日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] 地震動・地殻変動・津波データの即時把握・即時解析・即時予測

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小木曽 仁(気象庁気象研究所)、山田 真澄(京都大学防災研究所)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、近貞 直孝(防災科学技術研究所)、座長:小木曽 仁(気象庁気象研究所)、山田 真澄(京都大学防災研究所)

16:00 〜 16:15

[SCG53-03] REGARD: 日本のリアルタイムGNSS解析システムの現状

*村上 真亮1、竹井 義貴1大野 圭太郎1宮崎 隆幸1阿部 聡1髙松 直史1川元 智司1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:REGARD、GNSS、リアルタイム解析、PPP(精密単独即位)、MCMC

GNSS観測で得られる変位データは、地震計のデータが固有振動数の関係で飽和することがあるのに対して、大きな地震でも飽和することがない。国土地理院と東北大学は、日本全国で展開しているGNSS連続観測システム(GEONET:GNSS Earth Observation Network System)の観測データを用いて、有限断層モデルを推定する電子基準点リアルタイム解析システム「REGARD」(Real- time GEONET Analysis System for Rapid Deformation monitor ing)を開発した。
 REGARDは、(1)リアルタイム測位サブシステム、(2)イベント検知サブシステム、(3)断層モデル推定サブシステムの3つのサブシステムから構成されている。リアルタイム測位サブシステムは、GEONETに属する約1300局のリアルタイムキネマティック(RTK)解析を常時処理している。イベント検知サブシステムは、気象庁の緊急地震速報から地震情報を受信した、あるいはRAPiD法(Ohta et al., 2012)により大きな変位を検知したとき、使用しているGEONET観測点の変位計算を開始し、変位データを断層モデル推定サブシステムに送信する。断層モデル推定サブシステムは、2種類の断層モデルを推定する。1つは、単一矩形断層モデルで、内陸や沈み込み帯で発生する地震に対応するものである。もう一方はすべり分布モデルであり、プレート境界で発生する巨大地震に適している。それぞれの断層モデルにより推定されたMwは、政府機関における初動対応に活用されるほか、鉄道の運行計画策定にも今後取り込まれる見込みである。
 上記の機能に加えて、国土地理院では、より安定した動作と信頼性の高い断層推定モデルを目指してREGARDの改良を行っている。国土地理院は、1Hzのリアルタイム測位を行う手法として、PPP(Precise Point Positioning)を導入した。これにより、解析における固定局起因の問題が解消される。RTK法では、固定局の測位誤差が移動局の測位誤差としてあらわれることがある。その誤差は観測点の変位量の計算に問題を引き起こし、推定される断層モデルにノイズが発生することがある。もう一つの改良はOhno et al. (2021)に従った、単一矩形断層の推定に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の導入である.これにより、断層の形状やすべりなどの各推定パラメータの不確かさに関するより詳細な情報が得られ、ローカルミニマム問題を回避したより信頼性の高い推定結果を得ることができる。これらの改良により、REGARDはより安定し、信頼性の高いものとなった。
 本発表では、従来のREGARDの概要と最近のREGARDの改良点の詳細について説明する。また、REGARDの長期評価として、リアルタイム測位における人工ノイズ、断層インバージョンのオーバーフィッティングについて紹介する。