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[O06-P91] 光害の可視化 ~街明かりが夜空に与える影響~
キーワード:光害、夜空、可視化
研究背景・目的 日々の天体観測で、街明かりによる夜空の明るさへの影響を感じている。2020の本部の先輩方の先行研究では、街明かりと、その明かりを反射する雲の存在が夜空の明るさを増す要因となることを明らかにした。本研究では、独自に考案した夜空の明るさ調査の方法を用いて、夜空の明るさの程度を可視化し、街明かりによる影響を探ることを目的としている。 研究手法 本研究では(1)~(3)の三つの機器で観測を行い、得られたデータを元に夜空の明るさを可視化した。 (1)デジタル一眼レフカメラの自動撮影装置による観測 Raspberry Piで制御したカメラ2台を都心方面と八王子方面に向けて設置し、毎日18時~5時の1時間ごとに自動撮影した(2021年1月~2023年4月現在)。得られたデータを用いて、以下の①~③の観点でグラフを作成し、分析した。 一年間の夜空の明るさの変化を分析 Pythonプログラムを用いて2年分の約6500件の画像を*グレースケール化し、区切った短冊ごとのピクセル値(光度)の平均値を求めて明るさの値とし、それを用いてグラフを作成し、明るさを分析した。 ※OpenCVよりY(光度)←0.299・R+0.582・G+0.114・B 夜空の明るさの階級作成と分析 2021年の1年分の画像を用いて、クラスタリングという機械学習手法で5段階の夜空の明るさの階級を作成した。作成した階級を用いて、時刻と季節に着目したグラフをそれぞれ作成し、各時刻や各季節の夜空の明るさの変化を分析した。 メタルハライドランプによる夜空の明るさへの影響の分析 本校の校庭のナイターが水銀灯から、より明るいメタルハライドランプに交換されたため、交換前と後の撮影画像をフィッツファイルに変換し、マカリで明るさの違いを可視化した。 (2)SQM-Lを用いた全天の観測 18時から翌朝6時の1時間ごとに8方位、仰角10度ごとに光度を観測し、一夜の明るさの変化をPythonでグラフを作成し、分析した。(2021年12月13~14日、2022年8月8日~9日、2022年12月14日~15日) (3)HQカメラ用いた撮影装置で広範囲の夜空の観測 より高い高度における街明かりの影響を調査するため、一眼レフカメラより画角が広いRaspberry Pi専用のカメラであるHQカメラに置き換えた新たな装置を自作した。 結果と考察 デジタル一眼レフカメラの自動撮影装置による観測 ①一年間の夜空の明るさの変化の分析 作成したグラフ(図1)から、特に明るくなっている時期について、本校気象データや気象庁のデータを元に調べたところ、台風や低気圧などの雲が出る天候の日と重なったため、雲があると夜空の明るさが増すことが分かった。また、冬は暗い日が比較的多く、それは雲の出る日が少ないためだと考えた。 ②夜空の明るさの階級作成と分析 時刻によるグラフから、夜空は2時から3時に最も暗くなることが分かった。季節によるグラフから、夏季よりも冬季の方が暗い日が多いことが分かった。そこで、雲の量によって画像を分類し、グラフを作成したところ、やはり冬季に雲が少ない日が多く、夜空の明るさと雲の量に関連があることが分かった。 ③メタルハライドランプによる夜空の明るさへの影響の分析 マカリで明るさを可視化した画像を比較したところ、メタルハライドランプに交換された後の画像の方が明るくなっており、水銀灯などの従来の光源よりも、メタルハライドランプなどの高輝度ランプの方が、夜空の明るさに与える影響が大きいことがわかった。 SQM―Lを用いた全天の観測 作成したグラフから、夜空は地表付近ほど明るくなり、周辺の建物の影響を受けていることが分かった。 (3) HQカメラ用いた撮影装置で広範囲の夜空の観測 HQカメラを設置し、2022年10月の一ヶ月間、試作的に観測を行い、一眼レフのデータと比較したところ、明るさの変化の傾向はおおむね一致した。 まとめと今後の展望 一眼レフカメラ及びHQカメラを活用した自作観測装置とSQM-Lで2年間観測を継続し、夜空の明るさを可視化した。独自の階級を作成することにより、夜空の明るさは時刻や季節に影響を受け、雲による街明かりの反射が大きな影響を与えることや、近年増加したLEDやメタルハライドランプが従来の光源より影響を与えることなどがわかった。今後は自作のHQカメラを用いた複数方向のより広範囲の撮影・分析を行い、LEDやメタルハライドランプによる影響をさらに調査する。