15:30 〜 17:00
[PCG19-P03] TGO/NOMADの太陽掩蔽観測による火星中間圏水氷雲の検出
キーワード:火星、中間圏雲、TGO/NOMAD、水氷、核形成、太陽掩蔽観測
地球の中間圏では、高度80〜90kmの低温領域(-130℃以下)で夜光雲が頻繁に観測される。この氷粒子の生成には、2つのメカニズムが提案されている。一つは、水蒸気から凝結核が生成される均質核生成である。もうひとつは、大気中の不純物が核となって相変化を起こす不均質核生成である。最新の理論研究により、地球の中間圏雲の核生成では、観測条件と比較することにより、不均質核生成が卓越し、均質核生成はほとんど生じないであろうという結果が得られた(Tanaka et al., 2022 ; https://doi.org/10.5194/acp-22-5639-2022)。
この理論は他の惑星大気の雲形成にも適用しうる。本研究は、火星探査衛星によって得られた中間圏雲観測結果とTanaka et al.(2022)の手法を火星に適用した理論結果を比較し、火星中間圏雲の核生成メカニズムを明らかにすることを目的としている。我々は火星探査衛星ExoMars Trace Gas Orbiter (TGO) に搭載された分光計Nadir and Occultation for MArs Discovery(NOMAD)の紫外可視チャンネルU V I Sによって得られた太陽掩蔽観測分光スペクトルデータを用いる。用いた観測データ期間は、火星年35(2019/3/23-2021/2/6)の4595プロファイルである。この研究では、目的を明らかにするため以下を導出する。 火星中間圏水氷雲の発生頻度分布 火星中間圏水氷雲が発生するとき、しないときそれぞれの背景大気状態(温度、水蒸気量、水蒸気飽和度、ダスト密度) この結果から、地球に比べて寒冷かつ希薄のため大気状態が大きく変化しうる火星においての、中間圏雲の核生成を始めて明らかにすることを企図する。
本研究では、地球における我々の中間圏雲関連研究(Tsuda et al., 2021; https://doi.org/10.1029/2021JD035081)と比較することを念頭に置き、類似の手法で解析を進めた。まず、高度40-100kmでの火星中間圏雲の発生頻度分布を作成した。火星先行研究(Streeter et al., 2022; https://doi.org/10.1029/2021JE007065)にならい、水氷、ダストの検出にはそれぞれ波長320 nm、600 nmのスペクトル透過率を使用した。本研究における火星中間圏雲の検出方法を以下に記す。透過スペクトルから観測視線方向のslant opacityを導出し、定義作成に用いた。なお、Streeter et al. (2022) を参考にして、検出における定義は以下の2つとした。 水氷(320 nm)の視線方向の全光学的厚さ(slant opacity)の値が0.01以上 水氷(320 nm)のslant opacityとダスト(600 nm)のslant opacityの比が1.5以上 その結果、4595軌道のうち1075軌道で中間圏雲を検出した。特に緯度と高度において地球とは異なり、中間圏雲は近日点付近の時期(Ls=240-300)に低緯度から中緯度にかけて多くみられ、その発生頻度は平均でおよそ45%であった。また、中間圏雲は高度40-60kmに集中して発生していたことが明らかになった。
今後は、中間圏雲が存在するとき・存在しないときの背景大気の状態を詳しく解析し、火星中間圏雲の核生成の理論研究と比較することで、均質核生成が支配的であるか不均質核生成が支配的であるか明らかにする。
この理論は他の惑星大気の雲形成にも適用しうる。本研究は、火星探査衛星によって得られた中間圏雲観測結果とTanaka et al.(2022)の手法を火星に適用した理論結果を比較し、火星中間圏雲の核生成メカニズムを明らかにすることを目的としている。我々は火星探査衛星ExoMars Trace Gas Orbiter (TGO) に搭載された分光計Nadir and Occultation for MArs Discovery(NOMAD)の紫外可視チャンネルU V I Sによって得られた太陽掩蔽観測分光スペクトルデータを用いる。用いた観測データ期間は、火星年35(2019/3/23-2021/2/6)の4595プロファイルである。この研究では、目的を明らかにするため以下を導出する。 火星中間圏水氷雲の発生頻度分布 火星中間圏水氷雲が発生するとき、しないときそれぞれの背景大気状態(温度、水蒸気量、水蒸気飽和度、ダスト密度) この結果から、地球に比べて寒冷かつ希薄のため大気状態が大きく変化しうる火星においての、中間圏雲の核生成を始めて明らかにすることを企図する。
本研究では、地球における我々の中間圏雲関連研究(Tsuda et al., 2021; https://doi.org/10.1029/2021JD035081)と比較することを念頭に置き、類似の手法で解析を進めた。まず、高度40-100kmでの火星中間圏雲の発生頻度分布を作成した。火星先行研究(Streeter et al., 2022; https://doi.org/10.1029/2021JE007065)にならい、水氷、ダストの検出にはそれぞれ波長320 nm、600 nmのスペクトル透過率を使用した。本研究における火星中間圏雲の検出方法を以下に記す。透過スペクトルから観測視線方向のslant opacityを導出し、定義作成に用いた。なお、Streeter et al. (2022) を参考にして、検出における定義は以下の2つとした。 水氷(320 nm)の視線方向の全光学的厚さ(slant opacity)の値が0.01以上 水氷(320 nm)のslant opacityとダスト(600 nm)のslant opacityの比が1.5以上 その結果、4595軌道のうち1075軌道で中間圏雲を検出した。特に緯度と高度において地球とは異なり、中間圏雲は近日点付近の時期(Ls=240-300)に低緯度から中緯度にかけて多くみられ、その発生頻度は平均でおよそ45%であった。また、中間圏雲は高度40-60kmに集中して発生していたことが明らかになった。
今後は、中間圏雲が存在するとき・存在しないときの背景大気の状態を詳しく解析し、火星中間圏雲の核生成の理論研究と比較することで、均質核生成が支配的であるか不均質核生成が支配的であるか明らかにする。