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[PEM10-P12] 日本の地上観測点に基づくサブストームに伴う630-nm大気光増光の複数例解析
電離圏は、太陽紫外線や磁気圏からの高エネルギー粒子振り込みによって高度80 km以上の超高層大気の一部が電離することによって形成される。また、電離圏プラズマ密度分布は、太陽惑星空間からやってくる電磁エネルギー入力と下層大気から上方へと伝搬する大気波動によるエネルギー入力の両方を受けて変動する。その中でも太陽風エネルギーが磁気圏や極域電離圏に流入することによって発生する磁気嵐やサブストーム時には、2セル型の極域電離圏対流が増強し、赤道方向へ拡大することが知られている。これまでの地上観測から、その対流電場の一部が中緯度電離圏に侵入し、電離圏が上下方向へ移動することにより、630-nm大気光の明るさに変化を起こすことがわかってきた。先行研究であるShiokawa et al. [2000]は、2例の磁気嵐中のサブストームに伴って大気光が時間・空間変動することを全天カメラの観測から示した。また、大気光強度の増加に対応する電離圏全電子数(Total Electron Content: TEC)の増加が見られたが、イオノゾンデ観測からサブストームに伴う電場侵入による下部電離圏の見かけの高さの変動は見られなかった。そこで本研究では、サブストームに伴う630-nm大気光強度の変化を複数の観測点で捉え、九州大学が運用しているFrequency Modulated Continuous Wave (FM-CW)レーダーのデータと比較することで、大気光強度変化の要因を明らかにする。ここでは、日本の3箇所(陸別(43.5˚N, 143.8˚E)、信楽(34.9˚N, 136.1˚E)、佐多(31.0˚N, 130.7˚E))に設置された全天カメラと篠栗(33.4˚N, 130.3˚E)のFM-CWレーダーのデータを用いて解析を行った。サブストームの発生に伴って2観測点以上で同時に大気光強度が増加しているイベントを探したところ、5例発見した。この結果、このような大気光の増光は非常に稀であることが分かった。これらの例は磁気嵐やサブストームの大きさに関係なく発生していた。大気光強度の増加は、100-400 R、継続時間は30分から2時間程度であり、北緯約40˚以下の範囲で発生していた。この大気光増光時には、大気光観測点上空の電離圏全電離圏電子数も同時に0.1-0.4 TECUの増大が見られた。また、このうちの2例についてFM-CWレーダーによって得られた電離層の見かけの高さは、イベント期間中下降していたが、サブストームの開始前から下降しており、サブストーム開始に伴う急激な変化は見られなかった。以上の結果は、サブストーム時における中低緯度への電場侵入と、それに対する電離圏の応答の特性を表す興味深い結果である。