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[SCG52-P04] マルチプルコアラーの改造による長尺の不攪乱試料採取の試み
キーワード:マルチプルコアラー、不攪乱
マルチプルコアラーは海底面付近の表層堆積物および直上水を採取することが可能であり、堆積物を不攪乱で得られることから、生物学・地球化学・堆積学的に必要不可欠な観測機器となっている(池原, 1993)。さらに、最近注目されている人新世の環境変動の把握にも新しい年代の連続コア試料採取の重要性が高まっている。しかし、従来の長さ60 cm採泥管は、基本的に30 cm程度の表層堆積物を採泥する仕組みであり、コア試料の長さは限られてしまう。これまでは、ピストンコアラーによる表層部の損失をマルプルコアラーの不攪乱試料で補い連続記録のコア試料を得るためには、この長さでは不足することが多かった。そこで、従来のマルチプルコアラーを長尺にし、より長く堆積物を採取することを目指して改造を行い、動作試験を実際に研究船で行った。また、これを用いて採泥したコア試料についても報告する。
本試験は、東京大学大気海洋研究所で運用されているマルチプルコアラー(株式会社 離合社製)の改造により、従来品より40 cm延長した採泥管を用いた試料採取を試みた。新規に用いた全長100 cmのポリカーボネート製長尺採泥管(株式会社 離合社製)を使用するために、アームおよびバネ強度に改造を加えた。アームは着底後、堆積物の流出を防ぐ下蓋を閉じる役割を果たすが、100 cm採泥管を取り付けるためアームの長さを延長した。また、採取した堆積物の重量で下蓋から試料の流出を防ぐため、バネの本数を増やしアームのバネ張力を高めた。
改造したロングマルチプルコアラーの動作試験は、新青丸KS-23-1次航海において相模湾で行った。採泥点は、従来型のマルチプルコアラーの採泥実績(白鳳丸KH-19-5次航海でコア長32 cm)のある同湾の水深1039 m地点で、2回実施した。マルチプルコアラーは、最大で8本の採泥管を取り付けることが可能だが、1回目は動作確認のため長尺の採泥管4本だけ取り付けて試験を行った。採泥の過程を撮影するため、マルチプルコアラーのフレームに自己記録式の深海カメラを装着し、海底での採泥器の作動状況を撮影した。1回目の試験では正常に動作が行われ、約50 cmのコア試料が得られた。しかしながら、当初の想定である最大70 cmのコア試料の採取には至らなかった。映像を確認したところ採泥管が堆積層に十分に押し込まれていないことが分かったため、2回目は取り付ける採泥管を2本に減らして動作試験を行った。その結果、4本の採泥管の場合に比べて深くまで貫入し、約60 cmのコア試料を採取することができた。
得られた表層堆積物は最長60 cmであり、上位30 cmが薄い砂層を伴うシルト層、下位が砂質シルトおよび砂層の互層であった。本採泥点は下部が砂質な堆積物であったために、想定されたコア長70 cmに到達しなかった可能性がある。現在、付加荷重錘部の重量増、採泥管の延長、アームの延長といった改造を加えており、今後より長尺の不攪乱試料の採取が可能となる予定である。
引用文献
池原研(1993) マルチプルコアラー,不擾乱表層堆積物採泥器;特に,海水―海底境界の研究のために,堆積学研究会報,39,85–89.
本試験は、東京大学大気海洋研究所で運用されているマルチプルコアラー(株式会社 離合社製)の改造により、従来品より40 cm延長した採泥管を用いた試料採取を試みた。新規に用いた全長100 cmのポリカーボネート製長尺採泥管(株式会社 離合社製)を使用するために、アームおよびバネ強度に改造を加えた。アームは着底後、堆積物の流出を防ぐ下蓋を閉じる役割を果たすが、100 cm採泥管を取り付けるためアームの長さを延長した。また、採取した堆積物の重量で下蓋から試料の流出を防ぐため、バネの本数を増やしアームのバネ張力を高めた。
改造したロングマルチプルコアラーの動作試験は、新青丸KS-23-1次航海において相模湾で行った。採泥点は、従来型のマルチプルコアラーの採泥実績(白鳳丸KH-19-5次航海でコア長32 cm)のある同湾の水深1039 m地点で、2回実施した。マルチプルコアラーは、最大で8本の採泥管を取り付けることが可能だが、1回目は動作確認のため長尺の採泥管4本だけ取り付けて試験を行った。採泥の過程を撮影するため、マルチプルコアラーのフレームに自己記録式の深海カメラを装着し、海底での採泥器の作動状況を撮影した。1回目の試験では正常に動作が行われ、約50 cmのコア試料が得られた。しかしながら、当初の想定である最大70 cmのコア試料の採取には至らなかった。映像を確認したところ採泥管が堆積層に十分に押し込まれていないことが分かったため、2回目は取り付ける採泥管を2本に減らして動作試験を行った。その結果、4本の採泥管の場合に比べて深くまで貫入し、約60 cmのコア試料を採取することができた。
得られた表層堆積物は最長60 cmであり、上位30 cmが薄い砂層を伴うシルト層、下位が砂質シルトおよび砂層の互層であった。本採泥点は下部が砂質な堆積物であったために、想定されたコア長70 cmに到達しなかった可能性がある。現在、付加荷重錘部の重量増、採泥管の延長、アームの延長といった改造を加えており、今後より長尺の不攪乱試料の採取が可能となる予定である。
引用文献
池原研(1993) マルチプルコアラー,不擾乱表層堆積物採泥器;特に,海水―海底境界の研究のために,堆積学研究会報,39,85–89.