15:30 〜 17:00
[SCG48-P05] 北海道北見地域隆尾鉱床における熱水変質作用と高品位金鉱化作用
キーワード:浅熱水鉱床、熱水変質、流体包有物
隆尾鉱床は,北海道北見地域生田原地域仁丹布川周辺に位置する鉱床であり,主に金銀鉱石を生産していた鉱床である.本鉱床は新第三紀の火山活動に伴う熱水によって形成されている.
本鉱床は局所的に超高品位金鉱化部がしばしば発見されることがあり,本研究においてはJapan Gold社が試錐した18本のコアから5本選抜しコア記載およびサンプリングを行った.岩相記載及び鉱物記載により高品位化の要因を検討することを目的とし,鉱床全域にわたる熱水変質鉱物の分布,高品位箇所における流体包有物分析による金沈殿時の鉱化流体の温度及び塩濃度を明らかにした.
コア記載による岩相は北東部と南東部で層準が異なり,北東部では流紋岩質火山砕屑物層,湖沼成堆積物層,黒色泥岩層,流紋岩溶岩層がみられる.一方,南西部では流紋岩溶岩層は確認されず,浅部にて湖沼成堆積物層がみられる.本鉱床において火山砕屑物層,黒色泥岩層において顕著に鉱化作用が認められ,火山砕屑物層においては基質部の珪化が特に強い.黒色泥岩層に胚胎する鉱脈は熱水上昇による母岩の破砕によってできた角礫を埋める石英脈が観察される.
記載を行ったコアにおいて5~10mおきに定点サンプリングを行い,計298サンプルに対してX線回折分析を行った.浅部から深部に至るまでセリサイト変質を被っており最深部においては緑泥石化が強い.スメクタイトや混合層粘土といった低温にて生成される変質鉱物の小規模な偏在は主要な熱水経路から外れていたために生じたものであると思われる.
浅部で観察される一般品位鉱石と地下深部にて捕捉された高品位部の石英の産状として,微細石英と菱形氷長石からなり,どちらも金晶出箇所において氷長石の卓越が認められる.
高品位部の石英脈中に見られる流体包有物の産状は金析出の前後で異なり,前期は液相優勢気液二層包有物が均質に確認され,後期では気相20~70%まで気液差が認められる.マイクロサーモメトリー法による均質化温度及び塩濃度測定を行ったところ,金析出前期ステージ:221.0~271.4℃,1.9~2.7 wt% (NaCl eq.),金析出後期ステージ:155.1~213.9℃,1.9~2.4 wt%であった.
隆尾鉱床深部にて広範囲に認められるセリサイト・緑泥石の生成温度と,熱水の温度より,熱水は中性の組成を持つと考えられる.
高品位脈における流体包有物の均質化温度より推定される金の沈殿温度(213.9~220.0℃)とSEM-EDSによって測定したエレクトラム中の銀含有量(Max 47.39 atm%, Min 42.67%)より硫黄フガシティーを求めたところ, logfS2=-11.878~-11.124であり中硫化状態であったことが示された.
高品位箇所における流体包有物の均質化温度分布及び石英・氷長石の産状記載に基づく金の沈殿を生じさせた要因として,非沸騰状態の鉱化流体は何らかの減圧を受け,沸騰が生じpHが上昇したことによって金の沈殿が生じた.その後温度低下による沸騰の終息とともに金の沈殿は終了したと結論される.
本鉱床は局所的に超高品位金鉱化部がしばしば発見されることがあり,本研究においてはJapan Gold社が試錐した18本のコアから5本選抜しコア記載およびサンプリングを行った.岩相記載及び鉱物記載により高品位化の要因を検討することを目的とし,鉱床全域にわたる熱水変質鉱物の分布,高品位箇所における流体包有物分析による金沈殿時の鉱化流体の温度及び塩濃度を明らかにした.
コア記載による岩相は北東部と南東部で層準が異なり,北東部では流紋岩質火山砕屑物層,湖沼成堆積物層,黒色泥岩層,流紋岩溶岩層がみられる.一方,南西部では流紋岩溶岩層は確認されず,浅部にて湖沼成堆積物層がみられる.本鉱床において火山砕屑物層,黒色泥岩層において顕著に鉱化作用が認められ,火山砕屑物層においては基質部の珪化が特に強い.黒色泥岩層に胚胎する鉱脈は熱水上昇による母岩の破砕によってできた角礫を埋める石英脈が観察される.
記載を行ったコアにおいて5~10mおきに定点サンプリングを行い,計298サンプルに対してX線回折分析を行った.浅部から深部に至るまでセリサイト変質を被っており最深部においては緑泥石化が強い.スメクタイトや混合層粘土といった低温にて生成される変質鉱物の小規模な偏在は主要な熱水経路から外れていたために生じたものであると思われる.
浅部で観察される一般品位鉱石と地下深部にて捕捉された高品位部の石英の産状として,微細石英と菱形氷長石からなり,どちらも金晶出箇所において氷長石の卓越が認められる.
高品位部の石英脈中に見られる流体包有物の産状は金析出の前後で異なり,前期は液相優勢気液二層包有物が均質に確認され,後期では気相20~70%まで気液差が認められる.マイクロサーモメトリー法による均質化温度及び塩濃度測定を行ったところ,金析出前期ステージ:221.0~271.4℃,1.9~2.7 wt% (NaCl eq.),金析出後期ステージ:155.1~213.9℃,1.9~2.4 wt%であった.
隆尾鉱床深部にて広範囲に認められるセリサイト・緑泥石の生成温度と,熱水の温度より,熱水は中性の組成を持つと考えられる.
高品位脈における流体包有物の均質化温度より推定される金の沈殿温度(213.9~220.0℃)とSEM-EDSによって測定したエレクトラム中の銀含有量(Max 47.39 atm%, Min 42.67%)より硫黄フガシティーを求めたところ, logfS2=-11.878~-11.124であり中硫化状態であったことが示された.
高品位箇所における流体包有物の均質化温度分布及び石英・氷長石の産状記載に基づく金の沈殿を生じさせた要因として,非沸騰状態の鉱化流体は何らかの減圧を受け,沸騰が生じpHが上昇したことによって金の沈殿が生じた.その後温度低下による沸騰の終息とともに金の沈殿は終了したと結論される.