10:45 〜 12:15
[PPS07-P03] 分化した氷微惑星の衝突破壊過程に関する実験的研究
キーワード:衝突破壊強度、分化氷微惑星、層構造氷標的、衝突破壊実験
原始太陽系星雲において、微惑星は衝突破壊や再集積を繰り返すことで惑星へと成長したと考えられている。氷微惑星は木星以遠の太陽系外縁部の惑星進化過程を考える上で重要であり,氷微惑星同士の高速衝突による破壊や再集積で様々な氷天体が生み出されたと考えられている。また,現在の太陽系に存在する氷衛星のうち直径500kmを超えるようになると,その内部が密度構造を持ったり、コア・マントル構造に完全に分化する。例えば,土星の氷衛星であるMimasの空隙率を推定すると,衛星中心付近に空隙のない氷のコアが形成され, その周りに多孔質のマントルを持つ層構造天体になっていることが明らかになった。従って,氷微惑星の衝突進化過程を明らかにするためには,天体の内部構造を考慮する必要がある。しかし,これまで行われた氷微惑星を模擬した氷物質の室内衝突破壊実験では,氷や雪などの均質構造を持つ標的が用いられており,層構造を持つ氷標的を用いた実験例はほとんどない。
そこで本研究では,氷のコアの周りに雪のマントルを持つ層構造試料を標的とした高速度衝突破壊実験を行い,衝突破片の積算個数分布や衝突破壊強度を決定して,その破壊の程度を調べた。そして,雪のみの均質構造試料と比較して,破壊の程度に対する層構造の影響を考察した。また,高速カメラを用いた従来の方法では,標的表面から放出される破片しか観測できないため,半球試料を用意し,標的内部の破壊の様子を観察した。
衝突実験は,神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球を用いて, 衝突速度は1km/sと2km/sの2種類で実施した。標的は直径60mmの球を用意し,半球型の型に直径700μm以下の氷粒子を入れ,上からくりぬかれた半球型のピストンで圧縮することで作成した。雪部分の空隙率は50%である。層構造標的は,中心に直径30mmの空隙率0%の氷を設置して圧縮した。半球試料は,半球型の型に試料を入れ,上から平らなピストンで圧縮することで作成した。層構造半球試料は,中心に直径30mmの半球の氷を設置した。また,半球試料は,断面にアクリル板を接着し,弾丸を接着面付近に衝突させた。衝突の様子は,標的の水平方向と鉛直方向の2方向から,高速カメラで撮影した。
本研究の衝突速度範囲では,均質構造標的も層構造標的も,最大破片が元の標的質量の半分以下になるカタストロフィック破壊が起こった。同じ衝突速度で比較した場合, 層構造標的の方が均質構造標的よりも,より破壊されることが分かった。破片の累積個数分布を調べた結果,層構造標的の最大破片はマントルの破片であり,マントルの破壊と比較するとコアの破壊の程度は小さく,標的全体の破片分布はマントルの破壊が支配的であることがわかった。石膏・粘土層構造標的を用いた石田ほか(日本惑星科学会2022年度秋季講演会)では,マントルがより激しく, コアがより穏やかに破壊されていることがわかっており,本研究とも整合的である。このことから,コアはマントルに保護されているため,破壊の程度が小さかったと考えられた。
衝突破壊強度を求めると,均質構造標的は166J/kgとなった。層構造標的は,均質構造標的の規格化最大破片質量(標的の質量で規格化)よりも,同じエネルギー密度で3倍から1桁小さくなり,衝突破壊強度は166J/kgよりずっと小さいと考えられる。本研究の均質構造標的と中村(神戸大学修論2020)の雪球(空隙率50%)の衝突破壊強度を比較すると,中村修論の方が衝突破壊強度が大きくなった。この差は衝突速度が異なるからと予測されたため,衝突速度依存性を考慮したパラメータで規格化最大破片質量を再解析したところ,衝突速度とエネルギー密度を組み合わせた新たなパラメータで,両データを説明できる経験式が得られた。このことから,雪の破壊にはエネルギー密度だけではなく,衝突速度も考慮する必要があることが分かった。
