10:45 〜 12:15
[PEM16-P07] 時系列深層学習を用いたDst指数の長期予測に関する研究
キーワード:磁気嵐、Dst指数、機械学習、LSTM、Transformer
本発表では、磁気嵐の規模を示すDst指数について時系列深層学習を用いた予測モデルと予測値に対する考察、今後の課題を示す。
近年、民間企業による宇宙利用、特に低軌道領域の利用が加速している。低軌道衛星は静止軌道衛星と比較して低コストでの開発が可能だが、小型軽量化が求められることから宇宙環境の影響を受けやすい。具体的には宇宙放射線によるソフト・ハードエラーや高層大気膨張による空気抵抗が挙げられ、場合によっては衛星の損失に繋がる。これらの主たる要因は磁気嵐であり、太陽フレアに伴い引き起こされる。このことから、太陽風の観測データから磁気嵐の規模を示すDst指数を長期的に予測することは、想定外の衛星損失や、再製造・打ち上げコストの増加を防ぐうえでも重要である。
近年ではDst指数を予測する取組として、入出力データ間の非線形関係を記述できること、そして観測データが豊富にあることから、深層学習を用いたアプローチが盛んである。Gruetらは、時系列深層学習の一つであるLSTMを使用し、3時間先、6時間先のDst指数を予測する手法を提案した[Gruet et al., 2018]。しかし、昨今の様々な機械学習タスクにてSOTAを達成しているTransformer機構[Vaswani et al., 2017]をDst指数の予測に適用した先行研究は、我々が探す限り見当たらなかった。そこで本研究ではGruetらが提案したLSTMベースのモデルに加え、Transformerベースのモデルを用いて、3時間先6時間先それぞれのDst指数の予測値を比較した。
今回の実験に用いた時系列深層学習モデルはLSTMおよびTransformerを用いた2種類の回帰モデルである。学習データはNOAA Space Weather Prediction Centerにて公開されている太陽風観測値を用いて、2001年8月~2022年10月までの観測データを1時間毎に平均し利用した。また、正解データとなるDst指数は、京都大学地磁気センターのホームページから1時間間隔値を取得した。なお、先行研究の結果と比較するために、評価指標にはRMSEを用いた。
実験結果として、3時間先の予測ではLSTMを用いたモデルがRMSE:6.632、6時間後予測ではTransformerを用いたモデルがRMSE:8.669で最も精度が高く、先行研究が示す指標を上回る結果を得た。今後の課題として、正解データと予測値の間に発生するタイムラグが挙げられる。先行研究においてもDst指数が実際よりも遅延して予測されることが指摘されており[Laperre et al., 2020]、Transformer機構を用いた結果でも解消はされていない。本発表ではこの解消に向けた手法についても考察する。
近年、民間企業による宇宙利用、特に低軌道領域の利用が加速している。低軌道衛星は静止軌道衛星と比較して低コストでの開発が可能だが、小型軽量化が求められることから宇宙環境の影響を受けやすい。具体的には宇宙放射線によるソフト・ハードエラーや高層大気膨張による空気抵抗が挙げられ、場合によっては衛星の損失に繋がる。これらの主たる要因は磁気嵐であり、太陽フレアに伴い引き起こされる。このことから、太陽風の観測データから磁気嵐の規模を示すDst指数を長期的に予測することは、想定外の衛星損失や、再製造・打ち上げコストの増加を防ぐうえでも重要である。
近年ではDst指数を予測する取組として、入出力データ間の非線形関係を記述できること、そして観測データが豊富にあることから、深層学習を用いたアプローチが盛んである。Gruetらは、時系列深層学習の一つであるLSTMを使用し、3時間先、6時間先のDst指数を予測する手法を提案した[Gruet et al., 2018]。しかし、昨今の様々な機械学習タスクにてSOTAを達成しているTransformer機構[Vaswani et al., 2017]をDst指数の予測に適用した先行研究は、我々が探す限り見当たらなかった。そこで本研究ではGruetらが提案したLSTMベースのモデルに加え、Transformerベースのモデルを用いて、3時間先6時間先それぞれのDst指数の予測値を比較した。
今回の実験に用いた時系列深層学習モデルはLSTMおよびTransformerを用いた2種類の回帰モデルである。学習データはNOAA Space Weather Prediction Centerにて公開されている太陽風観測値を用いて、2001年8月~2022年10月までの観測データを1時間毎に平均し利用した。また、正解データとなるDst指数は、京都大学地磁気センターのホームページから1時間間隔値を取得した。なお、先行研究の結果と比較するために、評価指標にはRMSEを用いた。
実験結果として、3時間先の予測ではLSTMを用いたモデルがRMSE:6.632、6時間後予測ではTransformerを用いたモデルがRMSE:8.669で最も精度が高く、先行研究が示す指標を上回る結果を得た。今後の課題として、正解データと予測値の間に発生するタイムラグが挙げられる。先行研究においてもDst指数が実際よりも遅延して予測されることが指摘されており[Laperre et al., 2020]、Transformer機構を用いた結果でも解消はされていない。本発表ではこの解消に向けた手法についても考察する。