16:30 〜 16:45
[SCG48-16] (Mg0.81,Fe0.19)Oの高圧高温下電気伝導度測定
キーワード:電気伝導度、フェロペリクレース、下部マントル、スピン転移
(Mg,Fe)Oフェロぺリクレース(fp)は, (Mg,Fe)SiO3ブリッジマナイト(bdg)に次いで下部マントルの中で2番目に多い鉱物である. Bdgに比べてfpは強度が弱く, 下部マントル中で弱相であると考えられており(Girard et al., 2016), 下部マントル中で連結している可能性がある. Fpは下部マントル条件下でブリッジマナイトと比べて~2桁以上電気伝導度が高いことが報告されているため(Ohta et al., 2017), 下部マントル中でfpが連結している場所ではfpが岩石中の電位伝導度を支配する. fp中の鉄の電子状態は, 圧力上昇に伴い高スピン状態から低スピン状態へのスピン転移を起こし, これにより電気伝導度が~1桁程度低下することが室温下での測定で報告されている(Ohta et al., 2007; Lin et al., 2007). 一方で, スピン転移圧力は温度によって広がるため(Tsuchiya et al., 2006), 高温下における電気伝導度へのスピン転移の影響は室温時と異なる可能性がある. そのため, fpの高温高圧下における電気伝導度へのスピン転移の影響およびマントル中のfpの電気伝導度の決定は重要である. これまでの高温高圧下におけるfpの電気伝導度測定において, fp中の鉄が低スピン状態となるような高圧力で行われた研究はマルチアンビルプレス(MAP)とダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置を用いた研究がそれぞれ1報のみ存在する. MAPで行われた実験では, (Mg1-x,Fex)O fp (x=0.07, 0.10, 0.13, 0.17, 0.24) のインピーダンスが~50万気圧, 600 Kまで測定されており(Yoshino et al., 2011), DACを用いた実験では(Mg0.81,Fe0.19)O fpの直流抵抗を131万気圧, 2730 Kまで測定されている(Ohta et al.,2017). しかし, いずれの研究もそれぞれの組成に対して測定が1 runしか行われておらず, またDACにおける直流抵抗は抵抗値を過大評価し得る. そのため, 下部マントルにおけるfpの電気伝導度の理解のためにfpにおけるDACを用いた高圧高温下でのインピーダンス測定を行うことが必要である.そこで本研究では,レーザー加熱式DACを用いて, 下部マントルのfp組成と考えられている(Mg0.81,Fe0.19)O fpのインピーダンス測定を45 GPaまで, 常温および高温下でそれぞれ行った.
高圧発生にはダイヤモンドアンビルを取り付けた対称型DACを用いた.ガスケットには粉末cBNで絶縁させたレニウムを用いた.インピーダンス測定のために, 500 nmのAuをスパッタした5 μm厚のPt箔あるいは3 μm厚のボロンドープダイヤモンドを電極として試料の上下に配置した (Okuda et al., 2022). レーザー加熱を行うための熱絶縁層および圧力媒体としてジルコニア粉末を用いた. 電気伝導度の決定に必要な実験試料の形状観察は, 試料を減圧回収したのちに, 収束イオンビーム(FIB)を用いて行った.
室温下で得られたfpの電気伝導度は30 GPaまでは加圧に伴いアレニウスプロット上で線形に増加したが, 30 GPa以上で圧力依存性が変化し電気伝導度の増加が緩やかになった. この電気伝導度の圧力依存性の変化は, 先行研究(Ohta et al.,2007; Lin et al., 2007; Yoshino et al., 2011)と良い一致をしており, fp中の鉄のスピン転移によるものであると考えられる. また, fpの電気伝導度は, 300Kから数千Kまでの間の温度で温度上昇に伴いアレニウスプロット上で線形に増加し, 室温に比べて数桁高い値であった. 結果の詳細は当日の発表にて議論を行う.
高圧発生にはダイヤモンドアンビルを取り付けた対称型DACを用いた.ガスケットには粉末cBNで絶縁させたレニウムを用いた.インピーダンス測定のために, 500 nmのAuをスパッタした5 μm厚のPt箔あるいは3 μm厚のボロンドープダイヤモンドを電極として試料の上下に配置した (Okuda et al., 2022). レーザー加熱を行うための熱絶縁層および圧力媒体としてジルコニア粉末を用いた. 電気伝導度の決定に必要な実験試料の形状観察は, 試料を減圧回収したのちに, 収束イオンビーム(FIB)を用いて行った.
室温下で得られたfpの電気伝導度は30 GPaまでは加圧に伴いアレニウスプロット上で線形に増加したが, 30 GPa以上で圧力依存性が変化し電気伝導度の増加が緩やかになった. この電気伝導度の圧力依存性の変化は, 先行研究(Ohta et al.,2007; Lin et al., 2007; Yoshino et al., 2011)と良い一致をしており, fp中の鉄のスピン転移によるものであると考えられる. また, fpの電気伝導度は, 300Kから数千Kまでの間の温度で温度上昇に伴いアレニウスプロット上で線形に増加し, 室温に比べて数桁高い値であった. 結果の詳細は当日の発表にて議論を行う.