次に,半球標的を用いて,内部構造の破壊を観察した。均質構造標的の場合,クラックが衝突点から放射状に成長し,衝突軸(弾道方向)に対して対称なエジェクタが放出された。一方,層構造標的では,マントル内でより細かいクラックが見られ,コア・マントル境界からは衝突軸に対して垂直方向に,マントルがより速く押し出される様子が確認できた。この現象は,氷のコアと雪のマントルの密度の違いから,衝突時に圧力勾配が発生し,氷コアから放出されるエジェクタが雪マントルのエジェクタよりも速く放出しようとして,マントルを押し出すことで発生する現象であると考察された。
原始太陽系星雲において、微惑星は衝突破壊や再集積を繰り返すことで惑星へと成長したと考えられている。氷微惑星は木星以遠の太陽系外縁部の惑星進化過程を考える上で重要であり,氷微惑星同士の高速衝突による破壊や再集積で様々な氷天体が生み出されたと考えられている。また,現在の太陽系に存在する氷衛星のうち直径500kmを超えるようになると,その内部が密度構造を持ったり、コア・マントル構造に完全に分化する。例えば,土星の氷衛星であるMimasの空隙率を推定すると,衛星中心付近に空隙のない氷のコアが形成され, その周りに多孔質のマントルを持つ層構造天体になっていることが明らかになった。従って,氷微惑星の衝突進化過程を明らかにするためには,天体の内部構造を考慮する必要がある。しかし,これまで行われた氷微惑星を模擬した氷物質の室内衝突破壊実験では,氷や雪などの均質構造を持つ標的が用いられており,層構造を持つ氷標的を用いた実験例はほとんどない。
そこで本研究では,氷のコアの周りに雪のマントルを持つ層構造試料を標的とした高速度衝突破壊実験を行い,衝突破片の積算個数分布や衝突破壊強度を決定して,その破壊の程度を調べた。そして,雪のみの均質構造試料と比較して,破壊の程度に対する層構造の影響を考察した。また,高速カメラを用いた従来の方法では,標的表面から放出される破片しか観測できないため,半球試料を用意し,標的内部の破壊の様子を観察した。
衝突実験は,神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球を用いて, 衝突速度は1km/sと2km/sの2種類で実施した。標的は直径60mmの球を用意し,半球型の型に直径700μm以下の氷粒子を入れ,上からくりぬかれた半球型のピストンで圧縮することで作成した。雪部分の空隙率は50%である。層構造標的は,中心に直径30mmの空隙率0%の氷を設置して圧縮した。半球試料は,半球型の型に試料を入れ,上から平らなピストンで圧縮することで作成した。層構造半球試料は,中心に直径30mmの半球の氷を設置した。また,半球試料は,断面にアクリル板を接着し,弾丸を接着面付近に衝突させた。衝突の様子は,標的の水平方向と鉛直方向の2方向から,高速カメラで撮影した。
本研究の衝突速度範囲では,均質構造標的も層構造標的も,最大破片が元の標的質量の半分以下になるカタストロフィック破壊が起こった。同じ衝突速度で比較した場合, 層構造標的の方が均質構造標的よりも,より破壊されることが分かった。破片の累積個数分布を調べた結果,層構造標的の最大破片はマントルの破片であり,マントルの破壊と比較するとコアの破壊の程度は小さく,標的全体の破片分布はマントルの破壊が支配的であることがわかった。石膏・粘土層構造標的を用いた石田ほか(日本惑星科学会2022年度秋季講演会)では,マントルがより激しく, コアがより穏やかに破壊されていることがわかっており,本研究とも整合的である。このことから,コアはマントルに保護されているため,破壊の程度が小さかったと考えられた。
衝突破壊強度を求めると,均質構造標的は166J/kgとなった。層構造標的は,均質構造標的の規格化最大破片質量(標的の質量で規格化)よりも,同じエネルギー密度で3倍から1桁小さくなり,衝突破壊強度は166J/kgよりずっと小さいと考えられる。本研究の均質構造標的と中村(神戸大学修論2020)の雪球(空隙率50%)の衝突破壊強度を比較すると,中村修論の方が衝突破壊強度が大きくなった。この差は衝突速度が異なるからと予測されたため,衝突速度依存性を考慮したパラメータで規格化最大破片質量を再解析したところ,衝突速度とエネルギー密度を組み合わせた新たなパラメータで,両データを説明できる経験式が得られた。このことから,雪の破壊にはエネルギー密度だけではなく,衝突速度も考慮する必要があることが分かった。
