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[PEM12-P27] HFドップラー観測による流星エコーを用いた中性風の解析
流星が高度80~120 kmの地球の大気に突入すると,大気分子と激しく衝突し,大気を電離させる。この時,生じたプラズマは流星の流れた軌道上に長いチューブのように存在し,流星飛跡と呼ばれる.この流星飛跡の中の自由電子が電波を散乱する働きがあるために,電波が散乱され受信点で流星エコーとして観測される.これまで,流星電波観測の多くは、VHF帯の電波を使用して行われてきた.HFドップラー観測でも流星によると思われるエコーが観測されたことから本研究では,HF帯電波観測による,流星エコーの解析を行った.流星エコーは飛跡に直行する方向から電波が入射すると,強力に入射方向に電波を反射する.一方,斜めから電波が入射した場合には,入射角と反射角が等しくなるよう方向に反射する.但し,エコーの継続時間が長くなるほど,中性風の影響で飛跡の変形が進み,流星の軌跡を直線で近似できなくなる可能性があるため,入射角=反射角が成り立たない広い範囲で反射してくる可能性がある.本研究では 電気通信大学を中心とした 5 機関で運用されている HF ドップラー観測システムにより取得された流星エコーを使用した.通常のHFドップラー観測では,電波は送信点と受信点の中点直上の電離圏にて反射され,電波の受信周波数と送信周波数の差(ドップラーシフト)から電離圏の上下動の様子を観測しているが,流星飛跡は高度80~120 km に生じるので,通常反射される高度より低い高度で反射される.解析には電気通信大学調布キャンパスより送信された8 MHzの電波を藤沢,杉戸,柿岡,大洗,鹿島の各観測点で受信した際のドップラーデータを使用した.解析対象は 2014/10/25 20:30:27 JSTに関東上空に発生した流星である.各観測点に対して,流星飛跡上で反射条件を満たす反射点を求めた.今回の観測対象はエコーの開始時刻から10分以上にわたってドップラー周波数が正の値から負の値に変化していった.この時間スケールからエコーのドップラー周波数のメインの変化は中性風の影響と考えられる.また,中性風はほぼ水平方向に向いていると考えられるので,今回は流星の飛跡が水平方向にのみ動いたと考え,中性風の風速推定を行った.方位角を1°ごとに変えて,エコーの開始時刻から3 分,6 分,9 分,12 分後のドップラーシフトを使用して各反射点の移動速度を求め,全観測点の速度のばらつき(変動係数)が一番小さい方向に移動したと推定した.結果から風速はそれぞれの時間で10 m/s前後となり,風速の変化はほとんど見られなかったが,時間がたつにつれて飛跡の移動する方角は北東から南へと変わっていった。このことから風向も同様の変化をしたと考えられる.