10:45 〜 12:15
[SCG45-P18] ⽔・⼆酸化炭素混合流体によるマントル岩の炭酸化反応に伴う体積増加は深部低周波微動とスロースリップを引き起こすか?
キーワード:蛇紋岩、炭酸塩化、脱水反応、深部低周波微動
1. 温度校正実験
私達は産業技術総合研究所の内部加熱ガス圧装置を⽤いて圧⼒0.2GPaで温度400℃のパイロット実験を2回⾏い、残りの本実験は、静岡⼤学理学部の⽔熱合成実験装置を⽤いて圧⼒0.18GPaで温度400-200℃の範囲で⾼温⾼圧実験を⾏った。。
産業技術総合研究所の内部加熱ガス圧装置は実験試料のすぐ近くで温度を計測している。静岡大学の⽔熱合成装置では、実験試料と温度計測点の間に合計18mmの熱水と金属がある。Inc625製圧⼒容器は⻑さ175mm外径35mm内径8.8mmで、中央に直径6mmのNi棒をfiller rodとして⼊れる。Ni棒の先の穴に直径3mmの⾦パラジウムカプセルを入れる。⽔圧ポンプで加圧した後、圧⼒容器を電気炉で加熱し1時間程度で⽬的圧⼒に到達させる。圧⼒容器の外側の温度をKタイプ熱電対で計測する。NaNO₃粉末中に直径0.5mmのステンレス球を⾦パラジウムカプセルに封⼊し保持し、球の落下を確認することで温度校正を⾏なった。高圧条件における融点は[1]に従った。1時間程度の実験時間では表⽰温度は試料温度より32-43℃⾼いが、20-22時間保持した場合、試料と圧⼒容器の外側の温度差はほぼないと結論する。
2. マントル岩の炭酸塩化実験
200-400℃、0.076-0.180GPaの条件でマントル岩+シュウ酸2⽔和物±ディオプサイドを⾦パラジウムカプセルに封⼊し反応させた。実験終了時は圧⼒容器を電気炉から離し、圧縮空気で空冷した。その後、カプセルに⽳を開け減った質量を流体中のCO₂量とし、その後オーブンで乾燥させ流体中のH₂Oの量とした。研磨した実験⽣成物をラマン分光分析装置と電界放出型⾛査電⼦顕微鏡で観察した。
出発物質が反応し残ることがあるほか、出発物質のカンラン石に鉄が含まれるためマグネサイトとタルクが共存する以外は、MgO-SiO2-H2O-CO2系での先⾏研究[2]と整合的である。カンラン⽯とディオプサイド、蛇紋⽯とディオプサイドの系では以下の反応を確認した。
実験結果は、蛇紋⽯の炭酸塩化では脱⽔反応を伴うことを⽰す。また、全ての実験条件において固相の体積は反応前に⽐べ上昇する。蛇紋岩への⼆酸化炭素を含む流体の付加は、脱⽔を引き起こすとともに、固体体積の増加を引き起こすと結論する。天然で蛇紋岩に炭酸塩脈が伴われる現象は多く⾒られる。浅い場所では海洋底変成作⽤と呼ばれる海底に近い場所で、また、プレートの沈み込みにともない蛇紋岩も炭酸塩化する岩⽯が知られる。
3. 深部低周波微動とスロースリップを引き起こすか?
この蛇紋岩の炭酸塩化反応は脱水反応と体積増加をともなうので、間隙水圧は上昇する。炭酸塩化反応とスロー地震(深部低周波微動)のメカニズムの関係はわからないが、スロー地震の起こる温度は500℃前後でマントルウェッジに流体を供給する場所であることを考えると、蛇紋岩やマントルカンラン岩の炭酸塩化反応による体積増加と間隙水圧の上昇がスロー地震を起こす可能性は⾼いと考える。
[1] Schamm, T.dheide (1976) High Temperatures-High Pressures, 8, 65-71.
[2] Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104.
私達は産業技術総合研究所の内部加熱ガス圧装置を⽤いて圧⼒0.2GPaで温度400℃のパイロット実験を2回⾏い、残りの本実験は、静岡⼤学理学部の⽔熱合成実験装置を⽤いて圧⼒0.18GPaで温度400-200℃の範囲で⾼温⾼圧実験を⾏った。。
産業技術総合研究所の内部加熱ガス圧装置は実験試料のすぐ近くで温度を計測している。静岡大学の⽔熱合成装置では、実験試料と温度計測点の間に合計18mmの熱水と金属がある。Inc625製圧⼒容器は⻑さ175mm外径35mm内径8.8mmで、中央に直径6mmのNi棒をfiller rodとして⼊れる。Ni棒の先の穴に直径3mmの⾦パラジウムカプセルを入れる。⽔圧ポンプで加圧した後、圧⼒容器を電気炉で加熱し1時間程度で⽬的圧⼒に到達させる。圧⼒容器の外側の温度をKタイプ熱電対で計測する。NaNO₃粉末中に直径0.5mmのステンレス球を⾦パラジウムカプセルに封⼊し保持し、球の落下を確認することで温度校正を⾏なった。高圧条件における融点は[1]に従った。1時間程度の実験時間では表⽰温度は試料温度より32-43℃⾼いが、20-22時間保持した場合、試料と圧⼒容器の外側の温度差はほぼないと結論する。
2. マントル岩の炭酸塩化実験
200-400℃、0.076-0.180GPaの条件でマントル岩+シュウ酸2⽔和物±ディオプサイドを⾦パラジウムカプセルに封⼊し反応させた。実験終了時は圧⼒容器を電気炉から離し、圧縮空気で空冷した。その後、カプセルに⽳を開け減った質量を流体中のCO₂量とし、その後オーブンで乾燥させ流体中のH₂Oの量とした。研磨した実験⽣成物をラマン分光分析装置と電界放出型⾛査電⼦顕微鏡で観察した。
出発物質が反応し残ることがあるほか、出発物質のカンラン石に鉄が含まれるためマグネサイトとタルクが共存する以外は、MgO-SiO2-H2O-CO2系での先⾏研究[2]と整合的である。カンラン⽯とディオプサイド、蛇紋⽯とディオプサイドの系では以下の反応を確認した。
実験結果は、蛇紋⽯の炭酸塩化では脱⽔反応を伴うことを⽰す。また、全ての実験条件において固相の体積は反応前に⽐べ上昇する。蛇紋岩への⼆酸化炭素を含む流体の付加は、脱⽔を引き起こすとともに、固体体積の増加を引き起こすと結論する。天然で蛇紋岩に炭酸塩脈が伴われる現象は多く⾒られる。浅い場所では海洋底変成作⽤と呼ばれる海底に近い場所で、また、プレートの沈み込みにともない蛇紋岩も炭酸塩化する岩⽯が知られる。
3. 深部低周波微動とスロースリップを引き起こすか?
この蛇紋岩の炭酸塩化反応は脱水反応と体積増加をともなうので、間隙水圧は上昇する。炭酸塩化反応とスロー地震(深部低周波微動)のメカニズムの関係はわからないが、スロー地震の起こる温度は500℃前後でマントルウェッジに流体を供給する場所であることを考えると、蛇紋岩やマントルカンラン岩の炭酸塩化反応による体積増加と間隙水圧の上昇がスロー地震を起こす可能性は⾼いと考える。
[1] Schamm, T.dheide (1976) High Temperatures-High Pressures, 8, 65-71.
[2] Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104.