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[PPS08-P04] 紫外線照射および宇宙曝露による隕石有機物とその模擬物質の変化:小天体表面での化学反応を探る
国際宇宙ステーション(ISS)上でのアストロバイオロジー実験計画「たんぽぽ2」は 2019 年 8 月 19 日(JST)にきぼう実験棟 ExHAM1号機で軌道上曝露実験を開始し、2020 年 10 月 23 日(JST)に431 日間の宇宙曝露を終えた。「たんぽぽ2」のサブテーマの 1 つに、隕石有機物やその模擬物質への宇宙曝露の影響を評価することで、小天体表面での有機物の変化を明らかにするという目的がある。本研究では「たんぽぽ2」の試料分析および隕石有機物の模擬物質の紫外線照射実験を行い、両者の比較・検討を行った。宇宙曝露による原子状酸素の影響についても検討するため、原子状酸素照射実験を行った。
紫外線照射実験においては、重水素ランプを紫外光源として使用し、模擬隕石有機物[1]および炭素質コンドライトに含まれる不溶性有機物(IOM)と比較的似た構造を持つフミン酸(腐植物質の一種) に対して計96hずつ照射を行った。「たんぽぽ2」宇宙曝露実験においてはフミン酸、Murchison 隕石、Tagish Lake 隕石、Murchison 隕石の不溶性有機物、模擬隕石有機物[1]を用いた。以上の紫外線照射実験および宇宙曝露実験試料は、減衰全反射赤外分光法(ATR-FTIR)およびラマン分光法によって構造分析した。紫外線照射したフミン酸の ATR-FTIR スペクトルから、脂肪族 C-H 結合の割合が減少することが分かった。「たんぽぽ2」で宇宙曝露されたフミン酸においても脂肪族C-H 結合のピーク比の減少がみられ、紫外線照射実験の結果と同様なものとなった。一方、各試料のラマンスペクトルについてL–BWF modelによりフィッテイングを行い、芳香族構造の秩序化とグラファイト化度の検討をおこなった。「たんぽぽ2」試料のラマン分光の結果から、宇宙曝露によりD-band およびG-bandの半値幅が増加する傾向が見られ、芳香族化および芳香族骨格の秩序化がすすむ方向と逆の傾向が見られた。このことから、宇宙曝露によって芳香族骨格の自体が変化している可能性が考えられる。当日は、原子状酸素照射実験の結果から、宇宙曝露による原子状酸素の影響についても報告する。
[1] Y. Kebukawa et al. (2013) Astrophysical Journal, 771, 19
紫外線照射実験においては、重水素ランプを紫外光源として使用し、模擬隕石有機物[1]および炭素質コンドライトに含まれる不溶性有機物(IOM)と比較的似た構造を持つフミン酸(腐植物質の一種) に対して計96hずつ照射を行った。「たんぽぽ2」宇宙曝露実験においてはフミン酸、Murchison 隕石、Tagish Lake 隕石、Murchison 隕石の不溶性有機物、模擬隕石有機物[1]を用いた。以上の紫外線照射実験および宇宙曝露実験試料は、減衰全反射赤外分光法(ATR-FTIR)およびラマン分光法によって構造分析した。紫外線照射したフミン酸の ATR-FTIR スペクトルから、脂肪族 C-H 結合の割合が減少することが分かった。「たんぽぽ2」で宇宙曝露されたフミン酸においても脂肪族C-H 結合のピーク比の減少がみられ、紫外線照射実験の結果と同様なものとなった。一方、各試料のラマンスペクトルについてL–BWF modelによりフィッテイングを行い、芳香族構造の秩序化とグラファイト化度の検討をおこなった。「たんぽぽ2」試料のラマン分光の結果から、宇宙曝露によりD-band およびG-bandの半値幅が増加する傾向が見られ、芳香族化および芳香族骨格の秩序化がすすむ方向と逆の傾向が見られた。このことから、宇宙曝露によって芳香族骨格の自体が変化している可能性が考えられる。当日は、原子状酸素照射実験の結果から、宇宙曝露による原子状酸素の影響についても報告する。
[1] Y. Kebukawa et al. (2013) Astrophysical Journal, 771, 19