日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (1) (オンラインポスター)

コンビーナ:金丸 仁明(東京大学)、荒川 創太(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PPS07-P24] 機械学習による原始惑星系円盤の電波干渉計イメージング

*関口 瑞希1奥住 聡1 (1.東京工業大学)


キーワード:イメージング、原始惑星系円盤、機械学習

原始惑星系円盤とは, ガスやダストによって構成される回転円盤であり, 惑星形成の場である. 惑星形成を理論的に理解するために円盤の一般的な構造を理解することは重要であり, その際には観測によって得られた円盤の情報が必要である. 近年では大型電波干渉計により円盤の高解像度観測が行われており, 干渉計から得られたデータから干渉縞を取り除くことで円盤の輝度分布が復元されている. しかし, 復元によって真の天体像を得ることは出来ないため,様々な手法での天体像の比較が不可欠である.
本研究の目的は,原始惑星系円盤の電波干渉計観測データから円盤の詳細構造を検出する新しい手法の開拓である. 最近の研究では, スパースモデリングといった手法が従来の手法であるCLEAN よりも数倍良く解像できるとされている. 本研究では, 近年発展している機械学習を用いた推定においても同等かそれ以上の円盤像復元が実現できるかどうかを検証した. 具体的には, U-Netと呼ばれるニューラルネットワークに同心円状のギャップ構造を持つ円盤モデルの復元を学習させ, 複数のギャップを持つ円盤モデルの画像の再現を試みた. U-Netは機械学習による画像処理のためのニューラルネットワークの一つで,ノイズの上からも構造を識別する能力に優れているため画像セグメンテーションに利用されている.これを干渉計によるダスト連続波の観測に応用すれば,CLEANなどの従来の復元手法に比べ,角度分解能や画像忠実度を向上させることができる可能性がある.このことを検証するため, U-NetとCLEANを用いて復元された円盤画像をギャップ構造の位置,幅,深さに関して比較した.
その結果, U-Netは学習データに近い円盤モデルに対して,ギャップの位置や幅を少なくともCLEANの2倍以上の解像度で正確に特定することがわかった. 学習データと異なる構造を持つ円盤に対しても, U-NetはCLEANよりも解像度の高い輝度分布を推定することが可能である. 一方, ギャップの深さの復元度はCLEANがU-Net を上回る. また, 学習データに含まれていない構造を復元する際, U-Netは構造を誤認識し真の分布と異なる結果を返す場合があることもわかった.
本研究の結果は, U-Netが従来手法よりも細かい円盤同心円構造を復元できる可能性を示している. 一方, スパイラルや渦といった非軸対称構造の確実な復元には手法の改善が必要である.