆われている」と記述されている(宇野ほか,2017・斎藤ほか,2017・天野,1980)。本研究は、野外調査および示準化石・示相化石として有用な珪藻類の化石の分析から仙台西部のカルデラ群の地質構造および地史を推定し、東北日本の構造発達史を解明することを目的としている。
この研究を進めるにあたり、仙台西部において野外調査を実施した。調査地域は日蔭層と大手門層の境界付近にあたる。岩相分布や地層の姿勢を2万5000分の1地形図に記録し、青下川・豆沢川のルートマップを作成した。野外調査を通して、大手門層を示す凝灰岩層と日蔭層を示す泥岩層が断層を境に接していることを確認した。断層面においては、断層条線と断層が破壊される過程で形成される複合面構造を確認し、方位解析によって豆沢川の断層が正断層であり、上盤側が南西方向に移動していることを推定した。また、野外調査にもとづいて豆沢川の地質断面図を作成した。地質断面図には大手門層と日蔭層の境界に正断層が存在しているという新知見を反映した。青下川の日蔭層分布地域では斜交葉理を発見し、その古流向を方位解析したところ、古流向はN16°E(南から北への流れ)を示した。採集した堆積岩サンプルごとに永久プレパラートを作成し、光学顕微鏡で珪藻化石を同定した。豆沢川・青下川において珪藻化石が産出しやすい泥岩や砂岩が多種確認できる露頭を発見した場合は柱状図を作成した。豆沢川において柱状図を作成した露頭からは珪藻化石を全く産出しなかったが、青下川において柱状図を作成した露頭からは珪藻化石Pinnularia.sp(淡水性・湖沼性)、Staurosira.sp(淡水性・湖沼性)、Diatoma.sp(淡水性・河川性)、淡水性海綿化石を多数確認した。
これまでの記載では、日蔭層は大手門層に「不整合で覆われている」とあったが、日蔭層と大手門層が「正断層で接している」ことが明らかになったため、1.日蔭層が堆積する 2.不整合で大手門層が堆積する 3.地殻変動で正断層ができる 4.日蔭層と大手門層が接する という地史を推定することができた。仙台西部では白沢カルデラ崩壊後の内部に定義カルデラが誕生したことが報告されているが、豆沢川で確認された正断層の方位は定義カルデラの輪郭の方位と一致していた。また、豆沢川で確認した断層が上盤側が下に落ちている正断層だったため、おそらくこの断層は定義カルデラ火山体の大変形のさいに発生した大規模地すべりによって形成された可能性が高い。野外調査の結果に基づいて、日蔭層と大手門層が正断層で接しているという新知見を反映した青下川・豆沢川の2万5000分の1地質図を作成した。これまで、日蔭層は白沢カルデラ形成前の海洋性堆積物であるとされていたが、日蔭層から淡水性生物の化石を発見したということは、当時の海洋中心の東北日本において淡水性生物が生息できる陸地環境が存在していたという可能性が考えられる。また、青下川の日蔭層分布地域で発見した斜交葉理の方位解析結果は現時点ではN16°Eだが、この方位が日蔭層が堆積した当時の海流によるものかどうかを今後検証していきたい。
1)宇野正起、奥村聡、土屋範芳、山田亮一(2017)中新世後期白沢カルデラの噴出マグマの分化と現世の地熱流体貯留層. 日本地熱学会誌 39 1,25-37.
2)斎藤遼一、土屋範芳、平野伸夫、山田亮一(2017)仙台西部白沢カルデラ堆積物中の石英の熱発光挙動と地熱探査. 日本地熱学会誌 39 2 101-110.
3)大沢あつし 三村弘二 久保和也 広島俊男 村田泰章(1987)地質図Navi 20万分の1地質図 仙台
4)天野一男(1980)奥羽背梁山脈地域・山形県境地域の地質学的研究 東北大学地質学古生物学教室研究邦文報告81 1-56.
この研究を進めるにあたり、仙台西部において野外調査を実施した。調査地域は日蔭層と大手門層の境界付近にあたる。岩相分布や地層の姿勢を2万5000分の1地形図に記録し、青下川・豆沢川のルートマップを作成した。野外調査を通して、大手門層を示す凝灰岩層と日蔭層を示す泥岩層が断層を境に接していることを確認した。断層面においては、断層条線と断層が破壊される過程で形成される複合面構造を確認し、方位解析によって豆沢川の断層が正断層であり、上盤側が南西方向に移動していることを推定した。また、野外調査にもとづいて豆沢川の地質断面図を作成した。地質断面図には大手門層と日蔭層の境界に正断層が存在しているという新知見を反映した。青下川の日蔭層分布地域では斜交葉理を発見し、その古流向を方位解析したところ、古流向はN16°E(南から北への流れ)を示した。採集した堆積岩サンプルごとに永久プレパラートを作成し、光学顕微鏡で珪藻化石を同定した。豆沢川・青下川において珪藻化石が産出しやすい泥岩や砂岩が多種確認できる露頭を発見した場合は柱状図を作成した。豆沢川において柱状図を作成した露頭からは珪藻化石を全く産出しなかったが、青下川において柱状図を作成した露頭からは珪藻化石Pinnularia.sp(淡水性・湖沼性)、Staurosira.sp(淡水性・湖沼性)、Diatoma.sp(淡水性・河川性)、淡水性海綿化石を多数確認した。
これまでの記載では、日蔭層は大手門層に「不整合で覆われている」とあったが、日蔭層と大手門層が「正断層で接している」ことが明らかになったため、1.日蔭層が堆積する 2.不整合で大手門層が堆積する 3.地殻変動で正断層ができる 4.日蔭層と大手門層が接する という地史を推定することができた。仙台西部では白沢カルデラ崩壊後の内部に定義カルデラが誕生したことが報告されているが、豆沢川で確認された正断層の方位は定義カルデラの輪郭の方位と一致していた。また、豆沢川で確認した断層が上盤側が下に落ちている正断層だったため、おそらくこの断層は定義カルデラ火山体の大変形のさいに発生した大規模地すべりによって形成された可能性が高い。野外調査の結果に基づいて、日蔭層と大手門層が正断層で接しているという新知見を反映した青下川・豆沢川の2万5000分の1地質図を作成した。これまで、日蔭層は白沢カルデラ形成前の海洋性堆積物であるとされていたが、日蔭層から淡水性生物の化石を発見したということは、当時の海洋中心の東北日本において淡水性生物が生息できる陸地環境が存在していたという可能性が考えられる。また、青下川の日蔭層分布地域で発見した斜交葉理の方位解析結果は現時点ではN16°Eだが、この方位が日蔭層が堆積した当時の海流によるものかどうかを今後検証していきたい。
1)宇野正起、奥村聡、土屋範芳、山田亮一(2017)中新世後期白沢カルデラの噴出マグマの分化と現世の地熱流体貯留層. 日本地熱学会誌 39 1,25-37.
2)斎藤遼一、土屋範芳、平野伸夫、山田亮一(2017)仙台西部白沢カルデラ堆積物中の石英の熱発光挙動と地熱探査. 日本地熱学会誌 39 2 101-110.
3)大沢あつし 三村弘二 久保和也 広島俊男 村田泰章(1987)地質図Navi 20万分の1地質図 仙台
4)天野一男(1980)奥羽背梁山脈地域・山形県境地域の地質学的研究 東北大学地質学古生物学教室研究邦文報告81 1-56.