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[PPS07-P01] コア・マントル構造を持つ含⽔微惑星の衝突破壊:標的内部の粒⼦速度分布と重力支配域における衝突破壊強度の決定
キーワード:衝突破壊実験、デジタル画像相関法、フラッシュX線、重力支配域、衝突破壊強度、分化天体
原始太陽系星雲において,微惑星は衝突破壊と破片の再集積を経て,惑星へと成長したと考えられている.その進化過程の中で,惑星まで成長しきれずに残ったと言われる小惑星は微惑星の生き残りとされ,それらが経た進化過程の違いにより,多様性をもつことが知られている.近年の小惑星探査で探査機はやぶさ2が訪れた小惑星リュウグウはラブルパイル天体であり,観測や回収サンプルの分析結果から,その母天体は天体内部が熱による水と鉱物との反応で水質変成して粘性を持つコア、その表層に空隙率が高いマントルを持つ含水微惑星であったと言われている。このような層構造天体が衝突破壊と再集積を繰り返すことによって、多様性をもつ小惑星を形成すると考えられている。従って,多様な小惑星の形成過程を明らかにするためには,天体の内部構造進化を考慮する必要がある。
小惑星の初期進化過程で起こる衝突破壊現象を理解するために、最大破片質量が元の標的質量の半分になるときのエネルギー密度Qとして定義される,衝突破壊強度Q*が用いられてきた。このQ*は、サイズが100mを超える天体では、重力による破片の再集積で決まるといわれており、重力支配域の衝突破壊強度QD*と呼ばれている。このQD*は、これまで数値シミュレーションでのみで推定されてきたが、その先行研究で示されるQD*はモデル毎に大きく異なるため、室内実験による検証が必要と言われてきた。QD*を室内実験で検証するためには、衝突破壊で発生する全破片の質量−速度分布を決める必要がある。高速カメラを用いた破片を追跡する従来の方法では、標的表面から放出する破片しか計測できないため、これまで室内実験による検証は難しかった。
そこで本研究では、衝突破壊強度QD*を求めるため、含水微惑星を模擬した層構造試料を用いた衝突破壊実験を行い、フラッシュX線を利用したトレーサー法とデジタル画像相関法(DIC)を用いて、標的内部の粒子速度を含めた全ての衝突破片の質量−速度分布を調べた。
衝突実験は、神戸大学と宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmと7mmのポリカーボネート球を用い、衝突速度は1.5-6.2 km s-1とした。含水微惑星を模擬するため、マントルには砂と石膏を質量比2:1または8:1で混合したもの(引張強度はそれぞれ770kPaと101kPa.空隙率は37%)を用意した。また、コアはベントナイトと粘性率10Pa・sのシリコーンオイルを質量比3:1で混合したものを用いた。結果的に、マントルの強度が異なる2種類の層構造標的を作成した。コア直径は30mmと50mm、マントル直径は60mmである。層構造標的との比較のため、マントル物質のみからなる均質構造標的も作成した。DIC法は半球標的を用いて、断面にランダムに点模様をつけた。また、弾丸は断面ギリギリに衝突させた。トレーサー法は全球標的を用いて、12個の鉄球(直径3mm)を標的内の単一平面上に配置し、衝突直後のフラッシュX線撮像画像を用いて、鉄球の移動を解析した。
DIC法を用いて標的内部の二次元の速度・時間分布を調べた結果、層構造標的では、コアとマントルの境界から反射してきた衝撃波の影響で、コアとマントルの分離が促進されることがわかった。また、中心のコアが変形して移動することで、反対点付近のマントルの速度が、均質構造よりも速くなることが分かった。
次に、フラッシュX線画像から標的内部速度を決定し、近傍領域の破片質量を対応づけることで、破⽚速度の積算質量分布を調べた。そして、積算質量が元の標的質量の半分になる時の破⽚速度(中間速度v*)を求め、エネルギー密度Qとの関係を調べた。その結果、v*はQに比例して増加し、v*はマントル強度に依存しないことがわかった。また、層構造標的の方が均質構造標的よりv*が大きくなり、コアのサイズが大きくなると、さらにv*が大きくなることがわかった。そして、この中間速度と標的天体の脱出速度を比較することで、重力支配域の衝突破壊強度QD*を推定し、含水微惑星の重力支配域における衝突破壊強度への内部構造の影響を考察した。
小惑星の初期進化過程で起こる衝突破壊現象を理解するために、最大破片質量が元の標的質量の半分になるときのエネルギー密度Qとして定義される,衝突破壊強度Q*が用いられてきた。このQ*は、サイズが100mを超える天体では、重力による破片の再集積で決まるといわれており、重力支配域の衝突破壊強度QD*と呼ばれている。このQD*は、これまで数値シミュレーションでのみで推定されてきたが、その先行研究で示されるQD*はモデル毎に大きく異なるため、室内実験による検証が必要と言われてきた。QD*を室内実験で検証するためには、衝突破壊で発生する全破片の質量−速度分布を決める必要がある。高速カメラを用いた破片を追跡する従来の方法では、標的表面から放出する破片しか計測できないため、これまで室内実験による検証は難しかった。
そこで本研究では、衝突破壊強度QD*を求めるため、含水微惑星を模擬した層構造試料を用いた衝突破壊実験を行い、フラッシュX線を利用したトレーサー法とデジタル画像相関法(DIC)を用いて、標的内部の粒子速度を含めた全ての衝突破片の質量−速度分布を調べた。
衝突実験は、神戸大学と宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmと7mmのポリカーボネート球を用い、衝突速度は1.5-6.2 km s-1とした。含水微惑星を模擬するため、マントルには砂と石膏を質量比2:1または8:1で混合したもの(引張強度はそれぞれ770kPaと101kPa.空隙率は37%)を用意した。また、コアはベントナイトと粘性率10Pa・sのシリコーンオイルを質量比3:1で混合したものを用いた。結果的に、マントルの強度が異なる2種類の層構造標的を作成した。コア直径は30mmと50mm、マントル直径は60mmである。層構造標的との比較のため、マントル物質のみからなる均質構造標的も作成した。DIC法は半球標的を用いて、断面にランダムに点模様をつけた。また、弾丸は断面ギリギリに衝突させた。トレーサー法は全球標的を用いて、12個の鉄球(直径3mm)を標的内の単一平面上に配置し、衝突直後のフラッシュX線撮像画像を用いて、鉄球の移動を解析した。
DIC法を用いて標的内部の二次元の速度・時間分布を調べた結果、層構造標的では、コアとマントルの境界から反射してきた衝撃波の影響で、コアとマントルの分離が促進されることがわかった。また、中心のコアが変形して移動することで、反対点付近のマントルの速度が、均質構造よりも速くなることが分かった。
次に、フラッシュX線画像から標的内部速度を決定し、近傍領域の破片質量を対応づけることで、破⽚速度の積算質量分布を調べた。そして、積算質量が元の標的質量の半分になる時の破⽚速度(中間速度v*)を求め、エネルギー密度Qとの関係を調べた。その結果、v*はQに比例して増加し、v*はマントル強度に依存しないことがわかった。また、層構造標的の方が均質構造標的よりv*が大きくなり、コアのサイズが大きくなると、さらにv*が大きくなることがわかった。そして、この中間速度と標的天体の脱出速度を比較することで、重力支配域の衝突破壊強度QD*を推定し、含水微惑星の重力支配域における衝突破壊強度への内部構造の影響を考察した。