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[PPS08-P02] Chwichiya 002 隕石(C3.00-ungrouped)のSTXM-C-XANES, 顕微赤外分光,および顕微Raman分光分析による有機物分析
キーワード:Chwichiya 002、炭素質コンドライト、STXM-C-XANES、有機物分析、顕微赤外分光、顕微ラマン分光
Chwichiya 002は2018年に西サハラで発見されたC3.00-ungrouped炭素質コンドライトである。XRDにて含水相の存在が確認されず、赤外透過分光法では微弱な水とフィロケイ酸に由来するSi-Oバンドのみが確認されたことから水質変質の程度が非常に低く、ラマン分光法より評価した多環式芳香族炭化水素の構造秩序から、LL 3.00普通コンドライトのSemarkona隕石よりは熱変成の影響が小さいとされている(Meteoritical Bulletin, 2020)。Chiwichiya 002は非常に原始的な炭素質コンドライトであり、太陽系における有機物の形成初期に関連する重要な情報源であるといえる。本研究では、Chiwichiya 002中に含まれる有機物の分子構造や分布の解明を目的として、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた炭素X線吸収端近傍構造(C-XANES)分析を行いその特徴を詳細に調べた。STXM-C-XANES分析は空間分解能が20~100 nm程度であり、微小な組織における有機物の空間分布を観察することができる。また、有機物の熱変成の程度を調べるため、顕微赤外分光および顕微Raman分光を用いた分析を行った。
比較のため、CM2コンドライトであるMurchison隕石の分析も行った。また、試料分析の際の汚染の確認のため、500℃にて5時間焼成することで有機物を完全に分解したAntigoriteも同様に分析を行った。収束イオンビーム(FIB)を用いて試料を厚さ100 nmの薄片に加工し、高エネルギー加速器研究機構, Photon Factory(PF), BL-19BのSTXMを用いてC-XANESスペクトルを得た。得られたC-XANESスペクトルはスムージングを行ったのちに、Le Guillou et al. (2018)の手法を用いてガウス関数によるフィッティングを行った。
STXM分析の結果、Chwichiya 002の酸素を含む官能基(ケトン, フェノール)炭素の比率はMurchisonのものに比べて低くなったのに対し、脂肪族炭素の比率はほぼ同程度であった。この結果はChwichiya 002が水質変質をあまり受けていないことを反映している可能性がある。
また、薄片加工したAntigoriteの一部についてC-XANESスペクトルの287.3~287.7 eVと288.3~288.7 eVに汚染とみられるピークが検出された。これらの原因については今後検討を進める。
Raman分光分析ではChwichiya 002のDバンドとGバンドの強度比がMurchisonのものに比べやや大きかった。また、赤外吸収スペクトルからは1630 cm-1に芳香族の吸収が見られたが、2900 cm-1付近の脂肪族C-Hによる吸収はほとんど見られなかった。これよりChwichiya 002の有機物はMurchisonより加熱されている可能性がある。
参考文献
International Society for Meteoritics and Planetary Science. (2020). Meteoritical Bulletin Database. Retrieved February 16, 2023, from
https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php?code=69684
Le Guillou, C., Bernard, S., De La Pena, F., & Le Brech, Y. (2018). XANES-Based Quantification of Carbon Functional Group Concentrations. Analytical Chemistry, 90 (14), 8379-8386.
比較のため、CM2コンドライトであるMurchison隕石の分析も行った。また、試料分析の際の汚染の確認のため、500℃にて5時間焼成することで有機物を完全に分解したAntigoriteも同様に分析を行った。収束イオンビーム(FIB)を用いて試料を厚さ100 nmの薄片に加工し、高エネルギー加速器研究機構, Photon Factory(PF), BL-19BのSTXMを用いてC-XANESスペクトルを得た。得られたC-XANESスペクトルはスムージングを行ったのちに、Le Guillou et al. (2018)の手法を用いてガウス関数によるフィッティングを行った。
STXM分析の結果、Chwichiya 002の酸素を含む官能基(ケトン, フェノール)炭素の比率はMurchisonのものに比べて低くなったのに対し、脂肪族炭素の比率はほぼ同程度であった。この結果はChwichiya 002が水質変質をあまり受けていないことを反映している可能性がある。
また、薄片加工したAntigoriteの一部についてC-XANESスペクトルの287.3~287.7 eVと288.3~288.7 eVに汚染とみられるピークが検出された。これらの原因については今後検討を進める。
Raman分光分析ではChwichiya 002のDバンドとGバンドの強度比がMurchisonのものに比べやや大きかった。また、赤外吸収スペクトルからは1630 cm-1に芳香族の吸収が見られたが、2900 cm-1付近の脂肪族C-Hによる吸収はほとんど見られなかった。これよりChwichiya 002の有機物はMurchisonより加熱されている可能性がある。
参考文献
International Society for Meteoritics and Planetary Science. (2020). Meteoritical Bulletin Database. Retrieved February 16, 2023, from
https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php?code=69684
Le Guillou, C., Bernard, S., De La Pena, F., & Le Brech, Y. (2018). XANES-Based Quantification of Carbon Functional Group Concentrations. Analytical Chemistry, 90 (14), 8379-8386.