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[PEM12-P28] HFドップラー観測を用いた2019年台風15号接近時の同心円状の電離圏擾乱の解析
キーワード:台風15号、同心円状の電離圏擾乱、HFドップラー観測
2019年台風15号は,観測史上最大勢力の台風と言われ,9月8∼9日にかけて日本に接近し,通過した。中心最低気圧は955 hPa,最大風速は千葉市で35.9 m/s,最大瞬間風速は千葉市で57.5 m/sを記録した。8日20:00 UTに房総半島に上陸し,建物の倒壊や大規模な停電,断水,通信障害などの甚大な被害をもたらしたため,令和元年房総半島台風とも呼ばれる。このような強力な台風では電離圏擾乱が発生することが考えられる。Song et al.(2022)では,全電子数(TEC)を用いて台風15号接近時に静岡沖を中心とする2度の同心円状の電離圏擾乱が発生したことが報告された。
本研究では,TECで観測される高度250 km以下の下層大気における電離圏の変動に着目し,HFドップラー観測を用いて解析を行った。8:00∼11:00 UTの時系列データを解析したところ,台風接近前や通過後にみられていたドップラーシフトが降下する日変動がみられず,細かい振動をするというドップラーシフト変動が確認できた。このことにより,8日には日変動をかき消すほどの大きな電離圏変動が起きていたと考えられる。この電離圏変動の特徴を調べるためにダイナミックスペクトル解析を行ったところ,8日は全体的にスペクトル強度が上昇していることが確認できた。特に,0.5∼1.5 mHz成分の増大が顕著である。この帯域の変動周期は約10~30分であり,Song et al.(2022)による周期18∼22分の成分を含んでいることが確認できた。この電離圏擾乱の水平速度及び方位角を求めるために相互相関を用いて時間遅れを算出した。最大0.8程度の高い相関係数が導出され,伝搬時間より,藤沢付近を中心とする電離圏擾乱が発生していると考えられる。確認された変動が平面波と仮定し,水平速度と方位角を算出したところ,組み合わせごとに水平速度と方位角が異なったことから,この変動が平面波ではなく同心円状の変動であるということが分かった。Song et al.(2022)では(藤沢,菅平,飯舘)の局所的な変動に関しては平面波近似を適用できると考えられるため,水平速度を算出したところ水平速度200.35 m/sとなり,Song et al.(2022)で導出された水平速度172∼200 m/sとほぼ一致した。このことから,台風15号に伴う電離圏擾乱はどの高度でも同じ速度にて伝搬していることが示唆される。
本研究では,TECで観測される高度250 km以下の下層大気における電離圏の変動に着目し,HFドップラー観測を用いて解析を行った。8:00∼11:00 UTの時系列データを解析したところ,台風接近前や通過後にみられていたドップラーシフトが降下する日変動がみられず,細かい振動をするというドップラーシフト変動が確認できた。このことにより,8日には日変動をかき消すほどの大きな電離圏変動が起きていたと考えられる。この電離圏変動の特徴を調べるためにダイナミックスペクトル解析を行ったところ,8日は全体的にスペクトル強度が上昇していることが確認できた。特に,0.5∼1.5 mHz成分の増大が顕著である。この帯域の変動周期は約10~30分であり,Song et al.(2022)による周期18∼22分の成分を含んでいることが確認できた。この電離圏擾乱の水平速度及び方位角を求めるために相互相関を用いて時間遅れを算出した。最大0.8程度の高い相関係数が導出され,伝搬時間より,藤沢付近を中心とする電離圏擾乱が発生していると考えられる。確認された変動が平面波と仮定し,水平速度と方位角を算出したところ,組み合わせごとに水平速度と方位角が異なったことから,この変動が平面波ではなく同心円状の変動であるということが分かった。Song et al.(2022)では(藤沢,菅平,飯舘)の局所的な変動に関しては平面波近似を適用できると考えられるため,水平速度を算出したところ水平速度200.35 m/sとなり,Song et al.(2022)で導出された水平速度172∼200 m/sとほぼ一致した。このことから,台風15号に伴う電離圏擾乱はどの高度でも同じ速度にて伝搬していることが示唆される。