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[PCG19-P02] 後期重爆撃期の天体衝突による地球大気の流体力学的大気散逸数値モデルの開発
キーワード:地球、大気
原始地球大気は水素を主成分とする太陽系星間ガスと、天体衝突などで地球内部から噴き出した水蒸気や二酸化炭素が主体のガスで形成されていると考えられ、それらは特に初期地球では流体力学的散逸によって失われるとされている(Yoshida et al., 2020)。生命の誕生した約38億年前は後期重爆撃期の最中、もしくは直後であり、天体衝突が盛んであったと考えられる。一度の大規模な天体衝突イベントが引き起こす大気散逸を扱った研究は多くあるが(Shuvalov et al., 2013)、特定の期間の間頻繁に起こった天体衝突イベントを介した大気加熱による流体力学的大気散逸を扱った数値シミュレーションは先例がなく、初期地球大気散逸に対する天体衝突の影響の全容は解明されていない。そこで本研究では、先行研究(Yoshida et al., 2021)で提案された、太陽光加熱に伴う流体力学的大気散逸の数値モデルに、新たなエネルギー源として小規模な天体衝突の際に大気に供給された熱エネルギーモデルを組み込むことによって、天体衝突による流体力学的大気散逸シミュレーションを行う。これにより、生命誕生時の地球大気環境において、天体衝突の及ぼす影響を評価する。まず、月のネクタリス盆地に形成されたクレーターの直径に対する衝突フラックス分布(Marchi et al., 2012)と、クレーター直径と衝突天体の直径のスケーリング則(Morbidelli et al., 2018)により、後期重爆撃期における衝突天体の直径とフラックスの関係式を求めた。天体の大気突入時の直径や運動エネルギー変化を記述した解析モデル(Collins et al, 2005)、に、得られた直径ーフラックスの関係式を組み込むことで、約2億年の間の天体衝突の際に、大気に供給される熱エネルギーの総量の高度分布を導出した。この天体衝突熱源モデルを、Yoshida et al. (2021)のモデルに新たに組み込み、流体力学的大気散逸のシミュレーションを行う予定である。本発表ではその結果を報告する。