日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 機械学習による固体地球科学の牽引

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、直井 誠(京都大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SCG55-P06] 物体検出技術の微化石研究への適用可能性:YOLO-v7を使用したイクチオリス微化石の自動検出モデルの検討からの示唆

*見邨 和英1,2中村 謙太郎2,1安川 和孝2、Elizabeth Sibert3大田 隼一郎2,1加藤 泰浩2,1 (1.千葉工業大学次世代海洋資源研究センター、2.東京大学大学院工学研究科、3.Department of Earth and Planetary Sciences, Yale University)

キーワード:機械学習、深層学習、物体検出、海底堆積物、微化石、イクチオリス


海底堆積物に含まれる微化石は,堆積年代や堆積環境の推定に広く用いられてきた.微化石の外形や内部構造などの視覚的な情報は,これらの議論において重要な役割を果たしてきたが,従来の観察手法では作業の大半を専門家の手作業に依存しており,観察に膨大な時間と労力が必要であるという課題が存在した.この化石観察のプロセスを自動化することができれば,単に研究者の時間が削減できるだけでなく,従来よりも桁違いに多い数の微化石を観察できるようになることで,新しい発見が次々と生み出されることが期待される.
近年のコンピュータビジョン技術の進歩は目覚ましく,深層学習を用いた画像処理は地球科学を含めたあらゆる分野に応用されている [e.g. 1].深層学習は微化石研究の分野にも適用が進みつつある [2, 3, 4] が,多くの先行研究では「画像分類」と呼ばれる手法が用いられていた.これは,スライド上の全ての粒子の画像が必要で,先行研究ではこれを実現するために,(1) 各粒子をスライド上に重なりなく並べ,(2) スライド全体を撮影したうえで,(3) 画像の輝度値を利用して閾値処理をすることで個々の粒子を認識する,という3ステップが提案されてきた.しかし,この方法では,(1) において重なりなく粒子を並べることや,(3) において半透明の粒子の識別することが困難であるという課題も依然として存在していた.
私たちは,画像中に含まれる複数の物体のクラスが同時に推定できる「物体検出」を用いた微化石の観察手法を検討してきた [5].本研究では,最新の物体検出モデルの一つであるYOLO-v7 [6] を用いて魚類の歯と鱗の微化石 (イクチオリス) の検出を検討し,これらの微化石を複数のクラスで検出し,個数を計上することに有効であることを明らかにした.さらに,本手法は,スライド上で他の粒子と重なってしまった微化石や,画像の背景と輝度値に大きな差がない微化石などの,先行研究で提唱された手法では検出が困難と考えられる微化石も検出できることを確認した.このことから,物体検出の技術は,微化石研究への深層学習手法の適用可能性を高めることに寄与すると考えられる.

References : [1] Mimura et al. (2022) TechRxiv. [2] Itaki et al. (2020) Progress in Earth and Planetary Science, 7 1-7. [3] Tetard et al. (2020) Climate of the Past, 16, 2415-2429. [4] Richmond et al. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, e2022GC010689. [5] Mimura et al. (2022) Applied Computing and Geosciences, 16, 100092. [6] Wang et al. (2022), arXiv.