日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 海洋底地球科学

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:石橋 純一郎(神戸大学海洋底探査センター)、青木 智(海上保安庁)

10:45 〜 11:00

[SCG52-11] 海形海山の海底地形と地殻構造

*北野 竜士朗1中西 正男2 (1.千葉大学大学院 融合理工学府、2.千葉大学大学院 理学研究院)


キーワード:伊豆-小笠原弧、海底火山、海形海山、カルデラ、重力異常、地殻構造

海形海山は, 伊豆-小笠原弧南部(西之島~日光海山とする)の火山フロントである七島-硫黄島海嶺上の北緯26度40分付近に存在する海底火山である.海形海山は4つの高まり(西側の北からKN峰, KM峰, KS峰と東側のKC峰)で構成されている. KC峰にはカルデラと推定されている地形と馬蹄形の崩壊地形が存在する. 海形海山周辺では, 近年火山活動が確認されている. 海形海山の北方約60 kmには, 2013年の噴火以降, 現在も活動中の西之島, 南方約60 kmには2022年8月以降, 変色水が確認されている海徳海山が存在する. また, 海形海山南方の約275 kmには2021年に大規模な噴火をし, 多量の軽石を噴出した福徳岡ノ場が位置している.
重力や地磁気を用いた研究が西之島や福徳岡ノ場(例えば, 多田ほか, 2021; 小野寺ほか, 2003)など, 伊豆-小笠原弧南部の一部で行われているが, 伊豆-小笠原弧北部(伊豆大島~孀婦岩とする)のように陸上観測ができる火山がほとんど存在しないため, 地球物理学的手法を用いた研究例が少ない. そのため, 伊豆-小笠原弧南部の研究を進めることは現在の火山活動を知る上で重要なことである. その中で, 海形海山では, 重力データが多く存在し, 熱水活動の研究(例えば, 湯浅, 1986; 土田ほか, 2001)が進められているものの, 地球物理学的手法を用いた研究が少なく, 海上保安庁海洋情報部で行われた音波探査(海上保安庁, 2014)や重力解析(海上保安庁, 2011)に限定されている.
本研究では, 海形海山の重力について解析し, そこから得られる地殻の密度構造について新たな知見を得ることを目的とした. 使用したデータは, 国内外の研究機関で取得された重力データとマルチビーム音響測深機で取得した海底地形データである. マルチビーム音響測深機データの存在しないところは, GEBCO One Minute Grid (version 2.0 released in November 2008: General Bathymetric Chart of the Oceans, 2008) を使用した. ブーゲー異常の算出では, 海水と地殻の密度をそれぞれ, 1035 kg/m3, 2050 kg/m3と仮定し, Kuo and Forsyth (1988)の手法を用いた. ブーゲー異常の長波長成分を除去するため, スペクトル解析によって得られた密度境界の情報に基づいて, 上方接続してブーゲー異常から減算し, 残差重力異常を算出した.
解析結果から, 海山の密度が不均質であることが示唆された. 特にKC峰では周囲より高い異常, KM峰では低い異常が確認された. これは, KC峰で浅部起源の高密度物質, KM峰で浅部起源の低密度物質が存在することを示唆している. さらに, KC峰では, カルデラと推定されている地形と馬蹄形の崩壊地形に形態の類似した高い異常が確認された. したがって, KC峰に見られる馬蹄形の崩壊地形は, カルデラ地形が崩壊したものと考えられ, この結論は, 土田ほか (2001) を支持するものである.