10:00 〜 10:15
[PPS04-10] あかつき電波掩蔽観測による金星大気雲層下部における二酸化硫黄(SO2)濃度の高度分布導出の試み
キーワード:金星、二酸化硫黄、SO2、電波掩蔽観測、雲
金星の高度45-70 kmには硫酸からなる雲が存在し、惑星全体を覆っている。この雲の主材料である硫酸蒸気の生成には二酸化硫黄(SO2)が不可欠であり、SO2の時空間分布に関する情報は金星の雲物理を理解する上で重要と言える。SO2の高度分布に関しては、雲層上空では多くの観測に基づいた統計的な研究が行われているが、雲層内の観測は極めて少なく、VEGAプローブ観測とVenus Express電波掩蔽観測に限られる。前者は、地表面から高度60 kmまでのSO2混合比の高度分布を得たが、その観測数は2本のみである。後者は、北極域を中心に全球で観測を行い高度51-54 kmにおけるSO2混合比の平均値を導出した。また、SO2混合比のローカルタイム依存性や長期変動についても雲頂では報告がなされている一方で、雲層では極めて少ない。
本研究では、Venus Express電波掩蔽観測で採用された手法を拡張し、あかつき電波掩蔽観測データを用いて高度50-55kmでのSO2の高度分布の導出を試みた。電波掩蔽観測とは、探査機から対象の惑星大気に向けて電波を発信し、その惑星大気を通過した電波を地球で受信することで大気の情報を得る観測手段である。惑星大気を構成する気体種が電波を吸収することを利用して、電波の減衰率からその大気組成の濃度を導出できる。あかつき電波掩蔽観測で利用されている周波数帯(8.4GHz)においては、金星大気で電波吸収に寄与する気体種は、CO2、N2、硫酸蒸気、SO2である。CO2とN2に関しては大気中での濃度が知られており、固定値としてその寄与を差し引くことが可能である。残りの吸収成分である硫酸蒸気とSO2は、区別ができない。そこで、硫酸蒸気は雲層内で過飽和できず常に飽和状態であると仮定した。硫酸蒸気の飽和曲線を超過した部分はSO2による寄与であるみなすことで、SO2混合比の推定を試みた。
導出されるSO2の誤差検討を行ったところ、個々の観測におけるSO2混合比の誤差は80~100%程度であった。この検討では、各気体の吸収係数の誤差、硫酸蒸気の飽和蒸気圧の決定誤差、地球大気や惑星間プラズマの変動や受信器のノイズ等が引き起こす電波強度の誤差が考慮されている。個々の観測による誤差は大きいものの、複数の観測データを平均することで、偶然誤差を小さくすることが可能である。解析に使用した全観測データ(28本の高度分布)が全て同じ値を持つと仮定した場合、最終的に見積もられたSO2混合比の偶然誤差は15~20%程度となる。
導出されたSO2混合比の高度50 kmにおける平均値は300 ppm程度であり、高度が上がるにつれて混合比は減少し、高度55 kmでは80 ppm程度であった。このような高度変化や混合比の絶対値は、VEGAプローブ観測やVenus Express電波掩蔽観測の結果と整合的であった。次に、導出されたSO2混合比のローカルタイム分布を調べたところ、昼間で減少し夜間に増加していた。これは、雲頂で報告されているSO2混合比と似た傾向であった。一方で、長期変動に関しては、雲頂のような明確な変動は見られなかった。
本研究では、Venus Express電波掩蔽観測で採用された手法を拡張し、あかつき電波掩蔽観測データを用いて高度50-55kmでのSO2の高度分布の導出を試みた。電波掩蔽観測とは、探査機から対象の惑星大気に向けて電波を発信し、その惑星大気を通過した電波を地球で受信することで大気の情報を得る観測手段である。惑星大気を構成する気体種が電波を吸収することを利用して、電波の減衰率からその大気組成の濃度を導出できる。あかつき電波掩蔽観測で利用されている周波数帯(8.4GHz)においては、金星大気で電波吸収に寄与する気体種は、CO2、N2、硫酸蒸気、SO2である。CO2とN2に関しては大気中での濃度が知られており、固定値としてその寄与を差し引くことが可能である。残りの吸収成分である硫酸蒸気とSO2は、区別ができない。そこで、硫酸蒸気は雲層内で過飽和できず常に飽和状態であると仮定した。硫酸蒸気の飽和曲線を超過した部分はSO2による寄与であるみなすことで、SO2混合比の推定を試みた。
導出されるSO2の誤差検討を行ったところ、個々の観測におけるSO2混合比の誤差は80~100%程度であった。この検討では、各気体の吸収係数の誤差、硫酸蒸気の飽和蒸気圧の決定誤差、地球大気や惑星間プラズマの変動や受信器のノイズ等が引き起こす電波強度の誤差が考慮されている。個々の観測による誤差は大きいものの、複数の観測データを平均することで、偶然誤差を小さくすることが可能である。解析に使用した全観測データ(28本の高度分布)が全て同じ値を持つと仮定した場合、最終的に見積もられたSO2混合比の偶然誤差は15~20%程度となる。
導出されたSO2混合比の高度50 kmにおける平均値は300 ppm程度であり、高度が上がるにつれて混合比は減少し、高度55 kmでは80 ppm程度であった。このような高度変化や混合比の絶対値は、VEGAプローブ観測やVenus Express電波掩蔽観測の結果と整合的であった。次に、導出されたSO2混合比のローカルタイム分布を調べたところ、昼間で減少し夜間に増加していた。これは、雲頂で報告されているSO2混合比と似た傾向であった。一方で、長期変動に関しては、雲頂のような明確な変動は見られなかった。