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[SCG45-P13] 三浦半島南部三崎層中に発達するインブリケート衝上断層の内部構造と摩擦の性質
キーワード:超低周波地震
深さ3~5 kmより浅い断層物質は、正の摩擦速度依存性を持ち、不安定滑りは起こさないと考えられてきた(Scholz, 1998 )が、近年、南海トラフなどで、深さ5 km以内が震源である、超低周波地震(VLF)が見つかっている。VLFを起こす断層は、剥ぎ取り付加体のデコルマ面や、インブリケート衝上断層であると考えられている(Ito, Obara, 2006)。浅部付加体でのVLFの発見は、浅部の断層物質が負の摩擦依存性をもつ可能性を示した。さらに、海洋底掘削により採取された、付加体デコルマ面から分岐する巨大分岐断層の断層物質は、負の摩擦速度依存性を示すものがある。VLFの震源域の研究には、海洋底掘削などが行われてきたが、断層を直接観察することはできなかった。三浦半島南部、房総半島南部に露出する剥ぎ取り付加体中のインブリケート衝上断層は、デコルマ面から分岐する(Yamamoto et al., 2005)点で、VLFの震源と考えられる断層と一致する。そのため、インブリケート衝上断層の破壊の様式や摩擦の性質を調べることで、VLFの震源域の研究に役立つと考えられる。本研究では、三浦半島南部のインブリケート衝上断層の分岐断層である浅間断層の構造の記載をし、摩擦特性を調べた。浅間断層の変形集中域は、2 cm程度の幅の細粒、黒色部分であり、それを断層ガウジとした。この分類は、Yamamoto et al. [2005]と同一である。断層ガウジ部には、断層面と斜交する薄い細粒剪断帯やこれと平行に発達する粘土鉱物や無色鉱物の長軸配列の様子が観察される。観察された変形構造から、断層変形は断層ガウジ部に集中していると考えられる。本研究では、断層ガウジ部の摩擦の性質が断層の摩擦性質を代表するものと考え、断層ガウジを試料に用いて、滑り速度数μm/sと数十μm/s間の速度急変実験を行った。速度急変実験により、断層ガウジ部の物質は正の摩擦速度依存性を持つことが示された。断層ガウジのXRD解析により、断層ガウジがスメクタイトを含むことを示した。摩擦実験の結果から、浅間断層の断層ガウジは、滑り速度数μm/sから数十μm/sでは、安定滑りの性質を示す。今後、浅間断層の摩擦挙動を明らかにするため、より広い速度域での摩擦の速度依存性を調べる必要がある。