10:45 〜 11:00
[PCG18-01] 将来の月・惑星探査に向けた超小型質量分析器の開発
★招待講演
キーワード:超小型、探査、その場分析、質量分析
現在,惑星探査ミッションのペイロードとして広く用いられている装置に,質量分析器がある.質量分析器は,採取したサンプルに含まれる原子および分子を測定する装置であり,試料の定量分析・定性分析(例:元素組成分析や同位体組成分析)に応用可能である.本研究で特に着目しているのは,中性ガスをサンプルとする中性粒子質量分析器であり,同様の装置として過去に67P/Churyumov-Gerasimenko彗星のコマの組成を測定したRosetta/ROSINA(Balsiger et al. 2006),火星から散逸する高層大気を測定したMAVEN/NGIMS(Mahaffy et al. 2015)などがある.中性粒子質量分析器は,その汎用性の高さから,将来的にも様々なミッションに搭載される見込みである(例:LUPEX/REIWA/TRITON).
質量分析器の特徴の一つに,その場分析を行う装置であるという点が挙げられる.分光観測や撮像観測などのリモートセンシングとは異なり,質量分析ではターゲットとなる天体に装置が接近する必要があるため,リソースの削減は探査のターゲットを拡大していく上で重要な課題である.また今後,フラッグシップミッションと相補的にCubeSatなど小型衛星を活用した宇宙探査も活発化する見込みであり,そのような機会にも活用可能な質量分析器の開発は一大テーマである.
そこで本研究では,<1U(<10×10×10 cm3)の超小型スケールに収まる中性粒子質量分析器を開発している.開発している質量分析器は飛行時間型(TOF-MS)に基づいており,本研究ではリソースを削減しながら飛行時間を稼ぐための工夫として,Orbitrap型(Makarov, 2000)のイオン反射電極を採用している.これによって,同じ光学系をイオンが複数往復できるようになっており,超小型装置でも従来装置に匹敵する飛行時間(または質量分解能)が得られる.現在までに開発したテストモデル(光学系の体積 ~7×7×8 cm3)では,イオンが反射電極内を1往復する場合のマススペクトルが確認できている.性能試験結果からは,質量分解能m/Δm ~ 50,感度 ~1×10-6 (counts/s)/(particle/cc),検出限界(S/N=1)~1×104 particle/ccが示されている.また現在までに,数値シミュレーションをもとにして,2往復以上のマススペクトル取得に向けた分析器の光学系の原理的な設計を完了している.数値シミュレーションによれば,現在までに開発したテストモデルに新たにゲート電極(10 nsの間に,+100 Vから-300 Vまで電圧をスイッチする電極)のみを加えることで,複数往復のイオン軌道を取得可能な見込みである.今後,ゲート電極の開発や実験室実験に着手し,この改良設計の性能実証を進めていく予定である.
質量分析器の特徴の一つに,その場分析を行う装置であるという点が挙げられる.分光観測や撮像観測などのリモートセンシングとは異なり,質量分析ではターゲットとなる天体に装置が接近する必要があるため,リソースの削減は探査のターゲットを拡大していく上で重要な課題である.また今後,フラッグシップミッションと相補的にCubeSatなど小型衛星を活用した宇宙探査も活発化する見込みであり,そのような機会にも活用可能な質量分析器の開発は一大テーマである.
そこで本研究では,<1U(<10×10×10 cm3)の超小型スケールに収まる中性粒子質量分析器を開発している.開発している質量分析器は飛行時間型(TOF-MS)に基づいており,本研究ではリソースを削減しながら飛行時間を稼ぐための工夫として,Orbitrap型(Makarov, 2000)のイオン反射電極を採用している.これによって,同じ光学系をイオンが複数往復できるようになっており,超小型装置でも従来装置に匹敵する飛行時間(または質量分解能)が得られる.現在までに開発したテストモデル(光学系の体積 ~7×7×8 cm3)では,イオンが反射電極内を1往復する場合のマススペクトルが確認できている.性能試験結果からは,質量分解能m/Δm ~ 50,感度 ~1×10-6 (counts/s)/(particle/cc),検出限界(S/N=1)~1×104 particle/ccが示されている.また現在までに,数値シミュレーションをもとにして,2往復以上のマススペクトル取得に向けた分析器の光学系の原理的な設計を完了している.数値シミュレーションによれば,現在までに開発したテストモデルに新たにゲート電極(10 nsの間に,+100 Vから-300 Vまで電圧をスイッチする電極)のみを加えることで,複数往復のイオン軌道を取得可能な見込みである.今後,ゲート電極の開発や実験室実験に着手し,この改良設計の性能実証を進めていく予定である.