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[PCG19-P04] 教師なしクラスタリングによって発見された 2~4 日程度の周期をもつ木星オーロラの変動
キーワード:木星、オーロラ、磁気圏、教師なし学習、クラスタリング
惑星のオーロラは、磁気圏や高層大気間の物質・エネルギー交換によって発生することから、惑星周辺の宇宙環境や大気の動力学を理解するための重要な手掛かりである。木星のオーロラは、主に、衛星イオからの火山噴出物が磁気圏に供給されたのち、木星磁気圏内を循環した後、木星の高層大気に降り込んで発生する。したがって、木星のオーロラ強度の時空間変動は、イオの火山活動や、木星磁気圏内の物質・エネルギー輸送の動力学を反映している。これまで、木星のオーロラの時間変動観測は長年行われてきており、時間変動成分を検出したとする研究は数多いが(e.g., Gladstone et al., 2002; Radioti et al., 2008)、それぞれ限定された期間の断片的なデータによる手動の評価が多く、質の揃った連続的な長時間の時系列データを、統合的に調査した例は少ない。そこで、本研究は、惑星分光観測衛星ひさきが2014年から2015年に観測した、228日分、10分分解能の連続的な大量のオーロラ時系列データに、Lomb-Scargleピリオドグラムと、教師なし学習の一つであるSpectral Clusteringから構成された人工知能を適用してクラスタリングを行うことで、いくつかの周期変動成分を系統的に検出した。その結果、イオ火山が噴火し、磁気圏への物質供給が卓越した2015年2月以降の時期に、2.1日、2.9日、3.1日、3.8日周期の変動が有意に検出された。3日前後の周期をもつ成分は、質量供給率がピークのときに発生していることがわかった。一方で、2日程度の周期をもつ成分は、質量供給率がピークを迎える直前から現れ始め、質量供給率が火山噴火前と同程度に減少してからも出現していた。これらの周期変動は、磁気圏尾部における自転遠心力駆動の磁気リコネクションVasyliūnas reconnection(Vasyliūnas, 1983)との関連が示唆されているtransient aurora(Kimura et al., 2015; 17; 18; Tao et al. 2020)の発生周期に対応しているとみられる。また、Vasyliūnas reconnectionによる、磁気圏尾部の厚みの変動の時間スケールの理論見積もり(Kronberg et al., 2007)にも一致する。本研究の結果は、イオからの質量供給率の時間変動に応じて、Vasyliūnas reconnectionのような、磁気圏のconfigurationがグローバルに変化する現象の周期性が制御される可能性を初めて示唆している。この周期成分についてより詳細に検証することで、磁力線のreconnectionやplasmoid ejectionに関するより詳細な描像が得られるものと期待する。