10:00 〜 10:15
[PEM12-25] 観測ロケット搭載超高層大気観測用真空計の開発
キーワード:観測ロケット、真空計、超高層大気
熱圏大気中において,電離大気は電磁気的な力を受けて中性大気とは異なる方向に運動しようとする.これに起因して,電離大気と中性大気の衝突が発生し運動量が輸送され,この系では粒子の運動が複雑になることが知られている.熱圏下部では様々な現象が起きているが,このような粒子の運動に関連して未解明の現象が多い.それらを理解するために実測に基づいた物理量を精確に測定する必要がある.
我々は観測ロケット上で熱圏大気圧力を測定する手段として小型で構造が比較的単純,かつ信頼性のある真空計を用いている.真空計を搭載して飛翔中に測定された大気圧力から,熱圏下部の中性大気に関する情報の推定を行うこととした.真空計による圧力測定から観測ロケット上で観測される大気の流れに関する情報の取得を可能にするために,ロケット上で観測される大気風の方向検知が可能な真空計の容器,すなわち風が到来する方向によって内部の圧力が変動するような測定を可能にする構造の真空計容器を設計した.
設計にあたってはロケット飛翔中に真空計に入る大気流の前提条件が必要なため,予想される大気流の流入角度について,2012年に内之浦宇宙空間観測所より打上げられた観測ロケットS-520-26号機の姿勢データを使用した.その結果,ロケット上昇時における高度200 km以下ではロケット機軸に対して30〜45度の方向から大気が流入する確率が高いと推測された.この条件において風の流入角度に応じて測定圧力値が変化する二重円筒型真空計収納容器を設計し,製作を行った.
一方で,この真空計により測定された圧力を議論するためには背景大気の圧力を参照できる真空計が必要になる.一般に,ロケットのような超音速の飛翔体上で大気圧力を測定する場合,大気粒子は観測ロケットの速度によって生じた並進運動エネルギーが熱運動エネルギーに加わってしまうため,正確に圧力を測定することが困難である.ここでは内部に真空測定子を収納した球型のパターソンプローブを使用することで,このロケットの運動により生じるエネルギーが影響を与えないように測定できるようにした.
このように設計・製作された円筒型容器および球型容器の2種類の容器内部に圧力センサを収納した真空計が,観測ロケットS -520-32号機に搭載された.なお,この観測ロケット実験の中で真空計は Sub-PI(実験に付随した測定器)として位置付けられ,余剰スペースに搭載された.真空測定子としては,約4 Pa以上の低真空領域で水晶振動子,それ以下の高真空領域でイオンゲージが動作するクリスタルイオンゲージが用いられた.
S-520-32号機での測定によりロケット飛翔中に取得したデータの解析を行った.打上げから約80秒で圧力値が10-2 Pa程度に達すると変化率が減少し,穏やかな勾配で460秒まで減少する傾向を示した.圧力変化が緩やかになったのは,測定子が収納された容器内壁からのアウトガスの影響により内部の圧力が下がらなかったためであると考えられる.約87秒からはロケットのスピンに伴う圧力値の正弦波的な変化が見られた.また,打上げ直後から2種の測定子の測定圧力は同様の変化を示していたが,打上げから54秒後にロケットのノーズコーンが開頭し,直後に測定圧力の変化量が大きくなった.この変化は開頭によりノーズコーン内に含まれていた大気が一気に外部に流出し,真空計付近の大気圧力が大きく変化したためであると考えられる.圧力が3〜4 Paになった時間でも測定値に大きな変化が見られたが,これは高度100 km付近で真空測定子がクリスタルゲージからイオンゲージに切り替わったことを意味している.
講演では測定したデータの解析結果について詳細に説明する.
我々は観測ロケット上で熱圏大気圧力を測定する手段として小型で構造が比較的単純,かつ信頼性のある真空計を用いている.真空計を搭載して飛翔中に測定された大気圧力から,熱圏下部の中性大気に関する情報の推定を行うこととした.真空計による圧力測定から観測ロケット上で観測される大気の流れに関する情報の取得を可能にするために,ロケット上で観測される大気風の方向検知が可能な真空計の容器,すなわち風が到来する方向によって内部の圧力が変動するような測定を可能にする構造の真空計容器を設計した.
設計にあたってはロケット飛翔中に真空計に入る大気流の前提条件が必要なため,予想される大気流の流入角度について,2012年に内之浦宇宙空間観測所より打上げられた観測ロケットS-520-26号機の姿勢データを使用した.その結果,ロケット上昇時における高度200 km以下ではロケット機軸に対して30〜45度の方向から大気が流入する確率が高いと推測された.この条件において風の流入角度に応じて測定圧力値が変化する二重円筒型真空計収納容器を設計し,製作を行った.
一方で,この真空計により測定された圧力を議論するためには背景大気の圧力を参照できる真空計が必要になる.一般に,ロケットのような超音速の飛翔体上で大気圧力を測定する場合,大気粒子は観測ロケットの速度によって生じた並進運動エネルギーが熱運動エネルギーに加わってしまうため,正確に圧力を測定することが困難である.ここでは内部に真空測定子を収納した球型のパターソンプローブを使用することで,このロケットの運動により生じるエネルギーが影響を与えないように測定できるようにした.
このように設計・製作された円筒型容器および球型容器の2種類の容器内部に圧力センサを収納した真空計が,観測ロケットS -520-32号機に搭載された.なお,この観測ロケット実験の中で真空計は Sub-PI(実験に付随した測定器)として位置付けられ,余剰スペースに搭載された.真空測定子としては,約4 Pa以上の低真空領域で水晶振動子,それ以下の高真空領域でイオンゲージが動作するクリスタルイオンゲージが用いられた.
S-520-32号機での測定によりロケット飛翔中に取得したデータの解析を行った.打上げから約80秒で圧力値が10-2 Pa程度に達すると変化率が減少し,穏やかな勾配で460秒まで減少する傾向を示した.圧力変化が緩やかになったのは,測定子が収納された容器内壁からのアウトガスの影響により内部の圧力が下がらなかったためであると考えられる.約87秒からはロケットのスピンに伴う圧力値の正弦波的な変化が見られた.また,打上げ直後から2種の測定子の測定圧力は同様の変化を示していたが,打上げから54秒後にロケットのノーズコーンが開頭し,直後に測定圧力の変化量が大きくなった.この変化は開頭によりノーズコーン内に含まれていた大気が一気に外部に流出し,真空計付近の大気圧力が大きく変化したためであると考えられる.圧力が3〜4 Paになった時間でも測定値に大きな変化が見られたが,これは高度100 km付近で真空測定子がクリスタルゲージからイオンゲージに切り替わったことを意味している.
講演では測定したデータの解析結果について詳細に説明する.