15:30 〜 17:00
[SCG48-P04] 岩手県和賀仙人鉄スカルン鉱床を形成した熱水の特徴
キーワード:赤鉄鉱鉱床、柘榴石、角閃石温度圧力計
岩手県和賀仙人鉄スカルン鉱床は,赤鉄鉱鉱石を主体とする.このような赤鉄鉱を多産する鉱床は,日本において新潟県赤谷鉄鉱床のほかに類を見ない.
本研究では,和賀仙人鉄スカルン鉱床を形成した熱水の物理化学条件の特定を目的とする.
研究手法は,地質調査や岩石記載,顕著に見られるスカルン鉱物の柘榴石の化学組成分析,花崗閃緑岩の全岩化学組成と普通角閃石の化学組成分析を行った.和賀仙人鉱床には7つの鉱体が存在し,そのうちの上遠平,下遠平,三角,黒淵,金肌鉱体について調査及び分析を行った.
本鉱床で見られる石灰岩は,接触変成作用の影響で石墨がしばしば認められる.貫入岩として観察される花崗閃緑岩はパーアルミナスな組成を示す.最大3cm程度の普通角閃石を含み,Al2O3含有量は5.64~8.40 (wt%) である.
スカルン鉱物の産状としては,存在量が柘榴石>単斜輝石である.柘榴石は累帯を持たずに等方性を示すもの,累帯を持ち,異方性を示すものに分類される.赤鉄鉱は大部分が板状の自形結晶であり,稀に磁鉄鉱化している様子が観察される.柘榴石は産状に関わらず端成分としてAndradite成分に富む.等方性を示すものは,Andradite95>(Adr : Ca3Fe2Si3O12)の組成を持ち,累帯を持つものは,Adrに富むバンド (Adr90-99, Grs0.1-10)と,Grossular (Grs : Ca3Al2Si2O12)に富むバンドを交互に繰り返す (Adr65-99, Grs0.1-34).
赤鉄鉱が多産すること,柘榴石の鉄成分が優勢だったこと,柘榴石>単斜輝石だったことは,和賀仙人鉱床が酸化的な環境で形成されたことを強く示唆する.またGrossularは還元的な環境で形成しやすく,Adr, Grsを交互に成長して累帯構造を持つことは,酸化的・還元的な環境を繰り返したことを示唆している.普通角閃石の定量分析の結果から,角閃石温度圧力計を用いて660~700℃,1.60~3.05 (kbar)の値を得た.圧力から形成深度はおよそ4.8-10.6kmであり,鉄スカルン鉱床の中でも比較的浅い環境に花崗閃緑岩の貫入があったことが推測される.
本研究では,和賀仙人鉄スカルン鉱床を形成した熱水の物理化学条件の特定を目的とする.
研究手法は,地質調査や岩石記載,顕著に見られるスカルン鉱物の柘榴石の化学組成分析,花崗閃緑岩の全岩化学組成と普通角閃石の化学組成分析を行った.和賀仙人鉱床には7つの鉱体が存在し,そのうちの上遠平,下遠平,三角,黒淵,金肌鉱体について調査及び分析を行った.
本鉱床で見られる石灰岩は,接触変成作用の影響で石墨がしばしば認められる.貫入岩として観察される花崗閃緑岩はパーアルミナスな組成を示す.最大3cm程度の普通角閃石を含み,Al2O3含有量は5.64~8.40 (wt%) である.
スカルン鉱物の産状としては,存在量が柘榴石>単斜輝石である.柘榴石は累帯を持たずに等方性を示すもの,累帯を持ち,異方性を示すものに分類される.赤鉄鉱は大部分が板状の自形結晶であり,稀に磁鉄鉱化している様子が観察される.柘榴石は産状に関わらず端成分としてAndradite成分に富む.等方性を示すものは,Andradite95>(Adr : Ca3Fe2Si3O12)の組成を持ち,累帯を持つものは,Adrに富むバンド (Adr90-99, Grs0.1-10)と,Grossular (Grs : Ca3Al2Si2O12)に富むバンドを交互に繰り返す (Adr65-99, Grs0.1-34).
赤鉄鉱が多産すること,柘榴石の鉄成分が優勢だったこと,柘榴石>単斜輝石だったことは,和賀仙人鉱床が酸化的な環境で形成されたことを強く示唆する.またGrossularは還元的な環境で形成しやすく,Adr, Grsを交互に成長して累帯構造を持つことは,酸化的・還元的な環境を繰り返したことを示唆している.普通角閃石の定量分析の結果から,角閃石温度圧力計を用いて660~700℃,1.60~3.05 (kbar)の値を得た.圧力から形成深度はおよそ4.8-10.6kmであり,鉄スカルン鉱床の中でも比較的浅い環境に花崗閃緑岩の貫入があったことが推測される.