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[PCG19-P01] 3次元電磁流体力学シミュレーションによる地磁気逆転時における地球からの⼤気散逸率の評価
キーワード:大気散逸、磁気圏、地磁気逆転
過去に繰り返し起きたとされる地磁気逆転イベントは、太陽風ー地球磁気圏・大気の相互作用過程を変化させ、地球からの大気散逸に大きな影響を与えてきたと考えられている。特に非熱的散逸においては、地磁気の大きさによって散逸率が顕著に異なることが示唆されている。太陽風ー地球磁気圏・大気の相互作用を模した理論モデルの研究では、地磁気逆転時に、太陽風と大気が直接相互作用してO+の散逸が現在の値である10^25/sから10^28/s-10^29/sに増加する結果 (Wei et al., 2014) と、地磁気逆転時においても磁気圏による太陽風の遮蔽効果が有効で、散逸率は飛躍的には増大しないとする結果 (Gunell et al., 2018; Tsareva et al., 2020) の両者が報告されており、依然として決着がついていない。先行研究では、解析的な非熱的散逸モデルや、低次元な数値モデルが多く、3次元構造を考慮した現実的な数値シミュレーションの例はない。そこで本研究では、3次元多成分1流体電磁流体力学(MHD)シミュレーション(Terada et al., 2009)を用いて、地磁気逆転時を想定した固有磁場を持つ地球からの、全球的な非熱的散逸過程を初めて模擬した。大気組成に窒素と酸素の両者を導入し、太陽光X線・極端紫外線(XUV)は現在の100倍、太陽風条件は比較的静穏(太陽風速度450km/s,密度7/cc,太陽風温度1.2×10^5K,IMF磁場強度10nT)として様々な双極子磁場強度で大気散逸率を計算した。その結果、赤道表面上の双極子磁場強度が0nTから2000nTに変化した場合、大気散逸率は磁場強度の増加とともに 5.1×10^-1kg/s(1.9×10^25/s) から 2.1×10^1kg/s (7.9×10^26/s)へと有意に単調増加し、地球の固有磁場は、太陽風による非熱的大気散逸を抑制せず、増加させる可能性を示した。また、双極子磁場の増加に伴って、磁気圏の極冠において散逸フラックスが増大するflow channelが形成され、大気成分がflow channelに沿って遠方へ散逸することが明らかになった。力学的な解析から、flow channelの低高度では、主にプラズマ圧力勾配力の上向き成分が、高高度では主に磁気圧勾配力及び磁気張力の上向き成分が散逸を駆動することがわかった。