日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM10] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:藤本 晶子(九州工業大学)、家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、佐藤 由佳(日本工業大学)、今城 峻(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PEM10-P15] Post-midnight にオーロラオーバルの極側で見られた STEVE のような発光の事例解析

*南條 壮汰1、Gabriel A. Hofstra2野澤 悟徳3塩川 和夫3、川端 哲也3細川 敬祐1 (1.電気通信大学、2.写真家(市民科学者)、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:STEVE、全天デジタルカメラ、OMTI、DAPS、Swarm 衛星

磁気的な真夜中以降に、オーロラオーバルよりも極側で発生した Strong Thermal Emission Velocity Enhancement (STEVE) に似たピンクや紫に見える色を示す発光現象について 2 件の事例解析を行った結果について報告する。一件目のイベントは、2021 年 12 月 28 日の 01 UT 頃に観測されたアーク状(STEVE と同様)の発光、二件目のイベントは 2012 年 11 月 13 日の 23 UT 頃に観測されたパッチ状の発光である。どちらの事例も、ノルウェーのトロムソに設置されているデジタルカメラによって観測された。両イベントとも STEVE によく似た発光を示すが、STEVE が夕方側にオーロラオーバルの低緯度側で観測されるのに対し、本事例の発光は朝側、かつオーロラオーバルよりも極側の領域で観測された点において STEVE と異なる特徴を持つ。しかしながら、これらの領域は、磁気擾乱時に南北方向に発生する電場によって、東西方向に強いイオン流が生じることに共通点がある。夕方側で生じるSTEVE は、局所的にペダーセン伝導度が低下したトラフ領域で生じる北向きの電場によって、西向き(E x B 方向)の強いイオン流(Subauroral ion drift: SAID)が引き起こす熱的な発光で生じる可能性が指摘されている (MacDonald et al., 2018)。朝側では、上向きの沿磁力線電流(Region 2)が強化され、電子の降り込みにより伝導度も増加する。Region 1においても沿磁力線電流は強化されるが、電子の降り込みを伴わないため、伝導度に南北方向の非一様性が生じる。これにより、Region 1 では南向きの電場が強化され、東向き(E x B 方向)のイオン流が発生する。SAPS/SAID の朝側におけるカウンターパートとみなせるこのイオン流は、Dawnside Auroral Polarization Streams (DAPS; Liu et al., 2020) として報告されている。本研究で見られた発光は、DAPS が SAPS/SAID と同じように熱的な発光を生じた結果である可能性がある。一件目のイベントでは Swarm 衛星とトロムソに設置したデジタルカメラの同時観測が成立しており、この発光は Region 1 と 2 の境界に位置し、東向きの強いイオン流(~2 km/s)を伴っていたことがわかった。また、二件目のイベントにおいては Optical Mesosphere Thermosphere Imagers (OMTI) とデジタルカメラの同時観測が成立しており、背景光(572.5 nm)を含むすべての波長においてパッチ状の発光が見られたことから、この発光が STEVE と同じように波長によらない連続したスペクトルを持つことが示唆された。発表では、光学、粒子観測の詳細な結果と、それらから示唆された発光の発生原理、極域の電流系を踏まえた STEVE との共通点などを議論する予定である。