日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙における物質の形成と進化

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:荒川 創太(海洋研究開発機構)、大坪 貴文(自然科学研究機構 国立天文台)、野村 英子(国立天文台 科学研究部)、瀧川 晶(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PCG20-P03] 多数の原始惑星系円盤の赤外スペクトル観測と分類および環状炭化水素分子による解析

*太田 憲雄1、Li Aigen2 (1.筑波大学・数理物質科学研究科、2.University of Missouri)

キーワード:原始惑星系円盤、赤外スペクトル、環状炭化水素

始原生命の原材料は星間の炭化水素から生じたのではないかという仮説がある。これを確かめる第一歩として、生まれたばかりの星の原始惑星系円盤の赤外スペクトルを多数観測し、分類した[1]。Fig.1のObservationに示すようにType-AとType-Bの二つが典型スペクトルである。Type-Aは従来から環状芳香族炭化水素(PAH)の集合スペクトルとして解釈されてきた。我々は密度汎関数法(DFT)により,背景となる分子の同定をおこなった。Fig.1の下に示す(C23H12)や(C53H18)のような比較的大きな分子が適合した。図の下方に見るように6~15ミクロンの広い波長範囲で、天文観測とDFT計算とが合致した[2]。いっぽうType-Bは従来背景物質が不明だった。今回はじめて、比較的小さな分子の(C9H7)や(C12H8)などが適合することが分かった[2]。また中心星の有効温度(Teff)と質量(Mass)のマップ上でくらべたところ(Fig.2)、たいへん重要なことに、Type-AはType-Bにくらべ高温大質量の星から成っていた。太陽系は誕生時には5000K程度かつ1太陽質量と思われるので、惑星形成円板はType-Bの分子を多く含んでいたと推察される。なおType-Bの(C9H7)は核酸を構成する分子の基本骨格と類似であり、生命原材料のテンプレートとなった可能性がある。
[1] J. Y. Seok and A. Li: Polycyclic Aromatic Hydrocarbon in Protoplanetary Disks around Herbig Ae/Be and T Tauri Stars, Astrophysical Journal, 835, 291 (2017).
[2] Norio Ota, Aigen Li, and Laszlo Nemes :  Void-Defect Induced Magnetism and Structure Change of Carbon Material-Ⅲ: Hydrocarbon Molecules, Journal of the magnetic society of Japan, 45, 86 (2021).