日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] ハードロック掘削科学:陸上・深海底掘削、そしてオフィオライト

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:星出 隆志(秋田大学国際資源学部)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、座長:針金 由美子(産業技術総合研究所)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)

16:00 〜 16:15

[SCG47-09] オマーンオフィオライトの蛇紋岩を用いた封圧下での電気比抵抗・地震波速度・空隙率の同時測定

*谷本 和優1片山 郁夫1 (1.広島大学)


キーワード:蛇紋岩、オマーンオフィオライト、電気比抵抗、地震波速度、クラックの特性

近年の地球物理探査探査によるとアウターライズ領域では地震波速度と比抵抗が著しく低下されることが報告されているが、これはアウターライズ断層から浸透した海水によってマントルの蛇紋岩化が進むことが原因だと考えられている(e.g., Grevemeyer et al., 2007)。蛇紋岩化が進むにつれて固相の速度が系統的に低下するため、蛇紋岩化の度合いは地震波速度からおおよそ推定することができる。しかし、蛇紋岩は生成時に体積が増加することからクラックを形成するため、地震波速度はクラックの量と形状に影響を受け地震波速度のみでは蛇紋岩化の度合いを正しく推定することは難しい。一方、電気比抵抗は連結したクラックによる流体経路に強く依存するため、地震波速度と比抵抗を組み合わせることで固相の変質とクラックの特性を分離して蛇紋岩化の度合いを正しく推定できると考えられる。そこで本研究では、オマーンオフィオライトの蛇紋岩を用いた封圧下での比抵抗・地震波速度・空隙率の同時測定を行うことにより、地震波速度と比抵抗の関係性からクラックの効果を考慮した上で蛇紋岩化の度合いを推定することを試みる。
 実験はオマーンオフィオライト陸上掘削計画(BA3A・CM2B)で採取された蛇紋岩を用いた。地震波速度、比抵抗、空隙率の同時測定は容器内変形透水試験機を用いて含水条件下で行った。実験で使用する溶液としては海水を模擬した0.5 mol/LのNaCl溶液を使用し、間隙水は1 MPaで一定にして、封圧を5 MPaから200 MPaまで段階的に上げて行い各圧力での比抵抗と地震波速度を計測した。比抵抗は2端子法により試料の両端に取り付けた電極から得られたインピーダンスと位相差から求め、地震波速度はパルス透過法で得られた波形を解析し、P波速度とS波速度を求めた。空隙率は試料の圧密によって空隙から押し戻される水量をシリンジポンプで計測することにより算出した。蛇紋岩化の度合いは試料の固相密度から計算した。予察的な実験では、いずれの蛇紋岩においても加圧に伴う空隙率の減少と地震波速度、比抵抗の系統的な増加が観察された。地震波速度の結果に有効媒質理論を適用したところ比抵抗やVp/Vsの変化はアスペクト比の大きい、丸い空隙の効果を反映していることが考えられた。また比抵抗と地震波速度の結果に対して有効媒質理論とパーコレーションモデルを組み合わせたジョイントモデルを適用したところ、地震波速度は蛇紋岩化度とクラックの密度と形状が、比抵抗は空隙率とクラック同士の連結性が影響することがわかった。以上の結果から、比抵抗と地震波速度を組み合わせることでクラックの効果を考慮して蛇紋岩化の度合いを正しく評価することが必要だと言える。