日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2023年5月22日(月) 15:30 〜 16:45 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:金丸 仁明(東京大学)、荒川 創太(海洋研究開発機構)、座長:荒川 創太(海洋研究開発機構)、冨永 遼佑(理化学研究所 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室)

16:00 〜 16:15

[PPS07-18] 複数惑星系の巨大衝突進化に関する半解析的モデルの開発

*木村 真博1星野 遥1小久保 英一郎2生駒 大洋2 (1.東京大学、2.国立天文台 科学研究部)

現在の惑星形成の描像では,円盤内で成長・軌道進化を経た複数の惑星は中心星の近傍領域に比較的狭い軌道間隔で並ぶと考えられている.こうした惑星はその後軌道不安定を起こし,巨大衝突や軌道散乱を経験して,最終的な惑星の質量や軌道構造が決まる.しかし,こうした進化を追うためによく用いられるN体計算は膨大な計算コストがかかり,観測との統計的比較に十分な惑星種族合成計算などを行うには適さない.こうした計算コストを削減するため,先行研究のIda & Lin (2010)では,巨大衝突や軌道散乱に伴う惑星の軌道要素の変化を半解析的に記述するモデルを開発した.一般に巨大衝突進化プロセスはカオス的なものであるが,その結果得られる最終的な惑星の軌道や質量の分布には統計的な特徴があることが知られている.先行研究では特に1太陽質量星周りの1au付近の領域において,そのような統計的特徴量を再現することに成功している.一方で現在多くの系外惑星が発見されている中心星近傍の領域(0.1au付近)においては,巨大衝突進化の様子は質的に異なり,先行研究のモデルでは十分に表現できない.そこで本研究では,先行研究のモデルをベースとして,より中心星近傍領域や,異なる質量の星まわりにも適用できるような新しい半解析的モデルを開発した.そしてN体計算の結果と比較を行い,モデルの検証を行った.その結果,我々のモデルは,1太陽質量星まわりの0.1–1auの幅広い領域と,M型星(0.2太陽質量)まわりの0.1au付近の領域において,N体計算から得られる最終的な質量や軌道の分布をよく再現できることがわかった.このモデルをその他の惑星形成素過程と組み合わせることによって,複数惑星系の相互作用を考慮しつつ,計算コストを非常に低く抑えた惑星種族合成モデルを開発することができる.そのようなモデルは今後の系外惑星観測データとの統計的な比較に向けて重要となる.