日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM10] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:藤本 晶子(九州工業大学)、家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、佐藤 由佳(日本工業大学)、今城 峻(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)、座長:家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、藤本 晶子(九州工業大学)

16:15 〜 16:30

[PEM10-14] サブストーム時に発達するCW構造に応じた、中低緯度電場応答の統計的研究

*林 萌英1吉川 顕正1藤本 晶子2大谷 晋一3 (1.九州大学、2.九州工業大学 、3.ジョンズホプキンス大学応用物理研究所 )


キーワード:サブストーム、磁気圏、電離圏、中緯度

本研究の目的は、サブストーム時の極域から赤道域までのグローバルな3次元電流システムの発達を地上磁場観測とFM-CW電場観測に基づき包括的に理解することにある。
極域電離圏の電流システムには、磁気圏対流系の消長と連動するRegion1-電流と、内部磁気圏の圧力勾配領域の消長と連動するRegion2-電流が存在する[Iijima and Potemra, 1976, 1978]。これに加えて、サブストームのオンセット時には、R1電流系と同様の電流クロージャーを形成するカレント・ウェッジ(CW)電流系が発達することが知られている。
CWの成長に伴う沿磁力線電流が作る磁場変動は、夜側の中低緯度領域で顕著であり、その発展の様子はMcPherron et al.(1973)によってモデル化されている。我々は、MAGDASおよびSuperMagの地上磁場データを用いて、オーロラサブストーム時のCW電流系の成長を捉え、九州大学がロシア・パラツンカに設置するFM-CW電離圏観測機器の電場データと比較することにより、中低緯度領域の電磁力学的応答特性の解析を進めている。
これまでの研究では、2006年9月21日〜2010年12月31日に発生した孤立型サブストームのうち、パラツンカが夜側(19:00-24:00, 0:00-05:00)にある1790例の中で、サブストームのオンセットに伴って電場が大きく変化した50例について、電離圏電場と地磁気を比較解析した。その結果、電場変動の振幅は西向きオーロラエレクトロジェット電流の強度と相関関係があることがわかった。さらに、電場の向きについては、中緯度の地磁気データからCWと観測点の相対位置を詳細に分類した結果、CWに伴い励起される電離層電流によるHall分極効果によって生じる電場特性[Yoshikawa et al., 2013]を反映していることが明らかになった。
しかし、その他の1740例についても同様の解析を行なった結果、これらのモデルだけでは説明がつかず、またサブストームの条件(オーロラエレクトロジェット電流の強度や、電場変動を観測した地方時)が上記の50例と同じであってもオンセットに伴う電場変動が見られないイベントが多数あった。したがって、電場変動の大きさはオーロラエレクトロジェット電流やCWだけでなく、背景の磁気圏・電離圏の状態や、太陽風の影響が現れていると考えられる。そこで本発表では、サブストームの指標(SML)に加えて、Kp指数や太陽風のIMF Bzなどと複合的に解析し、サブストームの背景にある地磁気擾乱を詳細に分類した上で、サブストーム時の夜側電場変動を包括的に考察した結果を報告する。