09:15 〜 09:30
[SCG50-02] 蛍石におけるミクロ摩擦からマクロ摩擦への転移
キーワード:摩擦、蛍石、直接剪断摩擦試験、回転式摩擦試験
断層の強度や滑り特性を支配する摩擦は、原子レベルの摩擦から、アスペリティ(真実接触部)における凝着や変形に支配される摩擦まで、様々なスケールの現象が関わっている。特に、アスペリティの変形は固体物質の降伏応力に支配される現象であり、断層面のようなラフな(粗い)面での摩擦の性質に大きな影響を持つと考えられる。 このような摩擦の素過程を理解するために、本研究では断層アナログ物質として、石英などと比べてはるかに降伏応力の低い蛍石 CaF2を用い、単結晶試料と粉末試料について、摩擦実験を行った。 単結晶の実験は直接剪断摩擦試験機をもちいて直径 2 mmまたは 3 mm の円柱状に成型した試料を用い、粉末試料の実験には回転摩擦試験機を用いた。 実験はいずれも室温で行い、空気中と水中で行った。直接剪断摩擦試験では法線応力は ~10 [MPa]、滑り速度は100-1000 [μm/s] で行い、 回転摩擦試験では法線応力を ~100 [MPa]、滑り速度を1 –1000 [μm/s]に変化させて実験を行った。その結果、単結晶試料、粉末試料ともに摩擦が法線応力に比例し、見かけの接触面積によらないというアモントン・クーロン則に従い、大きな速度依存性もなかった。 また、単結晶試料では定常摩擦における摩擦係数μが0.2〜0.3と低い値を示すのに対し、粉末試料の実験ではμ=0.5〜0.6という一般的に知られるByerlee 則に近い値をとった。粉末試料ではアスペリティの塑性変形によって決まるマクロな摩擦現象が働いていたことが示唆され、単結晶試料では原子レベルの摩擦機構、または粉末で見えていたものとは異なるアスペリティの変形機構が支配的であったことが示唆される。