日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

09:45 〜 10:00

[SCG58-04] 花崗岩の風化による色変化機構の検討:広島ががら山の例

*横山 正1、院去 由佳2、海堀 正博3 (1.広島大学大学院先進理工系科学研究科、2.広島大学総合科学部、3.広島大学防災・減災研究センター)

キーワード:花崗岩、風化、色、鉄水酸化物

花崗岩が風化すると,鉄(水)酸化物が生じ,色が全体として茶色や黄色に変化することが知られている。本研究では,花崗岩の風化に伴う色変化の特徴やメカニズムの理解を目的とし,広島ががら山で地表から深さ20 mまで掘削された花崗岩のボーリングコアを対象として研究を行った。
 分光測色計を用いて,ボーリングコアの各深度(概ね2-10 cmおき)の色,および,風化によって生成しうる鉄(水)酸化物として4種類の鉱物(goethite, ferrihydrite, lepidocrocite, hematite)の標準試料の色をそれぞれ測定した。測定した色は,L*a*b*表色系に基づいて数値化した。L*値は明るさ,a*値,b*値は色みを表し,L*が大きいほど明るく,a*>0ではa*が大きいほど赤みが強く,b*>0ではb*が大きいほど黄色みが強い。鉄(水)酸化物の標準試料は,SiO2の白色粉末に各鉱物を様々な含有量(0-100%)で混合したものである。4種類の鉱物のうち,goethiteが最も黄色みが強く(a*に対してb*が大きい),hematiteが最も赤みが強い。ボーリングコアの色は,深さ約12 m以深の未風化部はa*,b*が小さく優白色であるが,深さ約12 mから約4 mにかけて風化が進み,段階的にa*,b*が増大する。さまざまな風化程度の花崗岩の色をa*-b*図上にプロットすると,花崗岩の色の分布は概ねgoethiteの含有量増加の色変化傾向と一致した。したがって,全体としては,風化の進行と共にgoethiteの含有量が増えていると考えられる。この全体の傾向に加えて,コアの各所にある割れ目の周囲には,割れ目を起点として黄~茶色の着色が広がり,その着色部の先端付近はしばしば濃褐色を呈している。この濃褐色部分の色を測定すると,goethiteよりもferrihydriteの色に近い。このことは,濃褐色部分にはferrihydriteが存在することを示唆する。ferrihydriteは,水溶液中では時間の経過と共にgoethiteやhematiteに変化することが知られている。花崗岩の風化過程においても,割れ目から水が岩石マトリクスに浸潤して反応が生じる初期段階ではferrihydriteが生成し,それが時間の経過と共にgoethiteに変化している可能性がある。多くの場合濃褐色部が着色の先端付近に限られるため,岩石マトリクスへの水の浸潤と共にferrihydriteの濃集部が奥へ移動し,途中で生成したgoethiteはその場に残った可能性がある。風化が進むにつれてこの過程が進行し,結果として岩石全体の色がgoethite含有量増大の方向に変化していくと推定しているが,これらの詳細は今後の検討課題である。