日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 海洋底地球科学

2023年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SCG52-P14] 中央インド洋海嶺玄武岩から推定された絶対古地磁気強度と年代測定への示唆

*吉村 由多加1藤井 昌和2,3 (1.九州大学大学院比較社会文化研究院、2.国立極地研究所、3.総合研究大学院大学)

キーワード:中央インド洋海嶺玄武岩、絶対古地磁気強度、古地磁気強度年代測定

海底拡大に伴う中央海嶺の火山活動は、地球システムの基礎的な役割を担う。その理解のための基盤となる海底拡大の速度の推定や複雑なマグマ熱水活動の実態把握には、高分解能な年代測定が必要である。これまで溶岩流の構造観察や化学組成の違いを用いて溶岩流の新旧を判別する研究が行われてきたが、相対年代を示唆する情報が得られる一方で絶対年代は不明である。また、岩石試料内の不均質性が大きい場合や、組成に違いがない場合には正確な年代を判別できない。そのような状況を踏まえ、海底の溶岩から絶対古地磁気強度を測定し、その時代ごとにユニークなパターンを年代指標として用いる方法が提案されている。しかし、先行研究で測定された東太平洋海膨の海底玄武岩ガラス由来の絶対古地磁気強度にはバラツキが多いため、試料や手法に問題がある可能性がある。そこで、本研究では、従来の手法よりも正確な絶対古地磁気強度が得られると期待される手法「綱川-ショー法」を用いて、海底玄武岩を用いて絶対古地磁気強度測定実験を行なった。研究試料には、「よこすか」YK05-16航海中に実施された「しんかい 6500」926 潜航で採取された中央インド洋海嶺玄武岩を利用した。8サイトの溶岩から計18個の試料に対して実験を行ったところ、2サイト(R07とR08)の溶岩の合計6個の試料が綱川-ショー法の統計的な実験合格基準に合格し、33.0 ± 2.0 μT と 35.8 ± 3.4 μT(標準偏差は2σ)という高精度な絶対古地磁気強度を示した。これらは枕状溶岩とシート状溶岩という形態の異なる溶岩であるにもかかわらず、その絶対古地磁気強度は2σの標準偏差の範囲で一致している。このことから、海底玄武岩から信頼性の高い絶対古地磁気強度が推定できたと我々は結論づけた。また、この結果は、それらの溶岩が同じタイミングで噴火したことを示している。また、今回得られた絶対古地磁気強度は現在の潜航地点の地磁気強度(45.8 μT, IGRF-13)の約70%である。地磁気モデルCALS3K.4によると、潜航地点での地磁気強度は紀元800〜1600年の間に35 µTを下回っていた時期があるため、本研究の溶岩は少なくとも紀元1600年よりも昔に噴火したと推察できる。