次に,半球標的を用いて,内部構造の破壊を観察した。均質構造標的の場合,クラックが衝突点から放射状に成長し,衝突軸(弾道方向)に対して対称なエジェクタが放出された。一方,層構造標的では,マントル内でより細かいクラックが見られ,コア・マントル境界からは衝突軸に対して垂直方向に,マントルがより速く押し出される様子が確認できた。この現象は,氷のコアと雪のマントルの密度の違いから,衝突時に圧力勾配が発生し,氷コアから放出されるエジェクタが雪マントルのエジェクタよりも速く放出しようとして,マントルを押し出すことで発生する現象であると考察された。
そこで本研究では,氷のコアの周りに雪のマントルを持つ層構造試料を標的とした高速度衝突破壊実験を行い,衝突破片の積算個数分布や衝突破壊強度を決定して,その破壊の程度を調べた。そして,雪のみの均質構造試料と比較して,破壊の程度に対する層構造の影響を考察した。また,高速カメラを用いた従来の方法では,標的表面から放出される破片しか観測できないため,半球試料を用意し,標的内部の破壊の様子を観察した。
衝突実験は,神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球を用いて, 衝突速度は1km/sと2km/sの2種類で実施した。標的は直径60mmの球を用意し,半球型の型に直径700μm以下の氷粒子を入れ,上からくりぬかれた半球型のピストンで圧縮することで作成した。雪部分の空隙率は50%である。層構造標的は,中心に直径30mmの空隙率0%の氷を設置して圧縮した。半球試料は,半球型の型に試料を入れ,上から平らなピストンで圧縮することで作成した。層構造半球試料は,中心に直径30mmの半球の氷を設置した。また,半球試料は,断面にアクリル板を接着し,弾丸を接着面付近に衝突させた。衝突の様子は,標的の水平方向と鉛直方向の2方向から,高速カメラで撮影した。
本研究の衝突速度範囲では,均質構造標的も層構造標的も,最大破片が元の標的質量の半分以下になるカタストロフィック破壊が起こった。同じ衝突速度で比較した場合, 層構造標的の方が均質構造標的よりも,より破壊されることが分かった。破片の累積個数分布を調べた結果,層構造標的の最大破片はマントルの破片であり,マントルの破壊と比較するとコアの破壊の程度は小さく,標的全体の破片分布はマントルの破壊が支配的であることがわかった。石膏・粘土層構造標的を用いた石田ほか(日本惑星科学会2022年度秋季講演会)では,マントルがより激しく, コアがより穏やかに破壊されていることがわかっており,本研究とも整合的である。このことから,コアはマントルに保護されているため,破壊の程度が小さかったと考えられた。
衝突破壊強度を求めると,均質構造標的は166J/kgとなった。層構造標的は,均質構造標的の規格化最大破片質量(標的の質量で規格化)よりも,同じエネルギー密度で3倍から1桁小さくなり,衝突破壊強度は166J/kgよりずっと小さいと考えられる。本研究の均質構造標的と中村(神戸大学修論2020)の雪球(空隙率50%)の衝突破壊強度を比較すると,中村修論の方が衝突破壊強度が大きくなった。この差は衝突速度が異なるからと予測されたため,衝突速度依存性を考慮したパラメータで規格化最大破片質量を再解析したところ,衝突速度とエネルギー密度を組み合わせた新たなパラメータで,両データを説明できる経験式が得られた。このことから,雪の破壊にはエネルギー密度だけではなく,衝突速度も考慮する必要があることが分かった。
次に,半球標的を用いて,内部構造の破壊を観察した。均質構造標的の場合,クラックが衝突点から放射状に成長し,衝突軸(弾道方向)に対して対称なエジェクタが放出された。一方,層構造標的では,マントル内でより細かいクラックが見られ,コア・マントル境界からは衝突軸に対して垂直方向に,マントルがより速く押し出される様子が確認できた。この現象は,氷のコアと雪のマントルの密度の違いから,衝突時に圧力勾配が発生し,氷コアから放出されるエジェクタが雪マントルのエジェクタよりも速く放出しようとして,マントルを押し出すことで発生する現象であると考察された。
