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[PEM12-P01] 低軌道デブリの物理特性解明を目的とするピリカ望遠鏡を用いた観測試行
キーワード:スペースデブリ、低軌道、光学望遠鏡
スペースデブリ (宇宙ゴミ:以下、デブリ) は地球周回軌道にある人工物のことで, 年々増加の一途をたどっている.2009 年には,アメリカの通信衛星イリジウムと, 運用を終了したロシアの人工衛星とが衝突し,2,300 個を超えるデブリが発生した. デブリの地球への落下,ISS への衝突など,発生すれば甚大な被害を及ぼす可能性 が懸念されており,これらデブリの大きさ・素材・運動特性などの正確な把握と,軌 道の変化の予測が必要不可欠となっている.宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は,デ ブリによる脅威から人間,人工衛星,宇宙飛行士を守るために,デブリの軌道を正 確に把握することを目的とした宇宙状況把握 (SSA:Space Situational Awareness) 活動に取り組んでいる.スペースデブリの観測は SSA の取り組みの一つであり,本 研究は SSA に貢献することを目的としている.デブリの衝突予測や大気圏突入予測 の前段階として,デブリの物理特性,すなわち表面物質や形状,運動特性を知る必 要がある.Vananti et al.[2017] は静止軌道にあるデブリの表面物質を知るために光 学望遠鏡で分光観測を行い,実際に人工衛星に使用されている部品の反射スペクト ルと比較した.一方、Yanagisawa and Kurosaki[2012] は低軌道にあるデブリの反射 光度の時間変化のみから形状や運動特性を推定した.しかし、低軌道にあるデブリ の表面物質の同定は行れていない.そこで,本研究では低軌道デブリの表面物質を 同定することを最終目標とし,本論文ではその前段階として低軌道デブリを大口径 地上望遠鏡を用いた光学観測を実施し,反射光度の時間変化を調べる試みを行った.
本研究では,北海道大学が所有する 1.6 m ピリカ望遠鏡を用いて低軌道にあるデ ブリの光学観測を実施した.観測は 2022 年 10 月 26 日,27 日,11 月 24 日,26 日の 計 4 夜行い,計 22 個の低軌道デブリと人工衛星を撮像した.恒星や惑星、あるいは 静止軌道上にあるデブリの観測と比べ、低軌道デブリは高速で視野内を移動するた め、一回の観測時間は数分から十数分に限られ,さらには高精度な追尾を必要とす る.追尾が成功すれば、画像内に点像が映るはずだが,低軌道デブリをピリカ望遠 鏡で追尾して得られた画像のほとんどで点像は見つからなかった.
点像が確認できた画像に対して,その点像が実際に追尾したデブリであるのかを 検証した.フレーム中の点像の視直径を計算し,実際の軌道高度におけるデブリの 大きさを概算した結果,既存のデータを大幅に下回る数値であった.それに加えて, 連続して撮像されたフレームの前後で,同じ位置に同じような点像が確認できなかっ たため,これらの点像は観測対象ではなく,宇宙線あるいはショットノイズの可能 性が高いことがわかった.
さらに,取得したフレーム中には,度々曲線的な光跡が写り込んだ.中には明確な光度変化を示す曲線もあり,これらの光跡は,短時間で光度変化がない恒星では なく,太陽光を反射して輝くデブリまたは人工衛星であると考えられるが,望遠鏡 の姿勢変化によって恒星像が明るく写ったという可能性も残された.一方で,顕著 な光度変化のなかった曲線に関しては恒星の他,姿勢が安定している人工衛星,デ ブリの可能性もあるため,明確な結論には至らなかった.
また,観測者から見て低軌道デブリが天球状を移動する速度に対してピリカ望遠 鏡のドームの回転が追いつかず,幾度となくドームの追尾制御エラーが発生してし まい,結果的に十分な観測・解析を行うことができなかった.本研究では,ピリカ 望遠鏡を用いた低軌道デブリの観測には限度があることを明らかにした.今後は静 止軌道にあるデブリに着目し,それらの表面物質,実験室実験とピリカ望遠鏡を用 いて推定することを志している.
本研究では,北海道大学が所有する 1.6 m ピリカ望遠鏡を用いて低軌道にあるデ ブリの光学観測を実施した.観測は 2022 年 10 月 26 日,27 日,11 月 24 日,26 日の 計 4 夜行い,計 22 個の低軌道デブリと人工衛星を撮像した.恒星や惑星、あるいは 静止軌道上にあるデブリの観測と比べ、低軌道デブリは高速で視野内を移動するた め、一回の観測時間は数分から十数分に限られ,さらには高精度な追尾を必要とす る.追尾が成功すれば、画像内に点像が映るはずだが,低軌道デブリをピリカ望遠 鏡で追尾して得られた画像のほとんどで点像は見つからなかった.
点像が確認できた画像に対して,その点像が実際に追尾したデブリであるのかを 検証した.フレーム中の点像の視直径を計算し,実際の軌道高度におけるデブリの 大きさを概算した結果,既存のデータを大幅に下回る数値であった.それに加えて, 連続して撮像されたフレームの前後で,同じ位置に同じような点像が確認できなかっ たため,これらの点像は観測対象ではなく,宇宙線あるいはショットノイズの可能 性が高いことがわかった.
さらに,取得したフレーム中には,度々曲線的な光跡が写り込んだ.中には明確な光度変化を示す曲線もあり,これらの光跡は,短時間で光度変化がない恒星では なく,太陽光を反射して輝くデブリまたは人工衛星であると考えられるが,望遠鏡 の姿勢変化によって恒星像が明るく写ったという可能性も残された.一方で,顕著 な光度変化のなかった曲線に関しては恒星の他,姿勢が安定している人工衛星,デ ブリの可能性もあるため,明確な結論には至らなかった.
また,観測者から見て低軌道デブリが天球状を移動する速度に対してピリカ望遠 鏡のドームの回転が追いつかず,幾度となくドームの追尾制御エラーが発生してし まい,結果的に十分な観測・解析を行うことができなかった.本研究では,ピリカ 望遠鏡を用いた低軌道デブリの観測には限度があることを明らかにした.今後は静 止軌道にあるデブリに着目し,それらの表面物質,実験室実験とピリカ望遠鏡を用 いて推定することを志している.