日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG18] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、坂谷 尚哉(JAXA 宇宙科学研究所)、小川 和律(宇宙航空研究開発機構)、桑原 正輝(立教大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PCG18-P04] 電離圏観測のための中性大気質量分析器の開発

*米田 匡宏1齊藤 昭則1斎藤 義文2 (1.京都大学大学院 理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:質量分析器、中性大気組成、スポラディックE層

電離圏におけるプラズマの運動は、電磁場による力だけでなく、中性大気粒子との衝突にも影響される。この衝突の頻度は互いの粒子の種類に依存するため、電離圏におけるプラズマ現象の包括的観測においては、中性大気組成の観測も重要となる。しかし、大気組成観測のための質量分析器は大型化する傾向にあることなどから、近年の飛翔体による地球電離圏の直接観測において、中性組成観測が行われた例は少ない。そこで、観測ロケットや低軌道衛星に搭載し、地球電離圏における中性大気組成を測定するために、小型の中性大気質量分析器の開発を進めている。本装置は2024年夏季に実施予定のスポラディックE層を観測対象とした観測ロケットS-310-46号機に搭載され、高度約90kmー130kmにおいて主要な中性大気成分であるO、O2やN2を中心とした中性大気密度・組成の高度分布を取得する予定である。

この中性大気質量分析器は、JAXA宇宙科学研究所において月極域地質中の水資源探査のために開発されている飛行時間型質量分析器TRITONを基にしている。飛行時間型質量分析では飛行距離が長いほど高分解能となるが、大型となってしまう。そこで、TRITONでは粒子を3回反射させることにより、小型ながらも高分解能を達成している。

S-310ロケットに搭載するためにはアナライザ部の更なる小型化が必要となるため、イオン光学的な収束条件を満たすような寸法・電圧を新たに計算し、その分解能や感度等の性能評価を粒子シミュレーションにより行った。結果、基となったTRITONと比較すると、分解能に関しては飛行距離の減少から予想される範囲内の値が得られたが、感度に関しては飛行した粒子が検出器以外の電極や壁面などに衝突したこと等が原因で、異なる傾向が見られた。アナライザ部は現在製作中であり、2023年度中に特性や性能を取得するための試験を行う予定である。

また、飛翔体搭載に向けて、新たに前室部と呼ばれる粒子取り入れ口の開発も行っている。粒子は装置に対して相対的に、熱速度と飛翔体の速度を合わせた速度で入射するが、これを直接アナライザ部へ入れると適切な観測を行うことができなくなる。そのため、イオン源の手前に前室部と呼ばれる球状の部品を取り付け、入射した粒子を内壁と衝突させることで熱速度程度まで減速させる。また、この際に前室部内の気体密度は外部の気体密度と比較すると増強されるため、結果として感度も高まる。これらの減速と密度増強の効果を考慮し、前室部の直径や穴の位置、大きさなどの検討を進めている。