日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PEM12-P26] 測距機能を備えた短波ドップラー観測システムの開発と運用の開始

*並木 紀子1細川 敬祐1野崎 憲朗1坂井 純1冨澤 一郎1、有澤 豊志1 (1.電気通信大学大学院情報理工学研究科)


キーワード:HFドップラー、観測システム、周波数変調連続波、電波高度計

短波ドップラー(HF Doppler: HFD)法による電気通信大学の電離圏観測システムは、2001年より日本国内で運用が行われており、日本上空の中緯度電離圏E領域やF領域の状態を常時観測している(冨澤ほか, 2003)。HFD送信機と国内11カ所の受信機で構成されるシステムは、多点バイスタティック観測を特徴とし、複数地点における多周波HFDデータを提供している(http://gwave.cei.uec.ac.jp/~hfd)。得られたドップラーシフトのデータは、反射波の位相通路長の時間変化を表し、それが多くの場合電離圏の上下動に相当するため、伝搬性電離圏擾乱やスポラディックE現象、磁気圏または下層大気からのエネルギー流入に伴う状態の変化を観測するのに用いられてきた。HFD観測のために電気通信大学から送信している電波は5.006 MHzと8.006 MHz、各200Wの2周波がある。電離圏擾乱は昼夜を問わず発生するため、24時間連続で北海道から沖縄まで届く電波を安定的に送信する必要があり、送信機の送信状態を管理することが不可欠である。2022年の当大会ポスター発表では、まだ構想の段階であったFM-CW方式に基づいた測距機能の追加について紹介した(並木ほか, JpGU 2022)。その後、提案する送信電波形式追加変更の許可を受け、実現に向けた開発と試験測定を行ってきた(並木ほか, SGEPSS 2022)。本発表では、その後の開発の状況について報告する。
測距機能を備えた新送信システムの運用を開始するにあたり、送信機の制御は従来の連続波だけの送信よりも複雑な仕組みが必要とされる。(1)従来の観測データとの整合がとれること、(2)電波の反射高度を測定できるようにすること、(3)国内無線局の基準を満たすこと、をクリアするために、新送信システムではGPSによる基準信号と、デジタル機器によるクロック制御や機器状態の監視システムを新たに取り入れた。従来の送信機はルビジウムの基準信号を元にして送信周波数を安定させていたが、GPSに基づいた方式に変更しても、送信機を変更したことによる影響がないことが確認できた。また、送信信号の発生源として、トランシーバーにかわって2つのチャンネルをもつファンクションジェネレータを採用し、今までと同等のドップラー観測用連続波に加え、距離測定用信号の周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave:FM-CW)やモールス信号も同時に発生することで、データの継続性と拡張性の両方を達成することができた。FM-CWによる距離測定には、20pps周期での信号生成のため厳格な時刻同期が求められ、この点においてもファンクションジェネレータを採用したことによって制御が容易に行えるようになった。信号品質の管理では、シングルボードコンピュータやマイコンを利用して、送信信号の切り替えやVSWRの測定を自動的に行う仕組みを準備している。発表では、免許の変更に際して取得された測定データに基づいて、新システムの紹介を行う。また、FM-CW方式の電波を受信し、測距を行うための受信システムの検討についても報告を行う。