日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:山本 衛(京都大学生存圏研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[PEM15-P04] 信楽イオノゾンデ観測を用いた機械学習によるスポラディックE層の自動検出と統計解析

*横山 竜宏1、采山 裕紀1劉 鵬1山本 衛1 (1.京都大学生存圏研究所)

キーワード:スポラディックE層、機械学習、電離圏

京都大学生存圏研究所信楽MU観測所では、MUレーダーの観測開始に合わせてイオノゾンデによる電離圏観測が定常的に実施されている。イオノゾンデは電離圏ピーク高度以下の電子密度分布を観測可能であり、最も古くから用いられている電離圏観測装置の一つである。信楽MU観測所では、1984から現在に至るまで観測が継続されており、2001年以降はデジタル化された観測結果の画像(イオノグラム)がデータベースで公開されている( http://database.rish.kyoto-u.ac.jp/arch/mudb/ionosonde/ )。イオノグラムから電離圏の状態を代表する各種パラメータを読み取ることで、電離圏の状態の監視や他の観測との比較に用いられている。しかし、信楽におけるイオノゾンデ観測結果のパラメータ読取りは長年実施されておらず、データの利用がしづらい状況であった。多量のデータを手動での読み取ることは現実的ではないため、機械学習を利用したイオノグラムパラメータの読み取りに現在着手している。現在までの研究で、電離圏F領域の最大電子密度に対応するfoF2の自動読み取りに成功している。本研究では、スポラディックE(Es)層の最大電子密度に対応するfoEsの自動読み取りを可能とするモデルの構築を目的とする。

画像処理の分野では畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional neural network; CNN)が広く利用されており、CNNをベースとした様々なモデルが開発されている。本研究では、ピクセル単位で個別の物体クラスを識別可能であるインスタンスセグメンテーションによる物体検出を行う。Es層を自動検出可能な機械学習モデルは、Mask R-CNNと呼ばれる仕組みを利用して構築した。2010年6月のイオノグラムからEs層が観測されているものを512枚を抽出し、干渉波等の除去を行った後にEs層による反射エコーにラベル付けを行った。ラベル付けを行ったデータの75%を学習用データ、25%をテスト用データとして学習を進めた。学習に使用していない150枚の検証用画像を用意し、目視でのfoEsの読み取り値と機械学習モデルの予測値を比較した結果、差の平均値は0.24MHzであり、非常に高い精度で検出が可能であることが示された。また、情報通信研究機構が運用する国分寺イオノゾンデでの同時刻の手動読み取り値と比較した。同期間のデータに対してfoEsの分布を比較したところ、概ね近い分布を示していることから、自動読み取りは正しく行えていると考えられる。一方、同時刻における観測結果の相関係数は0.51 であり、同時刻で同じようなEs層が発生しているとは限らない。ただし、Es層が一地点のみで現れているという場合は少なく、大規模なEs層の構造は信楽と国分寺で共通であるが、foEsの値については大きな差が存在する、すなわち、中性風速の分布や金属イオンの分布は大きくことなることが考えられる。Es層の長期間の発生傾向に、太陽活動の影響はほぼ見られないことも示された。