09:00 〜 09:15
[PPS02-01] Impact experiments for crater size scaling laws on asteroids covered with low-strength coarse-grained regolith
キーワード:レゴリス、クレーター、スケール則、アーマリング
近年の惑星探査により,ラブルパイル天体はサイズ分布を持ち,強度の小さいボルダーで覆われていることがわかってきた.さらに,小惑星ItokawaやErosでは直径10m以下の小さなクレーターの数が少ないことがわかった.この小クレーター数の欠乏の原因の1つとして装甲効果によるクレーター形成効率の低下が考えられている.先行研究により,この形成効率の低下は,標的粒子のサイズが衝突体サイズに比べて大きいか同程度の場合や,標的粒子の強度が小さく衝突の際に破壊される場合に起こると示唆されている.一方で,小惑星Ryuguに形成されたSCIクレーターは典型的な砂に形成されるクレーターの大きさと整合的であり,Ryuguでは装甲効果がほとんど確認されなかった.Ryugu表層のボルダーはサイズ分布を持ち,200-300kPaと低強度で50%程度の高い空隙率を持つことがわかっており,このような特徴がItokawa・Eros表層とRyugu表層の間で装甲効果の有無に違いをもたらした可能性がある.そこで本研究では,ボルダーの強度や空隙率,ボルダーと衝突体のサイズ比が装甲効果に与える影響を調べることで装甲効果の定量化を目的とし,サイズ分布を持つ低強度・高空隙率のボルダー模擬物質に対してクレーター形成実験を行った.
クレーター形成実験は(A)神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と(B)JAXAの縦型二段式軽ガス銃を用いて実施した.弾丸は標的表面に対して垂直に衝突させた.標的には直径1~4 mm(細粒)と1~4 cm(大玉)の鹿沼土を用いた.標的粒子の圧壊強度はそれぞれ約60,13kPaであった.(A)では弾丸に直径3 mmの5種類の球(鉄,ジルコニア,アルミナ,ガラス,ナイロン)を用い,40〜200 m/sで衝突させた. (B)では弾丸に直径2 mmの8種類の球(アルミ,ナイロン,チタン,ジルコニア,鉄,銅,タングステンカーバイド,ポリカ)を用い,1.2〜4.3 km/sで衝突させた.クレーター形成過程はハイスピードカメラ(103~105 FPS)で撮影した.実験後の標的は回収して,クレーターの形状をノギスやレーザー変位計で計測した.
クレーター半径と弾丸の運動エネルギー(Ek)の関係を調べた結果,細粒標的に関して,弾丸の種類によらず,0.1 J <Ek < 0.6 Jの範囲でクレーター半径が増加しない範囲があり,このオフセットを挟んでクレーター形成効率が下がることがわかった.この範囲では弾丸の運動エネルギーが標的粒子の破壊に使われていると考えられる.また,大玉標的は細粒標的に比べてさらにクレーター形成効率が小さくなり,細粒標的に形成されるクレーターの約0.8倍の大きさになることがわかった.クレーター半径をπスケール則で整理すると,細粒標的ではオフセットを挟んで,標的粒子の破壊の有無で2つの別々の関係に分かれていることがわかった.大玉標的では細粒標的に比べて,クレーター形成効率が系統的に小さくなることがわかった.この結果から,従来のπスケール則は,低強度・高空隙率の標的粒子に形成されるクレーターに適用できない場合があることがわかった.
標的粒子の粒径や強度,空隙率による装甲効果の定量化を行い,粒子破壊の効果を含んだクレーターサイズに関するスケール則を構築を行った.まず,終段階有効エネルギー(I )を用いたスケール則を改良した.Iが標的粒子の破壊と,標的粒子の移動によるクレーター孔の成長に使われていると仮定し,衝突の際に破壊された標的粒子の数αを導入し,標的粒子の破壊に使われるエネルギーを考慮することで,以下のようなクレーターサイズDとIの関係を求めた.k1ρgD4+k2εαδtd3=I …(1).さらに,式(1)を典型的なクレーターサイズD*で規格化して書き換えることで,以下のようなクレーターサイズDとIの関係を得た.I=k3{ρ(D/D*)4+αδt(d/D*)3}…(2).D*は,クレーター形成過程はD >D*で重力によって支配され,D <D*で強度によって支配されるようなクレーターサイズである.実験結果のクレーターサイズとIの関係は,αを変化させることで再現可能である.αは実験結果からIとの関係を求めたところ、αはIが増加するにつれてべき関数的に増加していることがわかり,n で整理することができた.細粒標的ではA=13.2,n=1.0,大玉標的ではA=0.34,n=0.99と求まった.どちらの標的粒子でもだったことから,本研究で用いた低強度・高空隙率の粒子の標的では,衝突速度によらず,標的粒子の破壊に消費されるエネルギーとクレーター掘削に消費されるエネルギーの比率は常に一定であることがわかった.さらに,装甲効果によるクレーター形成効率の減少係数fをπスケール則に導入したクレーターサイズに関するスケール則は以下のように記述できた.πR_d=k4 f π2-a π4b, f={1-k3Aδt(d/D*)3}1/4 …(3).減少係数はIに関係なくAと粒子密度によって決まる定数となり,細粒標的・大玉標的ともに約0.7となった.したがって,粒子破壊の効果によって約30%クレーターサイズが小さくなることがわかった.