原始太陽系星雲において、微惑星は衝突破壊や再集積を繰り返すことで惑星へと成長したと考えられている。氷微惑星は木星以遠の太陽系外縁部の惑星進化過程を考える上で重要であり,氷微惑星同士の高速衝突による破壊や再集積で様々な氷天体が生み出されたと考えられている。また,現在の太陽系に存在する氷衛星のうち直径500kmを超えるようになると,その内部が密度構造を持ったり、コア・マントル構造に完全に分化する。例えば,土星の氷衛星であるMimasの空隙率を推定すると,衛星中心付近に空隙のない氷のコアが形成され, その周りに多孔質のマントルを持つ層構造天体になっていることが明らかになった。従って,氷微惑星の衝突進化過程を明らかにするためには,天体の内部構造を考慮する必要がある。しかし,これまで行われた氷微惑星を模擬した氷物質の室内衝突破壊実験では,氷や雪などの均質構造を持つ標的が用いられており,層構造を持つ氷標的を用いた実験例はほとんどない。
そこで本研究では,氷のコアの周りに雪のマントルを持つ層構造試料を標的とした高速度衝突破壊実験を行い,衝突破片の積算個数分布や衝突破壊強度を決定して,その破壊の程度を調べた。そして,雪のみの均質構造試料と比較して,破壊の程度に対する層構造の影響を考察した。また,高速カメラを用いた従来の方法では,標的表面から放出される破片しか観測できないため,半球試料を用意し,標的内部の破壊の様子を観察した。
衝突実験は,神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球を用いて, 衝突速度は1km/sと2km/sの2種類で実施した。標的は直径60mmの球を用意し,半球型の型に直径700μm以下の氷粒子を入れ,上からくりぬかれた半球型のピストンで圧縮することで作成した。雪部分の空隙率は50%である。層構造標的は,中心に直径30mmの空隙率0%の氷を設置して圧縮した。半球試料は,半球型の型に試料を入れ,上から平らなピストンで圧縮することで作成した。層構造半球試料は,中心に直径30mmの半球の氷を設置した。また,半球試料は,断面にアクリル板を接着し,弾丸を接着面付近に衝突させた。衝突の様子は,標的の水平方向と鉛直方向の2方向から,高速カメラで撮影した。
本研究の衝突速度範囲では,均質構造標的も層構造標的も,最大破片が元の標的質量の半分以下になるカタストロフィック破壊が起こった。同じ衝突速度で比較した場合, 層構造標的の方が均質構造標的よりも,より破壊されることが分かった。破片の累積個数分布を調べた結果,層構造標的の最大破片はマントルの破片であり,マントルの破壊と比較するとコアの破壊の程度は小さく,標的全体の破片分布はマントルの破壊が支配的であることがわかった。石膏・粘土層構造標的を用いた石田ほか(日本惑星科学会2022年度秋季講演会)では,マントルがより激しく, コアがより穏やかに破壊されていることがわかっており,本研究とも整合的である。このことから,コアはマントルに保護されているため,破壊の程度が小さかったと考えられた。
衝突破壊強度を求めると,均質構造標的は166J/kgとなった。層構造標的は,均質構造標的の規格化最大破片質量(標的の質量で規格化)よりも,同じエネルギー密度で3倍から1桁小さくなり,衝突破壊強度は166J/kgよりずっと小さいと考えられる。本研究の均質構造標的と中村(神戸大学修論2020)の雪球(空隙率50%)の衝突破壊強度を比較すると,中村修論の方が衝突破壊強度が大きくなった。この差は衝突速度が異なるからと予測されたため,衝突速度依存性を考慮したパラメータで規格化最大破片質量を再解析したところ,衝突速度とエネルギー密度を組み合わせた新たなパラメータで,両データを説明できる経験式が得られた。このことから,雪の破壊にはエネルギー密度だけではなく,衝突速度も考慮する必要があることが分かった。
次に,半球標的を用いて,内部構造の破壊を観察した。均質構造標的の場合,クラックが衝突点から放射状に成長し,衝突軸(弾道方向)に対して対称なエジェクタが放出された。一方,層構造標的では,マントル内でより細かいクラックが見られ,コア・マントル境界からは衝突軸に対して垂直方向に,マントルがより速く押し出される様子が確認できた。この現象は,氷のコアと雪のマントルの密度の違いから,衝突時に圧力勾配が発生し,氷コアから放出されるエジェクタが雪マントルのエジェクタよりも速く放出しようとして,マントルを押し出すことで発生する現象であると考察された。