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[PEM16-P03] IPS観測データとBepiColombo衛星観測データを用いたMHDシミュレーションによるCME伝搬の再現
キーワード:コロナ質量放出、惑星間空間シンチレーション、MHDシミュレーション、BepiColombo衛星
惑星間空間を伝搬中のコロナ質量放出(CME)現象は観測が難しく、電波の散乱現象を利用した惑星間空間シンチレーション(IPS)観測が重要な観測手段である。加えて、近年多数の飛翔体が内部太陽圏を飛翔中であり、これらの観測データをIPS観測と統合することで、CMEの伝搬をより高精度で再現できると期待される。本研究では、2021年10月上旬に、BepiColombo衛星と地球が動径方向に並んだ時期に太陽ディスク中央付近で発生したCME現象に対して、IPS観測および飛翔体観測を太陽圏のMHDシミュレーション(SUSANOO-CME)に取り込む実験を行った。MHDシミュレーション結果から得られる太陽圏の密度の3次元分布を用いて、地球から任意の方向に電波の散乱を解くことで疑似的なIPSデータを計算できる。CMEの初期パラメータを変えたシミュレーションを多数行い、実際に観測されたIPSデータと最も近い疑似IPSデータが得られるシミュレーションを抽出した結果、IPS観測に最も近いシミュレーションはCMEのBepiColombo衛星への到来を最も良く再現した。これはIPS観測がCMEに対して感度を持つ内部太陽圏の領域にちょうどBepiColombo衛星がいたことで、飛翔体の位置近傍でシミュレーションの最適化が行われたためと考えられる。一方、IPS観測およびBepiColombo衛星観測に最もよく合うシミュレーションのCMEは地球には実際よりも5時間程度早く到来した。本結果は約0.3AUの位置にいたBepiColombo衛星と地球との間のCMEの伝搬をシミュレーションが再現できていない可能性を示唆している。その要因の一つとして今回のシミュレーションでは経験モデルを用いて再現した背景太陽風が実際に観測された太陽風より低密度であったため、CMEを十分に減速できなかった可能性が考えられる。今後はCMEのパラメータの最適化に加えて背景太陽風の再現精度も高める必要があるだろう。