クレーター形成実験は(A)神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と(B)JAXAの縦型二段式軽ガス銃を用いて実施した.弾丸は標的表面に対して垂直に衝突させた.標的には直径1~4 mm(細粒)と1~4 cm(大玉)の鹿沼土を用いた.標的粒子の圧壊強度はそれぞれ約60,13kPaであった.(A)では弾丸に直径3 mmの5種類の球(鉄,ジルコニア,アルミナ,ガラス,ナイロン)を用い,40〜200 m/sで衝突させた. (B)では弾丸に直径2 mmの8種類の球(アルミ,ナイロン,チタン,ジルコニア,鉄,銅,タングステンカーバイド,ポリカ)を用い,1.2〜4.3 km/sで衝突させた.クレーター形成過程はハイスピードカメラ(103~105 FPS)で撮影した.実験後の標的は回収して,クレーターの形状をノギスやレーザー変位計で計測した.
クレーター半径と弾丸の運動エネルギー(Ek)の関係を調べた結果,細粒標的に関して,弾丸の種類によらず,0.1 J <Ek < 0.6 Jの範囲でクレーター半径が増加しない範囲があり,このオフセットを挟んでクレーター形成効率が下がることがわかった.この範囲では弾丸の運動エネルギーが標的粒子の破壊に使われていると考えられる.また,大玉標的は細粒標的に比べてさらにクレーター形成効率が小さくなり,細粒標的に形成されるクレーターの約0.8倍の大きさになることがわかった.クレーター半径をπスケール則で整理すると,細粒標的ではオフセットを挟んで,標的粒子の破壊の有無で2つの別々の関係に分かれていることがわかった.大玉標的では細粒標的に比べて,クレーター形成効率が系統的に小さくなることがわかった.この結果から,従来のπスケール則は,低強度・高空隙率の標的粒子に形成されるクレーターに適用できない場合があることがわかった.
標的粒子の粒径や強度,空隙率による装甲効果の定量化を行い,粒子破壊の効果を含んだクレーターサイズに関するスケール則を構築を行った.まず,終段階有効エネルギー(I )を用いたスケール則を改良した.Iが標的粒子の破壊と,標的粒子の移動によるクレーター孔の成長に使われていると仮定し,衝突の際に破壊された標的粒子の数αを導入し,標的粒子の破壊に使われるエネルギーを考慮することで,以下のようなクレーターサイズDとIの関係を求めた.k1ρgD4+k2εαδtd3=I …(1).さらに,式(1)を典型的なクレーターサイズD*で規格化して書き換えることで,以下のようなクレーターサイズDとIの関係を得た.I=k3{ρ(D/D*)4+αδt(d/D*)3}…(2).D*は,クレーター形成過程はD >D*で重力によって支配され,D <D*で強度によって支配されるようなクレーターサイズである.実験結果のクレーターサイズとIの関係は,αを変化させることで再現可能である.αは実験結果からIとの関係を求めたところ、αはIが増加するにつれてべき関数的に増加していることがわかり,n で整理することができた.細粒標的ではA=13.2,n=1.0,大玉標的ではA=0.34,n=0.99と求まった.どちらの標的粒子でもだったことから,本研究で用いた低強度・高空隙率の粒子の標的では,衝突速度によらず,標的粒子の破壊に消費されるエネルギーとクレーター掘削に消費されるエネルギーの比率は常に一定であることがわかった.さらに,装甲効果によるクレーター形成効率の減少係数fをπスケール則に導入したクレーターサイズに関するスケール則は以下のように記述できた.πR_d=k4 f π2-a π4b, f={1-k3Aδt(d/D*)3}1/4 …(3).減少係数はIに関係なくAと粒子密度によって決まる定数となり,細粒標的・大玉標的ともに約0.7となった.したがって,粒子破壊の効果によって約30%クレーターサイズが小さくなることがわかった.