日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] ハードロック掘削科学:陸上・深海底掘削、そしてオフィオライト

2023年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:星出 隆志(秋田大学国際資源学部)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[SCG47-P01] 幌満かんらん岩から見る上部マントルのメルト流動における再肥沃化プロセス

*木村 仁美1高澤 栄一2高橋 俊郎2木暮 優芽斗1 (1.新潟大学大学院自然科学研究科、2.新潟大学理学部)

キーワード:上部マントル、部分溶融、再肥沃化、かんらん岩

幌満かんらん岩体は北海道日高変成帯南西端に位置し,約8×10×3kmにわたって露出する。幌満かんらん岩体は斜長石レルゾライトからハルツバージャイトおよびダナイトまで幅広い組成を持つかんらん岩類と少量の苦鉄質岩及び輝岩によって構成され, 層状構造の様式の違いなどから岩体上部と岩体下部に分けられる。岩体下部は各層厚が数10m~数100mと厚く,岩石タイプが連続的に繰り返す特徴を持つが,岩体上部の各層厚は数m~数10mと薄く,岩層境界がシャープに変化する。岩体上部は,斜長石レルゾライトに卓越しており, マフィックレイヤーにも富む。
 岩体下部を構成するかんらん岩の全岩の主成分元素組成と微量元素存在度をXRFおよびICP-MSを用いて測定し,未分化マントル (PM: Sun and McDonough, 1989) および Depleted MORB Mantle (DMM: Workman & Hart, 2005)の組成と比較した。その結果,もっともMgOが低く (~38 wt%),もっともAl2O3とCaOに富む斜長石レルゾライトは,未分化マントルと類似した,玄武岩質成分に富む肥沃なマントルの組成に類似することが分かった。MgO含有量が増加するにつれて,Al2O3およびCaO含有量が減少しており,未分化マントルに類似した組成のかんらん岩の部分溶融により形成した溶け残り岩石と調和的である。
 一方,岩体上部の層厚260mに及ぶ不毛の沢セクションでは,PMやDMMよりもMgOが著しく低く,Al2O3とCaO含有量が高い,玄武岩質成分に肥沃な斜長石レルゾライトが存在する(木暮ほか, 2021)。とくに,苦鉄質岩層の周辺の斜長石レルゾライトに著しいことから,苦鉄質岩層を形成したメルトが浸透して,周囲の岩石をメルト成分に再肥沃化させたと考えられる。この特徴が幌満かんらん岩体上部の普遍的な特徴なのかを確かめるために, 不動の沢に露出する岩体上部の斜長石レルゾライトの組成を調査した。顕微鏡下の薄片観察の結果,肥沃な組成を示す斜長石レルゾライトは,斜長石や輝石類に富む傾向がある。不動の沢の斜長石レルゾライトにも同様の特徴が見られ、粒形の大きい斜長石が他鉱物粒間に分布している.岩体下部の岩石試料と岩体上部の岩石試料で比較をすると,岩体上部の斜長石レルゾライトでは,斜長石の割合が多い傾向にある。本研究では岩体上部の全岩化学組成,及び,鉱物科学組成、モード組成との相関関係に注目し, 岩体上部全域における再肥沃化作用の規模について検討を行う.