日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 太陽系物質進化

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:日比谷 由紀(東京大学 先端科学技術研究センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、松本 徹(京都大学白眉センター)、橋口 未奈子(名古屋大学)、座長:日比谷 由紀(東京大学 先端科学技術研究センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)


14:45 〜 15:00

[PPS08-05] Radial pyroxene chondrule中に含まれるFe-Ni mtel粒子の再現実験

*森田 朋代1中村 智樹1 (1.国立大学法人東北大学)

キーワード:Chondrite、Radial pyroxene chondrule、Fe-Ni metal grain

始原的なコンドライト隕石に含まれるコンドリュールは,主にケイ酸塩鉱物,ガラス,およびFe-Ni metalや硫化物などの包有物から構成される.これらの包有物は多様な元素組成や組織を持ち,その成因について直接星雲ガスから凝縮した可能性[1]や,chondrule形成時の還元反応によって形成した可能性[2],母天体内での変成を記録している可能性[3]が示唆されている.本研究では,chondrule形成過程の中で加熱温度と酸化還元状態が金属包有物の形成に及ぼす影響を見積もる実験を行った.
天然のradial pyroxene chondruleの組成から微量元素を除いた6種の酸化物(Na2O,MgO,Al2O3,SiO2,CaO,FeO)に,NiO(Ni/Fe=5.48×10-2 atom%:太陽組成)を添加した出発組成を準備した.実験は,前駆物質を完全に溶融させて溶融時間と形成する金属球の組成の依存性を調べる実験と,溶融後に結晶化させる実験の2種類を行った.これらは,Nagashima et al. (2006) [4]を参照したガスジェット浮遊装置を用いて試料と容器が非接触の状態で行い,Ar-H2ガスを用いて雰囲気を制御した.実験時には高速度カメラによるその場観察を行い,回収試料に対してはSEM/EDSによる組織観察および組成分析を行った.
Chondrule meltの溶融時間と形成する金属球の依存性を調べた実験では,前駆物質が溶融後速やかに,周囲の水素ガスによる酸化ニッケルおよび酸化鉄の還元が始まり,chondrule melt中の酸化ニッケルはほぼ全て還元され金属球に濃集しガラスから取り除かれた.最初に現れる金属球の組成はNiに富む(Ni/Fe>1)が数分間の加熱により形成した金属球のNi/Feは一定値に達した.また,金属粒子のサイズについて初めは数µmサイズで小さくサンプル球に散らばって存在しているが,加熱を受けて溶融している間にメルトの表面付近へ移動して合体・成長した.ただし,加熱を続けることにより金属球から蒸発が起こり減少した
Chondrule meltから結晶化させた実験では,さまざまなNi含有量を示す金属粒子が観察され,中にはNiが含まれない微粒子も存在した.また,サンプルの半球のみが結晶化し,半球がガラスのまま固まった試料において,結晶に囲まれた金属粒子は鉄に富む組成をもつことに対し,ガラスの中に含まれている金属球はNiの含有量が高い値を示した.全溶融している間に形成した金属粒子にはNiが含まれていたため,Niを含まない金属粒子は結晶化後に形成したと考えられる.また,結晶化前に存在していた金属粒子のNi/Fe比は比較的均質であったため,多様なNi/Fe比を持つ金属粒子は結晶化後に還元された酸化鉄の量に依存する.天然のchondrule中に見られる金属粒子の組成の多様性は,結晶化後の酸化還元反応に起因すると示唆された.
引用文献
 [1] Meibom et al. 1999. Jonral of Geophysical research. 22053:22059. [2]Connolly JR. et al. 2001. Geochimica et Cosmochimica Acta. 4567:4588. [3]Kimura et al. 2008.Meteoritics & Planetary Sci. 1161:1177. [4]Nagashima. K et al. 2006. Jornal of Crystal Growth 293:193.