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[PEM17-P08] 地球磁気圏におけるkinetic Alfvén waveによる電子加速過程での波動磁場成分の寄与
キーワード:分散性Alfvén波、kinetic Alfvén waves、電子加速過程、地球磁気圏、Landau共鳴、テスト粒子計算
Kinetic Alfvén wave (KAW)は、分散性Alfven波の1種であり、磁力線平行方向の波長が長く、垂直方向の波長がイオンLarmor半径程度の電磁波動である。KAWは、磁力線平行方向の電場δE||を持ち、磁力線に沿って電子やイオンを加速することが知られており、特にKAWの位相速度と同程度の速度を持つ粒子とLandau共鳴する[e.g., Hasegawa and Chen, 1975; Kletzing, 1994; Artemyev et al., 2015]。また、KAWは地球磁気圏のサブストームとの関連性が指摘されている[e.g., Stasiewicz et al., 2000]。特に、KAWが電子を磁力線平行方向に数keV程度のエネルギーまで電子を加速し、高緯度電離圏に降下させ、オーロラの増光を引き起こすことが指摘されている[e.g., Hasegawa, 1976; Chaston et al., 2003; Duan et al., 2016]。KAWによる電子加速は木星における電子加速機構としても注目され[e.g., Mauk et al., 2017; Saur et al., 2018]、磁化惑星におけるKAWによる電子加速過程の重要性が高まる一方で、電子加速が効率的に生じる条件などのKAWの電子加速過程の詳細については未解決の問題が残されている。
KAWによる電子加速において、δE||が重要な役割を果たすことが知られている一方で、磁力線平行磁場成分δB||による電子加速への寄与は十分に検討されていない。KAWによる電子加速が生じる地球磁気圏L=9の磁気赤道付近の領域では、プラズマβがmi/me<β<1であり、背景磁場に対してKAWのδB||が8%程度となり、無視できない値を持つことが指摘される。そこで、本研究では地球磁気圏L=9でのKAWの電子加速について、δE||のみを考慮した場合と、δE||とδB||を考慮した場合についてテスト粒子計算を行い、波動電磁場の沿磁力線方向成分による電子加速の寄与について定量的に考察する。まず、個々の電子のエネルギー変化に着目した。電子の初期位置を磁気赤道、初期の運動エネルギーを600 eV、初期ピッチ角を85度とした条件で計算を行った。その結果、波動の初期位相によって、δE||のみを考慮した場合とδE||とδB||を考慮した場合でのLandau共鳴後の電子エネルギーが変化することが示された。計算結果の一例として、δE||のみを考慮した場合では4 keVまで加熱されたが、δE||とδB||を考慮した場合では4.6 keVまで加熱され、δB||を考慮した方が考慮しない場合に比べて600 eV程度大きく加熱されるケースが見られた。一方で、波動の初期位相を変更した条件での計算では、δE||のみを考慮した場合では4.6 keVまで加熱されたが、δE||とδB||を考慮した場合では2.7 keVまでしか加熱されないケースも見られた。この違いは、δB||によるミラー力の影響であり、KAWの電子加速過程においてδB||の効果を考慮した検討を行う必要があることを示唆するものである。本発表では以上の結果に加えて、電子の受ける力や電子が見る波の位相などの時間変化といった詳細や、電子の分布関数の時間変化の結果について報告するとともに、KAWと電子のLandau共鳴におけるδB||の寄与について議論する。
KAWによる電子加速において、δE||が重要な役割を果たすことが知られている一方で、磁力線平行磁場成分δB||による電子加速への寄与は十分に検討されていない。KAWによる電子加速が生じる地球磁気圏L=9の磁気赤道付近の領域では、プラズマβがmi/me<β<1であり、背景磁場に対してKAWのδB||が8%程度となり、無視できない値を持つことが指摘される。そこで、本研究では地球磁気圏L=9でのKAWの電子加速について、δE||のみを考慮した場合と、δE||とδB||を考慮した場合についてテスト粒子計算を行い、波動電磁場の沿磁力線方向成分による電子加速の寄与について定量的に考察する。まず、個々の電子のエネルギー変化に着目した。電子の初期位置を磁気赤道、初期の運動エネルギーを600 eV、初期ピッチ角を85度とした条件で計算を行った。その結果、波動の初期位相によって、δE||のみを考慮した場合とδE||とδB||を考慮した場合でのLandau共鳴後の電子エネルギーが変化することが示された。計算結果の一例として、δE||のみを考慮した場合では4 keVまで加熱されたが、δE||とδB||を考慮した場合では4.6 keVまで加熱され、δB||を考慮した方が考慮しない場合に比べて600 eV程度大きく加熱されるケースが見られた。一方で、波動の初期位相を変更した条件での計算では、δE||のみを考慮した場合では4.6 keVまで加熱されたが、δE||とδB||を考慮した場合では2.7 keVまでしか加熱されないケースも見られた。この違いは、δB||によるミラー力の影響であり、KAWの電子加速過程においてδB||の効果を考慮した検討を行う必要があることを示唆するものである。本発表では以上の結果に加えて、電子の受ける力や電子が見る波の位相などの時間変化といった詳細や、電子の分布関数の時間変化の結果について報告するとともに、KAWと電子のLandau共鳴におけるδB||の寄与について議論する。